第十話 公爵家の養女
もう夕方になってきていた。
昼前に侍医の診察を受けた。
熱の方はもう心配はなかったが、足はまだ痛かったので、治療をしてもらった。
それ以外の時間は、殿下のお言葉に甘え、今日一日は、部屋の中でゆっくりしていた。
久しぶりに訪れた穏やかな時間。
いつ以来だろう。
最近、家にいると、継母と異母妹との対応で心が休まる暇がなかった。
公爵家の中も、わたしに好意を持つ人は少なくなる一方。
お父様があの世に行かれてからは、その傾向に拍車がかかった。
フレナリック殿下ともし結婚まで行ったとしても、ラフォンラーヌ公爵家とわたしの間を修復することはできなかったに違いない。
寂しいことだが、仕方がない。
いずれにしても、もうわたしはラフォンラーヌ公爵家どころかリクサーヌ王国の人間でもないのだ。
このフローナドリーム王国の中で暮らしていくしかない。
そう思い、窓の外の庭を眺めながら紅茶を飲んでいた。
庭には雪が積もり、その雪を夕陽が赤く染めている。
「セリフィーヌさん。入るよ」
「どうぞ」
マクシヴィヴィアン殿下が部屋に戻ってきた。
ああ、凛々しいお顔。
「まずきみにいい知らせを持ってきた。グッドランド公爵夫妻がきみを養女にすることを承知してくれたよ」
「もうですか?」
いくら殿下が話をしたとしても、一週間ぐらいはかかりそうな気がしていた。
「まず父と母にきみのことを話した。そうしたら、きみの境遇に同情してくれて、養女の話をすぐにでもまとめなさい、とおっしゃられた」
「ありがたいお言葉です」
国王陛下と王妃殿下にも同情していただいた。
「その足で公爵夫妻のところへ行った。公爵夫妻にきみのことを話したら、すぐに、『そのお方を養女としてお迎えいたします』と言ってくれた。これで今日からきみはグッドランド公爵家の令嬢となる」
「殿下、お忙しいところありがとうございます。うれしいです」
「うん。きみが喜んでくれて、わたしもうれしい」
微笑む殿下。
「それでもう一つきみに言っておきたいことがある」
「なんでしょう?」
「きみはフローナドリーム王国の貴族の養女になったので、王族・貴族たちの子女が通う学校に通わなければならない。きみもリクサーヌ王国では学校に通っていたのだろう?」
「はい。通っておりました」
「まもなく新学期が始まる。それに合わせて通うことになるけど、よろしいね」
「それはもちろんです」
以前の学校では、いじめやそれに近いことがあった。わたしはそれに対して、我慢できるところは我慢していたが、決して居心地はいいものではなかった。
友達がいたのが救いではあったけど。
「わたしもそこに通っている。クラスは男女別々だが、同学年だ。よろしくお願いしたい」
「こちらこそよろしくお願いします」
「この学校もいじめとかそういうものがあるかもしれない。その時は力になる。でもきっと楽しいこともいっぱいあると思う」
「ご配慮していただいてありがとうございます」
「わたしはきみと一緒に、楽しい学校生活がおくりたいと思っています」
「それって……」
殿下はわたしに少し気があるのかな。気のせいかもしれないけど。
もし、そうだとするとうれしい。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
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