第47話:守られる立場
凪は最上の笑顔で話し続ける紫藤を見ながら、耳を傾け続けた。
だが、ふと紫藤の表情が曇った。
「どうかなさったんですか?」
「いえ、静香はとても優しくて素敵な方なんです。ですが……」
そこで、紫藤はなんともいえない表情を浮かべた。
「実を言うと僕は1度この学校の不合格通知を貰っているんです。
ですが、静香が理事長に掛け合って下さり、無事入学出来たのです。
とはいえ、そんな事があった為、理不尽な言いがかりを付けられる事も多く、その度に静香は僕を守ろうとするんですよね。
理事長が見て見ぬふりだと苦情を申し立てたりなんていう事があったりして……確かに嬉しくはあるのですが、その反面自分は守られる立場である事が時々辛かったりします」
「守られる立場……」
その言葉に凪も胸に痛みが走り、返答が出来なくなった。
何故なら凪自身にもその立場の辛さが理解出来たからだ。
出来る事を証明したいのに「任しておけ」と、庇われる。
それは確かにありがたいとも思うが、同時に哀しくなる。
女の凪でさえそう感じるのだから、男の紫藤なら尚更だろう。
そう思うと凪は何も声をかける事が出来なくなり、彼の身体に顔を埋めた。
そして、曲がアップテンポなものに変わり、二人は微妙な空気のまま待機場所に戻ると越智が手を振って迎えた。
「お帰り」
越智が烏龍茶を渡すと、凪はそれを受け取って口にした。
「越智先輩はもう踊られないんですか?」
「ああ。流石に踊りすぎて、暑くてさ」
そう言って手を団扇にして扇いでいる。
ネクタイを弛めて、第2ボタン迄開けて扇ぐ姿は中性的な妙な色気があり、凪はボーッと見惚れていた。
すると、越智とバッチリ目が合い彼女は意地悪そうに笑った。
「そんなに見惚れていると襲っちゃうぞ」
「え!?あっ!」
我に返った凪は、頬を染めて慌てて越智から視線を逸らして自分の足元へと視線を逸らした。
そんな様子に、越智は楽しそうに笑いながら凪の手を取った。
「ちょっと暑いから東屋まで涼みにいかないか?」
「いいですよ」
凪が頷くと、越智はホッとしたようにラックにある自分のコートを取ると、それを凪に羽織らせた。
「じゃあ、馨。凪を借りていくよ」
「ええ、どうぞ?」
何故自分に了承を取るのか?理由が分からない紫藤だったが、微笑みを浮かべたまま二人を見送った。




