第52話:先に進む為に【2】
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一方越智も不機嫌そうな帯刀に謝り、彼からその事実を聞いて頭を抱えた。
「優勝してどうするんだ!?あのドアホが!」
「全くだ」
生徒会からの景品を生徒会長が受け取るという、前代未聞な事態にありったけの悪態をついた越智だったが、先程の凪の言葉が頭を掠めて帯刀にボソリと呟くように聞いた。
「なぁ、大切なモノを守りたいってのは間違ってるのかな?」
いつもの越智らしくない口調に訝しげに見ると、彼女は紫藤をじっと見つめていた。
「守りたいと思うのは当然だろ」
「だよな!?」
そう越智が希望を見出だしたように見上げてきたため、帯刀は溜息を吐いた。
「浩樹とお前は過保護だと思うがな」
『過保護』というフレーズに越智の身体が揺れる。
(凪に何か言われたな?いい機会だ。この際言っておこう)
いつもならば言わない。他人の事に興味がないからだ。だが、越智の過保護は凪の成長の妨げになる。それは避けたいところである。
「守り方というのも色々あるだろう?
大切だからといって全ての危険を排除する方法は所詮自己満足でしかない。
何故ならそのやり方では、相手の可能性を握り潰すからだ」
「握りつ潰すなんて事はしない!」
「握り潰しているだろう?
樹神がテニスの勝負をしたいと言った時、彼女の情報も収集しようともせずに真っ先に反対したのは誰だ?」
そのセリフに越智は目を泳がせた。
「お前は樹神の見た目で何も出来ないと判断し、彼女がやりたいと願った事を拒絶した。もし、樹神がそれを受け入れ守られる立場になっていたらお前は安心するだろうが、彼女は自信を持つ事なく、ただ日々を過ごすようになっただろう。
それが守るという行為か?
まずは何でもやらせて、それで万が一の時に動くのが優しさであり守るという事じゃないのか?」
帯刀はそれを聞きながら落ち込んでいく越智の肩に手を置いた。
「やけにしおらしいな。お前らしくない」
越智は笑って誤魔化そうとしたが失敗して頭を垂れた。
「なぁ……あたしは馨に対しても過保護か?」
「樹神に対してお前は見た目で判断した。
だが、俺も紫藤も理事長も樹神の強さを信じたからこそ好きにやらせた。
だからこそ今の樹神がいる。
紫藤に対してもお前は小さい紫藤のままだろう?
昔の事件は俺も理解している。
それを近くで見てきたお前にとっては、あのふてぶてしい男は守らなければならない存在なんだろうよ。
だが、紫藤の立場になって考えてみろ。
充分力を付けて強くなったのに一番認めて欲しい相手であるお前は、未だに『守らなければならない』と気持ちの悪い事を考えてるだろう?
今は昔ほどではないが、それでもバカデカイ男に対して過保護だと思うがな」
その言葉は越智の胸にグサリと突き刺さった。
何も返す事が出来ず、青ざめた顔を誰にも見られたくないといったふうに両手でその顔を隠した。
「その辺で止めて貰えませんか?」
突き刺すような冷たい口調が聞こえてきた。
よく知るその声に顔を上げると、紫藤が帯刀を完全に笑みを消して睨み付けていた。
「止めろ?お前が言わないから言っただけだ。嫌なら言わせないようにするんだな」
帯刀も負けずに紫藤を睨み返し、越智から離れると成り行きを見守っていた凪の手を取った。
「越智。お前のいいところは出会った頃と変わらず人に接するところだ。
だがな、みんないつまでも子供でいるわけじゃない。成長するんだ。
だからお前も少しは変われ。そうでなければ何も変わらん」
帯刀は去り際にそう言うと凪とテラスへと消えていった。
「静香、大丈夫ですか?」
尋常ではない落ち込みようにそう声をかけながら越智に触れようとしたが、彼女はその手を振り払った。
今までそんな拒絶反応を見せられた事はなかっただけに、紫藤は驚いて越智を見た。
越智も自分の行動に驚いたようだったが、次の瞬間顔を歪ませ、
「すまん。少し一人にさせてくれ」
とだけ言うと会場から出ていった。
紫藤は払われた手を見ながら、溜息を洩らして越智をそのまま見送った。
その表情に軽く後悔の色を宿しながら。
4話目。後一話更新します。




