第十三話 婚約者になりたいわたし (イレーナサイド)
わたしはイレーナ。ラフォンラーヌ公爵家の令嬢。
愛しのフレナリック殿下の婚約者。
異母姉が婚約者だったのだが、殿下に嫌われたので、わたしが婚約者になった。
もともと異母姉のことは嫌いで、なぜわたしではなく異母姉が婚約者になっていたのか、ずっとそのことを思っていた。
腹立たしかった。
お母様も同じ思いだったようで、わたしはお父様があの世に行った後、巻き返すべく、お母さまと一緒にチャンスをうかがっていた。
殿下と異母姉の仲はどうもうまくいっていないようだった。
これはわたしにもチャンスが出てきたと思った。
ちょうどその頃、パーティーが開かれることになり、わたしも参加することになった。
「イレーナよ。このパーティーでは、殿下とダンスをすることができる。その時に殿下の心をつかんでしまいなさい」
お母さまにそう言われ、わたしはこのチャンスをものにしようと強く思った。
ダンスは幼い頃から得意で、異母姉にも負けないくらいだ。
わたしは意気揚々とパーティー会場に出かけた。
ラフォンラーヌ公爵家の威信をかけた豪華なドレスを着ている。
これだけでも殿下の心を傾けることができそうだ。
パーティー会場では……。
殿下と異母姉が並んでいる。
婚約者なのだから、あたり前なのだが、腹が立つ。
殿下の隣にいるのは、あなたではなくてわたし!
そう叫びたくなる。
しかし今は我慢。
ダンスが始まり、殿下とわたしが踊った時。
その時から、殿下はわたしの魅力に染まっていくのだ。
次々にダンスを殿下と踊る令嬢たち。
しかし、どの人もわたしとは比較にならない。
これなら殿下の心は思いのまま。
わたしは笑いが出てくる。
そして、殿下とのダンスの時がきた。
心なしか、少し恥ずかしそうにしている。
それでも殿下はわたしの手を取り、ダンスが始まった。
ああ、殿下と踊れるなんて、なんて素敵なことなんでしょう……。
今までは遠くからしか眺めることができなかった殿下。
それが今、こんなに近い距離にいる。
わたしの心は沸き立ち始めた。
そして、なんとしてでも殿下をわたしのものにしたいと思った。
その夢の時間は、ほんの数分でしかなかったが、ダンスが終わった後、
「イレーナよ。きみのダンスは素敵だった。気にいったよ。これからも会いに来てほしい」
と言葉をかけてもらった。
今日、ここに来て本当によかった!
心が沸騰寸前にまでなっていく。
わたしは、なんとか心を落ち着かせ、
「姉上がいるのに、ご迷惑ではないでしょうか」
と言う。もちろん本心ではない。
「なあに。あいつとは気が合わないんだ。きみとなら、うまくやることができそうだ」
微笑みながらわたしの手を握る殿下。
これで婚約者への道が開けた。
わたしも微笑み、殿下の手を握り返していた。
殿下とわたしの仲はあっと言う間に深くなっていった。
異母姉とは一週間に一回ぐらいしか会っていないようだったが、わたしは、休日だけでなく平日の夕方も殿下のところへ行くようになったので、ほぼ毎日に近いぐらいのペースで会うようになった。
唇を重ね合うようになり、やがて、二人だけの世界にも入っていくようになった。
キスさえもまだしていない異母姉に比べて、大きくリードしたと言っていい。
やさしい殿下。
わたしは殿下に夢中になっていったが、殿下もわたしに夢中になっていった。
これなら殿下はいずれわたしのもの。
お母様とわたしは、二人で笑い合った。
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