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アンドロイドは涙を殺す方法を知っている  作者: 和本明子
第二章 目覚めた完全人間
4/21

-1- 「あの“ナイツ”は、私が今まで造った中で最高の改造人間です」

 薄暗い室内。

 一点のスポットライトが、サングラスをかけた長身の男を照らした。


 サングラスをかけた男性は、身体にフィットした黒い革ツナギのような服を着ており、それが良く似合っていた。

 その男から十数メートル離れた所に、同じような格好をした体格の良い男達が五人、立ちはだかっていた。

 体格の良い男達はそれぞれに銃器やナイフといった凶器を手にして武装していたが、サングラスの男だけは何も所持はしていなかった。


 何処からともなく『ピー!』と電子音が鳴り響いた。


 その瞬間、ナイフを手にした二人の男は挟み撃ちするべく左右に分かれてサングラスの男へと襲い掛かり、残りの三人は持っていた銃で狙い撃った。

 サングラスの男は身構えたり避ける動作をせず、その場に立ち尽くし、数多の銃弾が雨のように受ける。


 だが弾丸は、男の身体を突き抜けたりできず、全て跳ね返されたのだった。


 銃弾の攻撃から遅れて、ナイフを持った二人の男たちが挟撃する形でサングラスの男に斬りかかったが、サングラスの男はそれぞれの刃を左右の腕でガードする。銃弾をはね返した身体は刃物などでは傷つけられなかった。


 サングラスの男はナイフを払い除け、左にいた男に人差し指を向けて、指先から“一閃の光”を放つ。

 それはレーザー光線だった。


 心臓がある付近を撃たれた男は、貫通した場所を手で抑えて悶え苦しんだ。続けざまに右の男に素早い所作で回し蹴りを繰り出して、サッカーボールの如くふっ飛んでいく。


 落ち着く間もなく、再び銃声と共に銃弾がサングラスの男に浴びせられる。だが、先ほどと同じく全くダメージを与えられない。

 サングラスの男は弾丸の雨にも動じず、平然として自分を撃つ銃を持つ男たちの元へとゆっくりと進んでいく。


 攻撃している男の一人が肩にかけていたバズーカ擲弾発射器を取り、狙いを定めた。


 本来なら戦車相手に使用する武器だが、銃弾が通用しない相手(サングラスの男)にとって不足は無かった。バズーカのミサイルが撃ち放つ。


――ズッガーン!


 耳を引き裂く爆発音と共に大地を揺るがす衝撃が襲い、爆発の衝撃で地面が割れ、炎と煙が空に舞い上がった。

 身体の残骸すら残っていないだろうと、男たちは勝利を確信した――が、煙の中からレーザー光線が飛び出して、一人の男に命中した。

 撃たれた男は声も挙げられず、その場に倒れ込んだ。


 直後、サングラスの男は煙をかき分けて飛び出し、戸惑う男たちの間に割り込んで、三人に次々と重いパンチを食らわせてノックダウンさせた。

 最後の一人は銃を撃つ間もなく、サングラスの男の蹴りが腹部に入ると、意識が途絶える。この場にはサングラスの男だけが立っていた。



 室内の照明が全て点灯して照らす。


 天井の換気扇が回り始めて、立ち込めていた煙が排除されていくと、サングラスの男の姿がハッキリと見えた。


着ている服は銃弾や爆風などで所々破れているが、中身……身体は一切傷付いていなかった。

 どこからか『パチパチ』と拍手音と共に、


「ご苦労」


 と、重く低い声が辺りに響き轟いた。

 別の場所で座り心地が最高の椅子に座して、男たちの戦いを一部始終モニターで観覧していた男がいた。


 髪はオールバックにした、鋭い眼光、年齢は五十歳ぐらいで、深いシワが厳つく強面の顔をより映えさせていた。彼の隣に居るだけで思わず臆してしまうほどの重圧を感じる威圧感を漂わせていた。


「素晴らしい。今までの戦闘タイプをいとも簡単に……」


 強面の男が機嫌が良い声で呟くと、背後に立っていた老人が恐縮しつつ口を開いた。


「お褒めいただきありがとうございます」


 所々汚れている白衣を着ており、後頭部のみに残された白い髪が綿菓子のようにふんわりしていた。その白い髪と同様に眉毛も白くなっており、やや長く垂れ下がっているのが特徴だった。

 白髪の老人は、話しを続ける。


「今までの戦闘タイプは“ドーピングナノ”に耐えられるように無駄な筋肉増強などを行なっていましたが、如何せん、その所為で動きが鈍くなっていました。しかし、あの者に投与した新型のナノは、細身の体型のままに身体機能を向上させ、また皮膚などもバイオコーティングでダイヤモンドのように硬く変質することが可能になりました」


「なるほど、それであのマシンガンの弾すら効かない訳か」


「そして次に注目するべき点は、あのレーザーです。あれはナノによって、体内にある水素を核融合させて、レーザーを放出させております。素手ながらも無限の武器を手にしているようなものです」


「全てにおいて最高のデキだな……」


「はい。あの“ナイツ”は、私が今まで造った中で最高の改造人間です」


 老人の自慢めいた口調と台詞に、強面の男は思わずニヤリとほころんだ。


「ナイツか……」


 サングラスをかけた男の名前である。


「気に入った。博士、あれは大量生産が可能なのか?」


「はい、デンジャー様。予算とお時間を頂ければ……」


「そうか、ならば直ぐに生産を行え」


 デンジャーと呼ばれた男は、意味ありげに含み笑いをする。


「あとは“完全人間パーフェクト・ヒューマン計画”だけか。そっちの方はどうなっている?」


「プログラムや装置の方は、ほぼ構築は完了しております。あとは素体の方だけなのですが……んっ?」


 話しの途中で、博士と呼ばれた男の懐から電子音が鳴り響いた。そこから、おもむろに通話端末機を取り出し、呼び出しに応じた。


「わしだ。どうした……うん? なに、それは本当か!」


 突然声が大きくなった博士に、強面の男が気に留める。


「どうした?」


「あ、デンジャー様……素体が、発見されたそうです」


「なに! それは本当か!」


 デンジャーの鋭い目つきが大きく開口して、勢い良く椅子から立ち上がった。

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