第四十九話 友人
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その日は朝早くから真夏日を思わせるような強い日差しが降り注いでいた。
そんな茹だるような暑さの中、国光は寝不足で充血した目をしょぼしょぼと瞬かせながら、夏休みが明けた大学へと出て来ていた。
現実世界では久々となる容赦の無い太陽からの洗礼を受け、夏休みの間中クーラーで冷やされた部屋でVR世界に入り浸り、すっかりと鈍った身体には非常に堪える。
まるで陽光の下を彷徨う吸血鬼のようにふらつく足取りで、冷気の満ちたオアシスである校舎を目指して歩いていた。
「まだ朝だと言うのに、暑いなー」
暦的には初秋と呼ばれる時節だが、気温からするとまだまだ夏真っ盛り。
額から噴き出る汗を拭きつつ、これからまだまだ陽が昇るに連れ、気温が上昇するかと思うとうんざりしてしまう。
構内のあちこちからはこの暑さを謳歌するような蝉の声で溢れ、じりじりと肌を焦がす日差しで早くも汗だくとなった国光は、一刻も早くこの過酷な環境から逃れるべく歩みを速めた。
「あと一ヶ月位休みにしてくれても良いのに……」
猛暑に当てられた所為か、無意識に口から愚痴がこぼれてしまう。
そんな登校する時点で既にへばりきった様子で歩く国光の背後から声が掛けられる。
「休み明け早々、朝一から何ぼやいているんだ」
「おっ、貴宏か。おはよう」
国光が振り返ると、この暑さをものともせず、平然とした表情を見せる同期生の友人の姿があった。
背丈は百七十センチの中程と二人に殆ど差は見られない。日焼けとは無縁な生活を送っていた国光とは異なり、Tシャツの袖からは小麦色に焼けた引き締まった筋肉質な腕が覗く。
全体的にがっしりとした体格しており、標準よりやや細めな国光に比べると身体の横幅は一回り大きい。
幼い頃から続けていたと言う空手の影響か、とても同じ環境下に居るとは思えない涼しげな顔は、恐らく精神修練の賜物なのであろう。
「おう、久しぶりだな。何だか眠そうだが大丈夫か?」
挨拶もそこそこに、こぼれる欠伸を噛み殺しては涙で潤んだ瞳を頻りと手の甲で擦っている国光へと、貴宏から呆れた視線が注がれる。
「んー、明け方近くまでVRに入っていてな」
「ほお、今は何をやってるんだ?」
思い掛けない貴宏の問い掛けに対し、擦っていた手が一瞬止まる。
貴宏との付き合いは入学当初からとなるので、もう二年ほどの付き合いになるが、今までゲームの話などしたことが無かった。
国光は珍しいことも有るなと思いながらも話を続ける。
「今は鋼鉄の新世界って奴だな」
「何!? どの国に所属しているっ?」
突然、表情を変えて詰め寄って来る貴宏に、国光は戸惑いを見せる。
「えっと、シュネイック共和国だが……」
「本当か!? だったら――」
珍しく拙速に話を進めようとするも、講義開始の時刻を思い出したのか、貴宏は逡巡した様子で口を噤んだ。
「国光、後で少し話をしたいのだが……」
真剣な眼差しを向ける友人に、国光は一も二もなく了承する。
「ああ、別に良いぞ」
「そうか。じゃあ、昼飯を一緒にどうだ?」
「分かった。それじゃ、後で連絡を入れる」
学部が異なる二人は約束を取り交わすと、その場で別れて別々の方向へと去って行った。
国光は午前の講義を終えると、貴宏との待ち合わせ場所となる店へと急いだ。
その店は大学近くの裏通りにひっそりと構えており、看板も無く、店だと指示すものは扉に掛けられた小さな開店案内のみ。代々先輩から後輩へと口コミで伝えられて来た隠れ家的な店だ。
大学近くにありながら昼時でもそれほど混雑をせず、少々込み入った話をするには丁度良いと思い、授業の合間を縫って国光の方からメールで連絡を入れておいた。
国光が入り口を潜り、それほど広くない店内を見渡すと、どうやら先に着いたようで貴宏の姿は見当たらなかった。
