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スパークス・メモリアル!!  作者: 蒼奇丹
第一部 A04シリーズ強奪事件

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第一章 今度はすぐに 01

 不幸中の幸いだろう。

 店の外にいる追手が、研究所を襲った一員だったことは。

 おかげで先に気付くことができて、悠司を巻き込まずに済んだ。


 喫茶店を出てからアリアを追う人影は増えていたが、アリアから離れるものは居なかった。

 どうやら追手は悠司の存在に気づいていないらしい。



「あとはどうやって逃げるか、ですね…」



 現れる怪しい人物を避けながら歩いていると、アリアは人気のない路地に入りこんでいた。


 日はすっかり沈んでいる。

 街灯は明るく道を照らすものの、アリアの不安までは照らしてくれない。

 自分とまったく違う拍子の足音が増えていく。



「アリア=ゼフィール博士だな、我々と来てもらおうか」


「――っ!?」



 周囲を警戒しすぎておろそかになったのか、アリアは目の前に立ちはだかる人物に気が付かなかった。

 キャップを深く被り、印象が残らないモノトーンの服装をしている。


 僅かに覗く鋭い目と、右手に隠し持つナイフが、僅かな情報ながら()()()の住人であることを示していた。



「おっ、お断りします。あなたたちなんかに、あの機体は渡しません!」



 アリアは震えながらも気丈に振る舞う。


 あの機体、第四世代タイプA。

 まだ技術として未熟な現時点でさえ、その性能はこれまでの機体を凌駕していた。


 これが悪しき者の手に渡れば、どれだけの血が流れるだろうか。

 研究者としての使命感から、アリアは死んでも渡さない気でいた。


 物影から仲間と思われる男たちが姿を現し、アリアを取り囲む。

 遠くの方ではエンジンの音も聞こえていた。



「これから痛い目に遭っても同じ事が言えるか、楽しみだよ博士。なんせ俺は女子供をいたぶるのが好きだからなァ…」



 そんなアリアの覚悟を嘲笑うように、男はナイフの鋭い輝きを見せびらかす。

 刃に反射する光が、アリアの顔の上でゆらゆらと揺れていた。



 エンジンの音はどんどん大きくなっている。 


 それが最近聞いたばかりのものだと気づくのと、ほとんど同時だった。


 

「突っ込んでくるぞ!」



 一人が叫び、全員が一斉に飛び退く。

 その後数瞬遅れて、男達がいた場所をバイクが通り過ぎた。


 後輪が浮き、タイヤが悲鳴を上げるほど急減速。

 そのまま切り返し、今度はアリアと男達に割って入るようにバイクを停めた。



「このクソ野郎!アリアから離れろ!」

 


 一人、キャップを被った男はまだアリアの側にいて、アリアの腕を掴んでいた。


 

「もしかして――悠司!?」



 バイク、ヘルメット、服装、それら全ては先ほど別れた悠司と同じだった。

 来てくれたのは素直に嬉しかったが、普通の学生に手に追える問題ではない。



「危険です!逃げてください!」

 

「なんだてめぇ、死にてぇのか!」



 アリアが警告するももはや遅く、男は悠司に向かってナイフを突き出した。

 口の端から悲鳴が漏れるものの、目を逸らすことが出来ない。

 

 素早く突き出されたナイフは悠司の腹部を貫――かなかった。


 それよりも素早い身のこなしで、悠司は伸び切った腕の外側に回っていた。

 そして武器を持つ手に二撃。

 握力は保てなくなり、ナイフは容易にもぎ取れた。

 

 あとの流れは一瞬だった。

 驚きで無防備になった股間に金的、痛みでうずくまる顔面に膝蹴り。


 男の鼻はひしゃげて血を垂れ流し、前歯は二、三本へし折れている。



「え?」



 鮮やかにナイフを奪い(ディザーム)、制圧。

 男がナイフで突いてから地に伏すまで十秒もかかっていなかった。



「何が起きたんですか…?」


「いいから、ほらヘルメット。速く乗れ」



 呆けるアリアをよそに、悠司はアリアにヘルメットを被せてバイクへと背中を押す。


 襲撃犯たちも当初は何が起きたか理解できず固まっていたが、すぐ我に返ってアリアの身柄を奪おうと近付いてきた。



「おっと近づくな!俺は本気だぞ、切られてぇか!」



 悠司は怯むことなくナイフを振り回して威嚇する。

 そして乗り込むアリアを確認すると、すぐにナイフを放り投げて発進した。



 悠司はするすると裏道を通って山を登り、展望台のような場所で停車した。

 あたりは真っ暗で、バイクのエンジンが切れると完全に闇に紛れることができた。

 常に木々は少しざわめいていて、少しの会話ならかき消してくれる。



「マジで肝冷えたぜ…。おいアリア、さっきのは一体なんなんだ?」


「それはこっちのセリフでもありますよ!なんですかさっきのナイフを奪うやつ!?」


「知り合いに習っただけ、本番でやるのは初めてだよ。やっぱ度胸って大事だな」


「度胸って…」



 少し息が乱れていて、声がちょっとうわずっているが、悠司は平静そのものだった。

 口で言っているほど恐怖を感じているようには見えない。 



「それより、これでも俺には何も教えてくれないのか?」


「……っ」



 これで悠司は完全に巻き込まれてしまった。

 襲撃犯の標的に悠司も追加されただろう。


 もはや中途半端に離れようとするほうが危険だ。



「……わかりました、全てお話しします。…これからお話することは国家機密なのですが、非常時につき問題ないと判断します」


「なんか急に聞きたくなくなったな」


「大丈夫です。何かあっても何とかします」


「何も起きないでくれよ、マジで…」



 ひとつ深く息を吐いて、アリアは今自分が置かれている状況、そして全ての発端である【第四世代タイプA開発計画】について語り始めた。

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