第16話:人気の高い役どころ
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翌日教室に入った凪は、色めきだった雰囲気に呆然としていた。
クラスメイト達は凪の姿を捉えるなり、我先にと彼女の前に突進していった。
「樹神さん!待っていたのよ!教えて!!」
「私、救護班やりたいの!」
「一年でも救護班になれるの!?」
「私、救護班になれるならどんなことでもするから指名して!」
「ずるい!私だって……!」
「ねぇ、樹神さん!お願い教えて!!」
昨日まで、救護班の『き』の字も出なかったというのに一体何があったのだろうか?
凪は目を白黒させながら取り敢えずみんなを落ち着かせ、事情を聞いてみた。
「寮で先輩達が話していたの。救護班で介護した男子と結ばれる率が高いって。
この学園エリートばかりだから彼氏をなんとしてもゲットしたいのよ」
恋愛偏差値四流という自信だけはある凪としては、それの何処に魅力があるのか全く見当もつかないが、凪が知り得る事はみんなに話す事にした。
「まだ、そちらについては話し合われていないの。明日には決まる予定だからそれまで待ってもらってもいいかな?」
「じゃあ、一年にもチャンスを与えるようにして!」
「絶対だからね!!」
すごい剣幕でそう念押しされた凪は苦笑で答え、放課後に生徒会室でその事を伝えると、浩樹は大爆笑した。
「大海原さん。笑っては樹神さんが可哀想です」
と、浩樹をたしなめる紫藤自身も肩を震わせていた。
状況が読めず頬を膨らませる凪に、浩樹はまだ笑いながら説明した。
「実は男も救護される事で女子と接する機会を得られるのを期待しているんだ。
怪我して手当てされてる間はお互い話をするだろう?
普段は話し掛けにくくてもそれを機会にその後も話せるかもしれない。
そう考えて、一番怪我をしやすい騎馬戦に人気が集中する」
(り、理解出来ない……)
男子も女子もハートパワー全開で挑む体育祭。主旨があまりにも違いすぎる。
凪は目眩を覚え、頭を抱えた。
「あ、そうだ。お嬢ちゃん救護班に入ったらどうだ?」
(うげ)
「そうですね。樹神さんが救護班に入ったら皆さん気合いが入りますよ。きっと」
(うげげ)
「そしたら彼氏ゲット間違いなしだぞ。まあ、あたしの眼鏡に敵う奴じゃなきゃ却下するけど」
楽しそうにそう言う越智と紫藤に、凪は後退りした。
「いや、凪はダメだ!!」
堪らず浩樹が叫び、そして続けて言い放った。
「俺は凪を放送席にいかせるつもりなんだ!」
「はぁ?そんな話出てこなかっただろうが」
「凪のアニメ声は放送向きだろ?」
アニメ声が果して向いているのかは疑問だが、帯刀が助け船を出した。
「樹神も救護班はやりたくはないそうだ」
「そうなのかい?」
振られて、凪は戸惑いながら頷いた。
「クラスメイトの様子を見るに本当にやりたい人に任すべきだと思います。
それで、選抜方法はどうすればいいでしょうか?」
凪が苦し紛れに紡いだ言葉を帯刀が綺麗に拾った。
「今までは能力面で判断していたが、今回は噂が拡がり過ぎたようだ。
浩樹、どうする?」
浩樹はホッとしながら軽く咳払いをして意識を切り替えた。
「保健委員のメンツもある。彼らはメンバーに入れるべきだな」
「各クラス2人くらいが妥当でしょうね」
「保健委員の女子は一人だけだから、後の一人はクラス毎希望者で籤引きってのはどうよ?」
越智の提案に浩樹は快諾した。
「それでいいだろう。後は騎馬戦だな。これは3グループにしよう」
「お、いいねぇ。そしたらあたしが出てもクラスの連中に文句言われないだろうし」
(出るのか!?)
越智本人は周囲のそんな心の突っ込みを察する事なく、騎馬戦に気合いを入れた。浩樹はそれについてはスルーする事に決め、会議を終了させた。
本日2話目です。次回は、ある意味一番平和なお祭り騒ぎです。




