第51話:先に進む為に【1】
凪は越智の反応を見てチャンスだと思った。
二人きりで話をする機会はそうそうない。
ならば、今を逃すわけにはいかないと感じて『過保護』というフレーズを敢えて出した。
どうしても先程の紫藤の気持ちを越智に伝えたかったからだ。
本当に越智が紫藤を好きならそこを何とかしないと先には進めない。
凪は1度深呼吸をして答えた。
「えぇ。過保護です。
浩樹先輩はいつもあたしを守ろうとして下さいます。
それは先程も言ったように嬉しい事なんですが、同時に『哀しい』です。
何とかしてみせるからやらせて欲しいのに、あたしを心配して代わりにやろうとして下さる。
大切に思っての事だとは解ってはいるのですが、『自分を認めてくれていないのか?』という気持ちになるんです」
越智が「そんなことない」と言ったが、凪は首を振った。
「解っています。ただ心配して下さっているだけだって。だからこそ辛いんです。
例えば浩樹先輩は越智先輩にあたしに向けるような心配をしますか?」
越智は首を振る。
「ですよね?つまり、あたしは庇護対象であり、対等に見ては貰えない存在なんです。
そんな相手と恋愛関係になることは『まずありえません』。
あたしの『場合は』ですが」
凪は再び深呼吸をすると、越智から離れて手を差し伸べた。
「そろそろ戻りましょう。仕事しないと怒られちゃいますよ」
「……そうだな」
越智は上の空に近い反応で答えると、凪の手を取った。
(気付いてくれるといいんだけど……)
紫藤を越智が庇護対象にしている。
そこが壁の原因だと悟ってくれる事を祈りながら、凪は越智の手を引きながら会場へと歩き出した。
☆
会場へと戻った凪は、ドリンクサービス中の紫藤の元へ駆けていき謝った。
「お話は終わったんですか?」
「はい。遅くなってすみませんでした。代わりますね」
そう言ってトレイを取ろうとしたら、紫藤は笑みを浮かべたままそれを制した。
「もうなさらなくていいんですよ。僕もトレイを丁度片付けるところでしたので」
まだ、パーティは続いているのに何故しなくていいのか理解出来ずにいると、紫藤は呆れながら浩樹を顎で示した。
「実は大海原さん、ダンスコンテストに優勝されたんです。
おかげで景品は生徒会長の大海原さんの手に渡ってしまったので、罰としてパーティ終了まで働かせる事にしたんです。
仮にも『生徒会長』だというのに手を抜かずに優勝してしまうなんて有り得ません。
馬車馬のように働いて頂きます」
どうやら浩樹は優勝したあと帯刀と紫藤にこってりと絞られたらしく、忙しそうに会場を動き回っているがその表情は元気がない。
そして、紫藤の顔もかなり邪悪な笑みを浮かべていて怖い。
凪は助けようと思ったが、その恐ろしい笑顔に怯みながら馬車馬浩樹を見守る事にした。
3話目です。




