第三十五話 婚約者の継母からの申し出 (フレナリックサイド)
「これは失礼いたしました」
セリフィーヌの継母は頭を下げる。
そして、
「では本題に入ります。単刀直入に言います。わたしの実の娘であるイレーナと婚約していただけませんか?」
と微笑みながら言った。
わたしは驚いた。
「セリフィーヌとの婚約を破棄し、実の娘イレーナと婚約してほしいというのか?」
継母とはいえ、母親には違いない。それなのにこういう提案をしてくる。
これが原因で、ラフォンラーヌ公爵家の内部が混乱する可能性があることを考慮していないのだろうか?
もちろん、わたしには関係のないことだが、少しは気になることだ。
「殿下のおっしゃる通りでございます」
「イレーナはわたしの気に入るタイプなのだろうか? 気に入らなければ、そういうことをする意味がない」
「イレーナはゴージャスなタイプなので、きっと殿下にも気に入ってもらえるものと思っております」
胸を張る彼女。
「ゴージャスなタイプか……」
「イレーナなら、きっと殿下と幸せな家庭を築いてくれるものと思っております」
わたしは、イレーナに興味が湧いてきた。
しかし、なぜイレーナを推してくるのだろう。
「あなたにとっても、わたしが我慢してセリフィーヌが婚約者のままでいるのがいいのではないかと思うのだが? わざわざラフォンラーヌ公爵家の内紛を誘いかねないことをしようとするのは得策ではないと思う」
そうは言ったが、わたしは、ラフォンラーヌ公爵家がどうなろうと構わないと思っている。
「殿下」
彼女は、
「率直に申し上げましょう。わたしは、自分の娘を王妃にしたいのです。その為にイレーナを育って参りました。それなのに……」
と言って、一回言葉を切る。少し涙声になっているようだ。
「イレーナではなく、セリフィーヌが婚約者になってしまいました。わたしは悔しくてたまりませんでした。しかし、セリフィーヌは殿下のタイプではない。だとすればまだチャンスはある。そう思って参上させていただいたというわけです」
なんという執念。
それほど実の娘を王妃にしたいということなのだろう。
「もし、わたしの言ったことがお気に召さないのであれば、今日わたしが申したことはすべて忘れてください。もう二度とこのようなことはお話しいたしません」
最後の方は涙声になっていた。
自分の娘を絶対に王妃にしたいという強い意志。他の人のことを思いやることのない態度。
わたしは、意外とこの継母のようなタイプは嫌いではない。
それに、イレーナについての興味がどんどん増してきた。
「あなたの言うことはわかった。」
「理解してくれましたか」
「ただ会ったこともないのに婚約に進むわけにはいかない。わたしのタイプでなかったら困るからな」
彼女はちょっと残念な表情をする。
「まずは一回会うことにしよう。次回のパーティーでどうだ。わたしとのダンスに参加させてはどうだ」
「それはいい考えでございます」
彼女の表情が明るくなる。
「では決まりだ。イレーナが魅力的だったら、婚約への道へと進もうと思っている」
「ありがとうございます」
彼女はまた少し涙ぐむ。
「ラフォンラーヌ公爵家のことは心配なさらずにいてください。わたしとイレーナが異論など言わせません」
まあこう言っているのだから、ラフォンラーヌ公爵家のことは二人がなんとかするのだろう。
「今日はありがとうございました。では次回のパーティーで」
笑顔に戻った彼女。
「うん。楽しみにしている」
「それでは失礼いたします」
彼女は頭を下げた後、部屋を去って行った。
わたしがイレーナと会うと言うまでと言った後での態度があれほど変わるとは……。
苦笑いをせざるをえない。
それよりもイレーナだ。
会うと決めた以上は期待が膨らんでくる。
わたしのタイプであればいいなあ、と思う。
そして、フィーリングが合えばいいなあ、と思った。
「面白い」
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