第44話:告白
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帯刀は凪を捜しにパーティー会場であるメモリアルホールへ向かった。
だが、そこに凪の姿はなかった。
「樹神さん?つい先程美術部に行きましたよ?なんでもオブジェが出来たとかなんとか」
設営係の一人がそう教えてくれたので、美術室へ向かった。
すると毛利が出てきてすまなそうに言った。
「樹神はうちの部員と食堂の冷凍室に氷のオブジェを運びに行ったぞ。
樹神も忙がしいというのにすまないな」
(何をやっているんだ!?アイツは!!)
帯刀は舌打ちして今度は食堂に向かう事にしたが、その途中で美術部員の姿を発見した。
だが、そこにはまたもや凪の姿はない。
(またか……)
「樹神は何処に行った?」
こめかみに怒りマークが浮かんでいる錯覚に囚われながら、美術部員達が口を揃えて答えた。
「しゃ、写真部に行くと行ってました」
(フットワーク軽すぎるだろ!?)
帯刀は礼を言って写真部に向かおうとしたが、美術部員の一人がそれを止めた。
「たぶん今から行っても樹神さんの用事は終っていると思います。」
「り、理事長室へその後行くと言ってましたよ」
「で、でも、理事長室には帰省希望の取り消しをしに行くだけだと言っていたので、生徒会室で待っていた方が早いと思います。です」
「そうか……」
理事長室なら凪は彼に引き留められてすぐに帰る事は出来ないはず。
帯刀はそう判断し、理事長室へ向かう事にした。
食堂からならば抜け道を使えばより早く理事長室へ到着するため、その道を使う事にした。
獣道を抜けて丘を登った所で、帯刀は歩みを止めた。
「あれ?帯刀先輩どうなされたんですか?」
意外な場所で帯刀に会い、凪は本当に驚いたようで駆け寄ってきた。
にっこり笑って無邪気な子供のように近寄る凪を見て、敗北の笑みを浮かべた。
(突き放され続けてるのにそれでもそんな笑顔を向けるか……お前は)
「凪。用事は終わったか?」
「はい。私用もあったので遅くなってしまいましたね」
ごめんなさいと謝る凪に帯刀は苦笑した。
どうやら遅いから捜しに来たと思ったようだ。
「実は先日の勝負の件についてなんだ……」
「あっ!先輩!見て下さい!!凄いですよ!」
突然叫ぶように言われ話の腰を折られた帯刀は、大きな溜息を洩らしながら凪の指す方を見た。
そこにあるのは夕焼けに染まった西の空だった。
薄紫色の山の稜線、ピンクやオレンジに染まった雲、赤い空、そして空の色を赤くさせた大きな太陽が光の屈折で揺れながらゆっくり山に隠れようとしていた。
まるで絵画のような風景に帯刀も心を奪われた。
「こんな綺麗な夕焼け初めて見ました……」
凪はうっとりとそう呟く。
帯刀も黙って相槌を打った。
見逃すのが惜しい夕陽に二人はその場に立ち尽くして魅入っていた。
「……凪。すまなかった」
ボソリとそう言われ、凪は驚いたように帯刀を見上げた。
帯刀は夕陽を見たままその場に腰掛けたので、凪は一瞬戸惑ったもののそれに倣った。
「……お前は頑張った。仕事も完璧、勉学も疎かにしなかった。よくめげずにやったな。
勝負は俺の負けだ」
「……」
凪の手が帯刀の制服の袖を掴む。
それを感じながら続けて言った。
「だから、これからは以前のように頼ってくれて構わない。いや、俺だけを頼れ。
何故なら俺はお前が、お前の事、が……」
キチンと自分の気持ちを伝えよう、相手の目を見て。
そう思い、視線を凪に向けた次の瞬間、帯刀は頭を抱えた。
あなたも段々帯刀が可愛くみえてくる……ハズ!?