「いらっしゃい。一人かい?」
厨房に立つ店主からカウンター席越しに声を掛けられる。
「いえ、後から連れが一人来ます」
「じゃあ、そっちのテーブルに座ってくれ」
国光は店の中ほどの空いていたテーブル席に座ると、早速メニューを選ぶべく、カウンターの端に立て掛けられた黒板に目を向けた。そこには店主の気性が窺える、チョークで書かれた大きく力強い文字がいくつも躍っている。
日替わりで毎日変わるメニューは、品数こそ少ないものの一日と同じメニューが続くことが無く、常連客達の密かな楽しみとなっている。
「えーと、アジフライで」
「はいよ」
国光はその日の朝にあがったばかりと言う文句に釣られて魚料理から選ぶと、運ばれて来た冷えた麦茶で喉を潤す。
昼時を幾分過ぎた店内は八割程の席が埋まり、あちこちのテーブルからは食欲を刺激する匂いが容赦なく振り撒かれ、国光は空腹を告げる腹の虫に先程からずっとせっつかれていた。
厨房からはフライを揚げるパチパチとした泡が弾ける油の音を聞きながら、空腹に耐えて待っていると、背後で入り口の戸が開く音がする。
「待たせたな」
やや遅れて到着した貴宏は対面の席に腰掛けると、すぐに厨房に向かって注文を入れた。
「豚ロースにんにく焼き大盛りで」
「大盛りね」
注文を終えると、早速話を始めた。
「国光、午後は?」
「休講になった。貴宏の方は?」
「俺は最初から今日は昼までだ」
二人は暫しの間、雑談を交わして空腹を紛らわせていると、香ばしく焼けたにんにくの香りが漂ってきた。
「はい、お待ちどお。アジフライと豚ロースにんにく焼きの大盛りね」
それぞれの前に、食事の載ったお盆が置かれる。
匂いでは貴宏のに一歩劣るが、国光が頼んだアジフライも負けてない。揚げたてのフライからは油が弾ける音がまだ微かに聞こえてくる。
「食いながら、話すか」
そう言うと、貴宏が早速醤油ダレの絡んだ大ぶりな肉に箸を付けたのを見て、国光もフライにソースと辛子を付けると口に頬張った。
サクッとした歯ごたえの香ばしい衣とほくほくとした身のアジを堪能しながら、国光は貴宏の話に耳を傾ける。
貴宏は小学校の入学と同時に空手を始めて以来、ずっと空手に明け暮れた日々を過ごしており、ゲームなどとは全く無縁の生活を送っていた。
それが高一の冬に身体を壊して空手を辞めたことで、急に自由に使える時間を与えられることとなる。
しかし、今まで空手以外碌に趣味と言えるようなものなど持っておらず、辞めざるを得なかったショックもあり無為な日々を過ごしていた。
そんな時、偶々近くの席に座るクラスメイトと初めて話したことが切っ掛けとなり、こちらの世界へと入って来た。
とは言え、今は子供の頃に見て好きだったこともあり、主にロボットアニメや関連するプラモデルを嗜む程度。ゲーム関係にまでは手を出しておらず、当然のことながらオンラインゲームの経験も全く無い。
それがロボット好きと知っていたこともあり、鋼鉄の新世界の発表と共に高校時代の友人達からゲームの参加を誘われたのだ。
元々ロボット好きなことに加え、格闘競技経験者と言うこともあり、対人戦闘も可能なゲームと聞いて興味を持った。ただ、大勢の人が参加するゲームと聞き、どちらかと言うと無愛想で人付き合いが苦手な為、躊躇はしたものの友人達と一緒ならと貴宏は参加を決めた。
ところが、思わぬアクシデントが発生した。
開始日の前日に戻る予定で行った家族旅行の最終日。悪天候に見舞われて、帰りの便の飛行機が欠航。友人達と約束していた開始日に間に合わなかったのだ。
流石に毎年恒例であり、一年近くも前から計画されていた家族旅行をゲームの為だからとは断われずに行ったのだが、これで当初の予定が完全に狂った。
翌日、家に戻って来て早々、何度か友人達へと連絡を入れるも全く通じず、貴宏は友人達より一日遅れて一人でゲームを開始することとなった。
