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第九話 殿下の提案

「きみはこれからどうしようと思っているのかい?」


「わたし、もう行くところがなくて……。一平民として生きていくしかないと思います。貴族の世界は嫌なことが多いですから」


「貴族どうしの間では、どうしても嫉妬し合ったり、いじめとかそれに近いことも多いからな」


「ただ、何をして生きていったらいいかわからなくて。手に職があるわけではないですから」


殿下はしばらく考えていた。


殿下を悩ませるのは、わたしとしてもつらい。


やがて、


「きみに提案がある」


と殿下は言ってきた。


「提案といいますと?」


「グッドランド公爵家の養女になったらどうだろう。もちろん無理にとは言わない。もしきみがOKしてくれるのであれば、話を進めることにしたい」


「養女ですって?」


全く予想もしていなかった提案だ。


「嫌かな?」


「いいえ。光栄です。ただ、家族としてうまくやっていけるかどうか……」


継母、異母妹との対応で苦労をしたわたし。


血がつながっている人たちと一緒に暮らしていけるのだろうか。


「今までのことがあるから、心配するのも無理はない。でも公爵の養女なら心配はない」


グッドランド公爵家の当主はルナード閣下と言い、その奥方はアマンナ夫人という。


家格は高く、この王国でも五本の指には入るそう。


ルナード閣下はこの国の長老の一人として、人望は厚い。


夫婦仲も円満だということだ。


ただ、子がおらず、寂しい思いをしているとのこと。


「前々からわたしにも、紹介してほしいという話はきていたんだ。しかし今までは、そういう人がいなかった。公爵夫妻もあきらめかけていたところだったんだ。きみなら公爵夫妻はより一層大切にしてくれるだろう」


「殿下がそう言うのであれば、素敵な方だと思います。わたし、公爵夫妻のお世話

になりたいと思います」


とにかく今は殿下の言うことを信じるしかない。


「では今日、公爵に話をすることにしよう」


「ありがとうございます」


「よし。これで将来の方向も定まった。グッドランド公爵家の迎えがくるまでは、そのままゆっくりしてくれ」


「重ね重ねありがとうございます。殿下」


「いや、わたしは当然のことをしているだけ」


殿下は少し恥ずかしそうにしている。


こういうところも素敵だと思う。


「ではわたしはこれで。これから午後まで用事が立て込んでいてね」


そう言って席を立とうとする。


まだ行かないで! もう少しおしゃべりをしていたい!


「殿下、もう行ってしまわれるのですか?」


わたしは殿下に話しかけていた。


「もう会うことはできないのでしょうか?」


「そんなことはない。また夕方ここに来る。侍医に診てもらうようにお願いしてある。熱はないようだけど、まだ体が痛いということだから大事にしてほしい。それ以外の時間は、読書をしてもいいし、お茶を飲んでもいい。風呂に入ってもいい。朝食も昼食も、もちろん用意してある。必要なものは持ってこさせるように言っておく。とにかくくつろいでくれ」


「わかりました」


もう会えないわけではないので、ホッとする。


「ではまた夕方」


そう言うと、殿下は扉を開け、部屋から去っていく。


殿下、なんて素敵な方なのだろう。でもそれだけ素敵だということは狙っている人も多いんだろうなあ……。


そう思うと、少しつらい気持ちになる。


殿下がわたしのこと、好きになってくれるといいんだけど、夢のまた夢でしかない……。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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