第147話:M-8 尽きない心配事
それからの早苗は状態が安定し、医者も大丈夫だという事で遂に骨髄移植を受ける事になった。
そして移植予定の一週間前、驚く事が起きた。
いや、正確には分かりきった事なんだが……
帯刀と樹神が付き合い始めたのだ。
そして移植の日、二人揃って早苗に面会に来たのだ。
早苗は帯刀を王子様と呼び、ご機嫌のまま移植に挑んだ。
そのあとは副作用で苦しんではいたが、移植は無事に成功し俺は神に感謝した。
あくまで、「その時は!」である。
「お兄ちゃま。凄いでしょ?
帯刀のお兄ちゃまが魔法をかけてくれたの」
ある日、病室に訪れるととても血色のいい早苗が笑顔で俺を迎えた。
それは帯刀がメイクをしてくれたのだとすぐにわかった。
やつれていた顔は血色よくふっくらと、目の下に居座っていた隈は見事に消え、健康な女の子のようだった。
「お兄ちゃま。早苗、可愛いかな?」
「あぁ!凄く可愛いよ。びっくりした」
俺は素直に感想を述べると早苗は嬉しそうに笑った。
「ウフフ。私もそう思った。凪ちゃんいいなぁ。魔法使いの彼氏がいて」
「うん。あたしの自慢の彼氏さんなの」
恥ずかしげもなくそう言う凪に満足したのか、帯刀も嬉しそうに口元を綻ばせた。
「そっかぁ。お兄ちゃま。残念だったね。
凪ちゃんなら私のお姉ちゃまになってくれたら嬉しいと思っていたけど、王子様で魔法使いの帯刀のお兄ちゃまが相手だと、お兄ちゃま負けちゃうもんね」
おいおい。それじゃあまるで俺が樹神に惚れてるみたいじゃないか。
そう感じた瞬間キリリと胸が痛んだ。
あれ?俺、もしかして樹神に惚れていたのか?
そう言われてみれば思い当たる節が、沢山ある……
て、事は……好きと自覚して即効で失恋!?
……なんか、自分が滑稽に見えてきた。
「早苗ちゃんはもう、あたしの妹だよ」
樹神がおもむろに変な事を言った。
「血をあげたから血縁というわけか?」
「もう!帯刀先輩、あたしのセリフ取らないで下さいよ」
樹神は頬を膨らましてそう抗議すると、早苗に微笑んだ。
「早苗ちゃんとあたしは血の繋がりが出来たんだから」
確かに樹神の血はストック分を含め、早苗の体内の半分以上は入った筈だからかなり濃いか。
「そっかぁ。じゃあ、私も凪ちゃんみたいに強くなって早く元気になれるね」
「有り余るぐらいにな」
「帯刀先輩!」
思いきり樹神をからかっている様子に、早苗が楽しそうに笑う。
この分ならきっと早苗は元気になるだろう。
俺は元気に走り回る早苗の姿を思い浮かべ、笑みを浮かべた。
だが、その直後にとんでもない言葉が早苗から出た。
「これから沢山勉強して、沢山友達作って、私も凪ちゃんみたいに素敵な彼氏作れるね」
「うん。早苗ちゃん可愛いからきっとモテて大変だろうね」
モテる!?早苗が!?で、彼氏!?
いや、ダメだ!俺の可愛い早苗に彼氏なんて許さん!
「近寄る不遜者、全て追い払ってやる!!」
俺の叫びを聞いて、一同がキョトンとしている。
「お兄ちゃま……」
「先輩、近い未来の話じゃないことですし」
「いや、近かろうが遠かろうが早苗はやらん。俺の目の黒いうちは誰にもやらん!」
それを聞いて、帯刀が呆れた吐息を洩らした。
「シスコンめ」
「う~ん、早苗ちゃん。彼氏作るにはおっきな壁があるみたいよ?」
「大丈夫!凪ちゃんの血が流れてるんだもん。負けないよ」
そう言ってガッツポーズをする早苗に、樹神と帯刀が楽しそうに笑う。
俺は完全に蚊帳の外だ。
おい、待て。俺を会話から外すな。
許さん!絶対に早苗は誰にも渡さないぞ!!
次はおまけになります。
3回に渡ってのオマケですが、それで本当のエンドになります。




