第27話:ダメと言われると
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念は押されたものの凪の様子が気になって、放課後になるなり生徒会一同はこっそりテニス部の練習を覗きに行った。
人格が変わるとは確かに言っていたが、コートにいる凪は鬼そのものだった。
「何故そこで諦める!?やる気あんの!?」
「あります」
「じゃあ、何故追いかけない!?間に合うだろがっ!!」
凪の怒号を浴びた男は不服そうに凪を睨む。
「もういい!!お前テニス辞めな!次っ!!」
そう言われ、控えていた者が遠慮がちにコートに入り、ラケットを構えた。
「よし、じゃあ行くよ」
初めは軽いラリーそれから右サイド20cm左サイド20cmを狙い、前に出させてからアウトラインギリギリに打つ。
男は必死に食らいついたが、間に合わずに勢い余って転倒した。
「いいよ。いい感じだよ!
石田。分かった?間に合わなくても構わない。全力で行くのが大事なんだよ」
先程怒鳴り付けた男にそう言うと、彼は一歩前に踏み出した。
「もう一度やらせてください」
「聞こえない。はっきり言う!」
「もう一度やらせてください!!」
「よし!今度は諦めるな!」
(スポコンか!?)
覗き見隊全員の共通の感想だった。
「キャラかなり違いますねぇ」
「可愛い凪がぁ、凪がぁ壊れてる……」
「浩樹。泣くな。こっちが泣けてくるじゃないか」
「意外にあっちが地だったりしてな」
帯刀のとんでもないセリフに浩樹が絶望の色に染まっていく。
「おい、帯刀。こんな時に浩樹で遊ぶな」
そんなやり取りをしていると、凪の怒声がまたあがった。
「第2コート!!あたしはスイング練習をしろと言ったのになんでバギー・ウィップショットの練習をしてんだ!?」
そう言って、凪は第2コートに向けてサーブを打つ。
部員達はその早さに逃げるのが精一杯だった。
「このくらいの球ライジングで打ち返せ!!その位も出来ないヒヨコがそんなもん練習するな!
他に練習すべきショットがいくらでもあるだろが!!
てか、ヒヨコは大人しく基本の6ショットを完全にマスターしろっ!!ドアホがっ!」
怖い。あまりにも怖すぎる。
「馨……なんか今、お前が侮辱を受けたとは感じてないという意味を理解したよ」
「上級生相手にヒヨコだのドアホだの平気で言えてしまう程の方ですからね」
そう答えながら、紫藤は遠くを見ながら軽く会釈した。
「みんな!いやぁ快く樹神さんを貸してくれてありがとう」
伊藤は走りながら近付いてきた。
「な、なんか凄い事になってるけど良かったのかい?」
越智のそんな問いに全力で伊藤は頷いた。
「勿論さ!あのくらいじゃなきゃ成長しないからな。それに」
そこで一旦区切ると伊藤は夢見がちに話し始めた。
「あのリトル・ウィッチの指導だぜ?生で彼女のボール捌きをしかも間近で見られるんだ。
神、降臨!!っだよ。テニスコートが神々しい……!
……ハァ……しかも、あの厳しさを持ちながら普段の彼女は小鳥のように可愛いし……ギャップ萌えだよな」
そのセリフに全員が黙りこむ。
「あ、そろそろあいつらの休憩時間だ。じゃあ、俺も指導受けてくるから失礼するぜ」
伊藤は、月面歩行する飛行士のようにフワフワした足取りで去っていった。
「まさか、対抗戦で信者が出来るとは思いませんでしたね」
冗談のような紫藤のセリフは悲しいほど空に溶け込んでいった。
本日6話目。今日はこれでラストです。




