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鍵がない

僕は鍵を探した。ない。隠し場所に行ってみた。鉢をひっくり返した。

しかし鍵はなかった。家の鍵は閉まっている。気配を感じる。

僕はベランダを伝って排気管の中に潜り込むと屋根裏に到達した。

声が聞こえる。

ここはちよりがいる部屋の丁度真上に当たる。

話し声がする。由美子の声だ。

「この話はナイショよ?」

由美子はちよりに話しかけているようだ。

「私ね、あいつとつきあってるの」

つきあってる!?誰と!?

僕は身を乗り出した。

「ううん。正確には付き合う予定、だけどね。あいつね、夢みたいなことばかり言って、本当にバカだし、一生一人で世話するなんて突っ張ってさ」

一生一人で世話する?

僕は思い出した。ちよりを一生世間から隠し通し、ひとりで世話するつもりか?と由美子に聞かれたときに僕の回答だ。

「私ね、あいつのことが好きなの。あいつは気づかないふりしてるけどさ。あいつが思ってるより、あいつのこと、私はずっと好きなんだ」

「由美子……。俺のこと」

僕は身体が熱くなるとともに少々緊張を覚えた。身体が上手く動かない。

「あれ?なんか音がした?」

由美子がそんなことを言っているのが聞こえる。僕は慎重に排気管を後じさりして外に出た。

由美子が僕の部屋にいるのは不思議な事ではなくて、学校の帰り道に立ち寄ってちよりの世話ができるようにと合鍵を渡してあるからだ。では何故に鉢の下のスペアキーがなくなっていたのだろう?

てっきり由美子が持っているのだと思っていたが、由美子には合鍵がある。僕はもういちど物置の棚の裏、その鉢の下に隠してあるはずの鍵を探してみた。鉢をひっくり返すとそこには確かに鍵があった。僕が見落としていたようだ。こんなこともあるのだろう。

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