友人達と連絡が着かなかったのも、ある意味仕方のない話である。国光達もそうであったように、殆どのプレイヤーが開始から数日の間は一日の大半をVR内過ごすような状態となっている。
また、鋼鉄の新世界では現実世界からの情報の持ち込みを厳しく規制している為、メールなど外部からの連絡手段も存在しない。
貴宏は一人遅れて開始したものの、キャラクターの事前登録は出来ない仕様の為、ゲーム内に於ける友人達の名前すら知らない。当然、フレンド登録などもされていないので、ゲーム世界に入ったは良いが連絡を取る術は無かった。
更に貴宏にはオンラインゲームの経験が全く無い。事前知識として公開されていた公式情報などは目にしていたが、経験則としての開始時からの流れや多くのゲームに共通するような知識や定石など一切知る由も無い。本来であれば、それらをサポートするはずだった友人達も今はどことも知れない。
その為、始めてみたものの何から手を付けたらいいのか分からず、開始場所である広場に一人呆然と佇み、途方に暮れていた。
開始前より楽しみにしていたはずの機体の購入すら躊躇ってしまう。当初の予定では事前に友人達と相談の上、役割をそれぞれ取り決め、それに即した機体を選定していた。その為、開始後すぐに機体購入に向かうはずだったが、先が全く見えない状況となっては、その機体選定自体を白紙の状態に戻さねばならない。
この時の貴宏は知らなかったことだが、自由度の高さを誇るゲームではありがちなことである。初心者にとっては選択肢の多さが逆に気安さを無くし、難易度を上げることへと繋がってしまう。
そんな当惑した様子の貴宏に、偶然近くにいたプレイヤー達の会話が耳に入る。
曰く、まず初めは所持金を稼ぐ為に依頼をこなすべく、傭兵ギルドに登録するのが定石とのこと。
その話を聞き、貴宏はプレイヤーを補佐する傭兵ギルドならば、この先へ進めるに当たり色々と相談に乗ってくれるかもしれないと思い付く。
方針が決まれば、後は早かった。傭兵ギルドへと向かうプレイヤー達の後に続き、貴宏は晴れやかな表情で向かって行った。
そして訪れた傭兵ギルドで多くのプレイヤー達が登録や依頼探しで賑わう中、貴宏は一人のギルド職員を捕まえると、今後の方針を相談し始めた。
このゲーム経験や知識の無い、未経験者ならではの行動が功を奏すことになる。
「まあ、これは今だから話せることだな」
そう言うと、貴宏は少し気恥ずかしげな表情を浮かべる。
これはオンラインに限らず、家庭用のゲームすらも碌に経験が無かったからこそ、先入観が一切無く、可能だったことだ。色々とゲームの知識を得て、一般的な常識や定石を知った今となっては、自身の破天荒さが良く分かる。
しかし、月日が流れると共にその定義は変わっていく。
鋼鉄の新世界ではプレイヤーの補佐を担当するAIカードだけでなく、全てのNPCに対しても同等の性能を持つAIを採用している。その為、全てのNPCがプレイヤーに対して定型文な対応ではなく、人間と変わらぬ受け答えをしてくる。なので、意図せず交流を図っている内に、友好的な関係を築いたNPCから思わぬ情報や助言を貰ったプレイヤーもいたりする。
特にギルド職員に関しては、ソロプレイが実質不可能な難易度設定となっている為、遠からず訪れる難民プレイヤー達への対応も任されていたこともあり、十全な対応を受けられたのである。
突然、今後の方針に関して相談を受けたギルド職員は嫌な顔も見せずに、丁寧な口調で貴宏にあることを薦めて来た。それが戦闘競技場への参加であった。
戦闘競技場は個人競技として作られており、ソロプレイヤーでも遊べる場と初心者の戦闘育成を目的としている。
しかし、開始直後から殆どのプレイヤー達がフィールドへと向かった為、全く見向きもされず、初日を終えた時点でも未だ僅かな参加者しかいなかった。
その結果、第一陣としては出遅れて参加した貴宏であったが、幸運にも十分に追い付ける状況だった。
