第十二話 誕生日のお祝い
その夜。
わたしは紅茶を飲んでくつろいでいた。
今日はわたしの誕生日。
でも今年は、こうして一人寂しくこの日を迎えている。
去年までは、わたしの誕生日会があった。
継母と異母妹は、儀礼的に祝うだけだったが、お父様がわたしのことを心の底から祝ってくれた。
お父様のやさしさは忘れられない。
まだその時は、殿下と婚約の前で、婚約者が決まる前だった。
しかし既に殿下の王妃候補の選定は始まっていて、ラフォンラーヌ公爵家のわたしたちも候補としてあげられ始められている頃だった。
誕生日会の席でも、お父様にその話を聞かされた。
とはいうものの、婚約、そして結婚というのは、わたしにとって遠い国の話でしかなかった。
そして、殿下については、あまりいい噂は入ってこない。
好きな人と結婚したいという夢を持っているわたしにとっては。気のすすまない話だった。
わたしは、継母と異母妹との仲がいいとは言えず、つらいと思っていて、この家を出たいと思っていた。
わたしの方は、二人との仲を良くしたい為、一生懸命努力していた。
しかし、二人にはわたしの思いは届かず、冷たい態度のまま。
このままこの家にいてもつらくて苦しい思いをするだけ。
殿下との婚約の話は、この家を出るチャンスだった。
しかし、それでも、好きな人と結婚したいという思いの方が強く、気は進まないままだった。
むしろ、これについては、継母と異母妹の方がはるかに熱心で、お父様に働きかけていた。
誕生日会の時も、わたしのことは無視した様子で、お父様に、
「イレーヌこそ王妃候補にふさわしいです」
「わたしこそ王妃候補にふさわしいです」
と言っていた。
わたしはただ苦笑いをするしかなかったのだけど。
王妃候補をラフォンラーヌ公爵家から出すことに決まった後、継母と異母妹は一層お父様に熱心に働きかけるようになった、
お父様は、とても悩んでいたようだが、結局、わたしを婚約者にすることに決めた。
わたしは、お父様の決めたことに従い、殿下と婚約した。
わたしは、婚約者になっても、気が進まないままだった。
王室の中でやっていけるのか、殿下と相思相愛になることはできるのか、という心配があったということが大きい。
そして、何と言っても、好きな人と結婚するという夢が絶たれてしまうのが残念だった。
また、殿下についての評判もいいとはいえない。
そこも心配なところだ。
しかし、婚約が決まった以上はそれを受け入れるしかない。
九人もの女性を愛し、しかも全員と別れてしまった殿下。
とても冷たい人のように思える。
その殿下とうまくやっていける自信は、なかなか湧いてこなかった。
それでも、わたしが殿下のことが好きになれば、殿下もその冷たさを乗り越え、わたしと相思相愛になることができるのは、と思うようになった。
そして、婚約者になったからには、殿下のお役に立とうと一生懸命努力してきたのだけど……。
少し苦笑いをするところがあっても、お父様や多くの人たちが祝ってくれた誕生日から一年が経った。
一人になってしまった。もう祝ってくれる人はいない、つらい思いをし、生命も失いかけてしまった。
しかし、殿下がわたしの生命を救けてくれた。
それだけでなく、グッドランド公爵家の養女にしてくれた。
これほどありがたいことはない。
これからは、殿下のお役に立つ為に生きていきたい。
そう思っていると、ドアをノックする音が聞こえる。
誰だろう? 殿下だといいんだけど。
「どうぞ」
とわたしが言うと、
「遅くなってしまった。申し訳ない」
と言って、殿下が部屋に入ってきた。
殿下がこの部屋に来てくれた。
「これは、わたしからの誕生日プレゼントだ。気に入ってくれるとうれしい」
と言って、殿下はわたしに花を渡す。
「殿下、お忙しいのに……。うれしいです。ありがとうございます」。
わたしは涙がこぼれてきた。
殿下に誕生日を聞かれていたけれど、プレゼントをもらえるとは思わなかった。
「喜んでくれてわたしもうれしい。ケーキもあるんだ。一緒に食べよう」
殿下はそう言うと、ケーキと紅茶を執事たちに運ばせた。
そして、準備が整うと、
「これから二人だけだけど、セリフィーヌさんの誕生日会をしたいと思う」
と殿下は微笑みながら言った。
「殿下、わたしの為に、ありがとうございます」
わたしはうれしさのあまり、涙がますますこぼれてくるのだった。
「面白い」
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