第七十話 帰路についたわたし (殿下サイド)
わたしは、リクサーヌ王国の新年のパーティーに招待されていた。
これは外交の一環。
グッドランド王国とリクサーヌ王国の関係は良好ではあるが、今後もその関係を続けて行く為には、地道な努力が必要だ。
パーティーそのものは、好きといえば好き。
ただ、ダンスは踊る気にはまだなれなかった。
でもその内、踊らなければならないのだろう。
女性との出会いの場であり、そこで婚約者を決めることも多いという。
わたしも国を背負って立つ身。
婚約して、結婚をしていかなければならないが、どうしてもその気にはならない。
ダンスの練習は、しなければならないのでしているが、ダンスを本番で踊るのはまだまだ先の話でいいと思っている。
今回はもともとダンスをする予定はないので、その点は気が楽だ。
そのパーティーでは、フレナリック殿下の新しい婚約者が紹介されていた。
以前の婚約者については、全く話がなかったのでどうなったかはわからなかった。
しかし、新しい婚約者になったということは、婚約を破棄されてしまったということだろう。
わたしは、かわいそうだと思うとともに、フレナリック殿下はなぜ婚約を破棄したのだろうか、と思った。
以前の婚約者については、わたしのところにも、いい話が入ってきていて、才色兼備のお嬢様ということだった。
それに対して、フレナリック殿下は、九人の女性と付き合っていたという話が入ってきていた。
しかもその九人全員と別れたという。
女性に興味の持てないわたしにとっては、それだけでも驚くべきことなのだが。
フレナリック殿下とは、あいさつと少しぐらいの話しかしたことはないので、よくはわからないが、話を聞く限り、もともと移り気なところがある人のようだ。
多分、フレナリック殿下は新しい女性に心を移してしまったのだろう。それで、嫌になってしまい、婚約破棄をしたのだと思う。
酷い仕打ちだ。怒りが湧いてくる。
わたしは、以前の婚約者のことが心配になっていた。
心の傷は相当のものだと思う。
その傷を癒すことができることができればいいのだが……。
しかし、わたしはパーティーが終われば、次の朝には自分の国に戻らなければならなかった。
残念ながら、彼女の無事を願う以外のことはできない。
パーティーが終わった次の朝、朝食をとった後、馬車に乗り帰路に着いた。
出発した直後は陽射しもあったが、進むうちに雪が降ってきた。
しかもだんだん強くなってくる。
その中を馬車は進んでいく。
わたしは、彼女のことをずっと思っていた。
かわいそうだと思う気持ちは強いし、なんとか無事でいてほしいという気持ちは強い。
でもそれだけではなかった。
わたしと彼女は会ったことは一度もない。
それなのに、ただの同情以上の気持ちが湧き上がってくる。
そして、それをずっと思い続けている。これは、彼女に対する好意なのかもしれない。
でも彼女の容姿さえも知らないわたし。
どうしてだろう。
どうして、こういう気持ちを持つのだろう。
わたしは、女性に興味はなかったはずなのに……。
そう思っていると、
「人が少し離れたところで雪に埋もれています!」
と御者が叫び。馬車を止めた。
外を見ると、ここから少し離れたところで、体の半分以上が雪に埋もれている人がいた。
「あの人を救うんだ!」
わたしはそう言って、側近とともに馬車を降りた。
そして、雪をかきわけながら、その人の方へ向かった。
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