何故そんなにも参加者がいなかったのか。それは、この戦闘競技場は正式サービスから登場した競技であり、元々はβテスト時にプレイヤー達から「ソロで遊べる場所が無い」「対人戦がしたい」などの要望が出たことで追加されたからだ。
その為、ネット上にも事前情報が殆ど上がっておらず、メディアでもサブ要素として見られていたのか、あまり取り上げられなかったこともあり、認知度が低く開始当初は殆ど人が集まっていなかったのだ。
貴宏としても友人達との連絡が着かぬ以上、当分の間は一人で進めるしか無く、これ幸いとばかりに参加を決めた。
参加後は順調に勝ち星を上げていった。現実世界で空手をしていたこともあって身体を駆使することに長けており、モーショントレーサー方式での操縦との相性も良かった。
また戦闘に於いても、攻撃を仕掛ける呼吸を読むことに関しては格闘経験が活き、他のプレイヤーに対して優位に立ったことも要因の一つと言える。
そんなこともあり、機体の操縦にも慣れると、まだ参加者が少ないランキングをあっと言う間に駆け上って行った。
更に嬉しい誤算もあった。戦闘競技場は個人戦を主体としていることから、MMO――大規模多人数同時参加型オンラインと言うよりも対戦型格闘ゲームに近い。その為、生来人付き合いが苦手な貴宏でも然程苦にせず、この世界にすんなりと馴染むことが出来た。
そんな楽しい日々も終わりを告げる。夏休みも残り僅かとなり、休みが明けると共にプレイ時間も必然的に減少する。それが致命的だった。
戦闘競技場は国内リーグである『2nd Division』から始まり、中立国であるサルアチア商業国で開催される三ヵ国合同の下位リーグ『1st Division』、更に上位リーグである『Premier Division』へと進んで行く。参加者が少なかった初期から始めた貴宏は、現在その頂点であるPremier Divisionに所属していた。
戦闘競技場では、通常プレイヤー自身が申請をすることで対戦カードが組まれる。
しかし、Premier Divisionにだけは独自のルールが存在する。そのシーズンに目覚ましい活躍しているプレイヤーや上位プレイヤー同士の対戦を注目カードとして強制的に組まされる。これは参加者だけではなく、試合を見に来る観客を楽しませたり、賭けを盛り上げる為の演出の一環でもある。その為、開催日の一週間前より大々的に告知が行われる。
当然、指名されたプレイヤーに指定された日時を変更する権利は無く、様々な事情により辞退や棄権が続くとペナルティとして下位リーグへの降格処分とされる。
ここに来て貴宏は、このまま降格処分を受けてまで下位リーグで過ごすか、この機に脱退してフィールドへと出るかの選択を迫られることになった。
そこで連絡が取れるようになった友人達へと相談するも、既に他のプレイヤー達とチームを組んでおり、定員の空きも無い状況だと告げられる。
いくらゲームに慣れたと言っても、生来の人付き合いの苦手が克服された訳ではない。流石に知り合いが一人もいないチームへの参加には躊躇してしまう。
それにいずれ必要になるだろうと開始時よりフィールド情報を小まめに収集していたおかげで、自分のような元戦闘競技場参加者が帰還兵と呼ばれ持てはやされ、掲示板で募集を掛ければ多くの誘いがあることも理解している。ただその裏では、強引な勧誘や定員枠を空ける為の強制的な追放と言ったトラブルも少なくないと言う話も耳にしていた。
楽しむ為に参加しているのに、自らトラブルの火種を抱えるような行動は慎みたい。
とは言え、元ソロプレイ挑戦者であった戦闘競技場の同僚達からは、ソロがいかに無謀かと言うことは経験談として聞いている。
徐々に決断の時は迫り、そんな途方に暮れた状況の中、久々となる大学に出てみれば、友人の口から思い掛けない言葉を耳にしたのだ。
