第十四話 婚約したわたし (イレーナサイド)
「イレーナよ。明日、わたしはセリフィーヌとの婚約を破棄しようと思う。お父上とお母上の許可はもうもらってある」
殿下はそう言った。
いつものように、唇を重ね、二人だけの世界に入っていった後のベッドの上。
そして続ける。
「新しい婚約者はきみだ。これももう許可をもらった」
「反対されなかったのですか?」
「理由は聞かれた。でも、『イレーナの方がわたしの妃になるのにふさわしいと思ったので、イレーナを選んだんです』と言ったら、すぐに了解してくれた。両親はわたしの言うことなんでも聞いてくれるからな」
わたしの心は沸騰していく。
やっと、ここまで来た。これでわたしは婚約者になれる。
しかし、その喜びは表情には出さず、わたしは、
「それでは姉上がかわいそうでは?」
といかにも異母姉のことを心配する素振りを見せた。
「きみは姉のことを思いやっているのだね」
「もちろんです。母は違うとはいえ、私の姉ですから」
「そういう心づかいはいいと思う」
「お褒めいただきありがとうございます」
もちろん異母姉に同情する気持ちは全くない。
「しかし、その気づかいは無用だ。わたしはセリフィーヌが嫌いになったのだ。きみがいてくれればそれでいい」
そう言った後、わたしの唇に唇を重ねる。
「殿下、ありがとうございます」
「イレーナよ、これからは婚約者としてよろしく頼む」
「殿下の為に尽くします」
わたしはうれしくてたまらなかった。
その後、わたしたちは、殿下の執務室に移動した。
殿下は、そこに呼ばれていたお母様に、わたしとの婚約についての話をした。
「もちろん異存はありません。ありがとうございます」
お母様もとてもうれしそうだ。
「これでイレーナとの婚約は成立した。正式な手続きはこれからとなるが、明日のパーティーできみをみんなに紹介することにしよう」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
お母様とわたしは深々と殿下に頭を下げた。
そして迎えた新年のパーティーの日。
わたしにとって、最高の日だった。
殿下に婚約破棄された時の異母姉の悲しそうな表情。
その後、公爵家を追放された時の無様な姿。
やっとこれで異母姉よりも上の存在になれた。
そう思うと気持ちがよくてしょうがない。
パーティーでは、殿下が、
「みなさんに紹介しよう。わたしの婚約者、イレーナだ」
と得意そうにわたしを紹介する。
「ご紹介にあずかりました、ラフォンラーヌ公爵家のイレーナです。殿下の婚約者にならせていただきました」
そう言ってわたしは頭を下げる。
一瞬、どよめきが会場内を支配する。
この王国にも令嬢といわれる人達はそれなりの人数がいる。
今回、ラフォンラーヌ公爵家のわたしたち二人しか最終候補に挙がらなかったので、令嬢たち自身や令嬢たちの両親の中で不満を持つ人達がいると聞いていた。
その人達が、同じ公爵家から婚約者が選出されたことで、なおさら不満が高まり、反対する人達が出る可能性はあると思っていた。
ここで反対の声をあげられたら……。
そう思ったが、やがて拍手され始めたので、ホッとした。
内心はともかく、ここはパーティーの席だ。こういう席で反対の声をあげることはできないのだろう。
とにかく、わたしは殿下の婚約者になった。
なったからには、誰が反対しようともう関係ない。
これからは幸せまっしぐらだ。
そう思っていた。
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