食後のお茶を啜りながら、国光はじっと話を聞いていた。
「まあ、俺の事情はそんな感じだ。それで相談なんだが、もし定員に空きがあるようならチームに加えて貰えないだろうか」
思い詰めたような眼差しを向けて来る貴宏を見ながら、国光は暫し黙考する。
「その前に少し良いか。貴宏はどんな戦闘スタイルをしている?」
国光としては困っている友人に対して協力を惜しまないつもりだが、所属しているオレンジ・ブロッサムは意図した訳では無いが、かなり変則的な機体編成のチームである。
流石に戦闘競技場に参加していたなら支援系統の機体では無いだろうが、他のメンバーとの役割の兼ね合い次第では賛同を得るのが難しくなる。
「えーとだな、銃と盾とロッドを使い、近接戦闘を主戦場としていた」
「おおっ!! そうすると前衛が出来るな」
貴宏の言葉を聞き、国光は一人興奮した様子で目を輝かせていた。
編成的に現状での弱点であり、いずれ補強したいと思っていた前衛職。それも帰還兵と呼ばれている戦闘競技場経験者を加えられるなど、願ってもない話だ。
今現在、帰還兵達は勧誘合戦が行われるほど人気がある。その要因として上げられるのは、フィールドプレイヤーよりも総じて高い戦闘技術を有するからだ。
戦闘競技場はその名に違わず戦うことだけが目的の為、参加者の戦闘回数も非常に多い。対戦相手もAIの操作であるフィールドとは違い、人間であるプレイヤー達なのだ。一戦ごとの戦闘経験から得られる技量に、どれ程の差が付くのかは想像するに容易い。
様々なフィールド知識や経験こそ無いものの、単純な戦闘力だけを考えれば、引く手数多になるのも頷ける話である。そして、この違いこそ、製作側が初心者の育成として組み込んだ狙いの一つでもある。
そんな製作側の思惑にまんまと嵌りながら、国光は考慮を続ける。
装備的にも銃を使用するなら、格闘特化なエレノアとも共存することは十分可能だ。
しかも、貴宏なら現実での付き合いから、性格的にも問題は無いことを保証出来る。
「どうだろうか?」
不安そうに見つめる貴宏に対し、国光は一旦思考を中断すると安心させるように声を掛けた。
「うちは定員に空きもあるから、多分大丈夫だろう。ただ、一応他のメンバーの同意を得ないといけないから、一度ゲーム内で会えないか?」
「そうか……。それで場所と時間は?」
貴宏はホッとした表情を浮かべながら聞いてきた。
「あっ、悪い。今うちのチーム、チェロニツィに居るんだった……」
先日首都であるミーヌフクスを発ち、大森林地帯を左回りで拠点のあるレニンスキへと向かっている最中である。現在はレニンスキからは大森林地帯を挟み、対角となる北西に位置するチェロニツィに滞在している。
その為、シュネイック共和国の南に位置し、Premier Divisionが開催されているサルアチア商業国からは、かなりの距離が離れている。
「それなら問題無い。送迎サービスがあるからな」
サルアチア商業国で開催されるリーグ参加者には、月に数回所属国の街への送迎サービスを利用することが出来る。これは単に所属国内を自由に移動する為だけでなく、他のプレイヤーとの交流を図り、フィールドへの参加を容易にする狙いでもある。
尚、脱退時には所属国内の指定する街まで自身のARPSも一緒に送迎して貰える。
「ほう、そんな制度があるのか。なら、一旦チェロニツィで待ち合わせをするか。時間はどうする?」
「そうだな。街への移動が済んだ時点で、一度現実で連絡を入れる」
送迎手段は輸送ヘリによる空路を使用する為、一般的な陸路と比べ所要時間は大幅に短縮される。
その為、シュネイック共和国を縦断する形となるが、遅くとも夕方過ぎには到着出来るだろう。
「分かった。それじゃあ、連絡を待ってる」
こうして、国光は思い掛けない縁により、友人である貴宏を新メンバー候補としてチームメンバーに紹介する運びとなった。




