○保護者に体育祭○
○舞夏side○
「愛沙ー!綾ー!大稀ー!頑張れー!」
「頑張れー!」
唯と吉昭と応援をする。
砂地のところで飛ぶせいかみんな跳びにくそうだ。
「20!21!22!」
みんなの掛け声が響く。
約三分。フィニッシュの合図がした。
私たちの組(B組)は回数は33回。亜利と飛悟の組(A組)は34回。后也の組(C組)は44回と、大縄跳びはC組の圧倒的勝利。
ぞろぞろと選手たちが戻って来たが、その中に愛沙の姿はなかった。どうやら、実況の用意に行ったらしい。
「次、玉入れだろ。ほら、三人とも行けよ。」
と隣から綾の声がした。はーい、と返事をしてグラウンドへと行く。
今年はPTAと近くの幼稚園生が参加する玉入れ。
母さんが出ようか出まいか悩んでいたのだが。
「ねぇ、あれって、愛沙のお母さんと舞夏のお母さんじゃないかな?」
唯が指をさす。
「げっ、本当だ…!」
二人は呑気に手を振っている。
本当にあのふたりだけは侮れない……!!
幼稚園生の入場の時、誘導をしたのは飛悟の妹だった。笑顔で手を叩きながら誘導している。
その後ろには、付き合いが長い私でさえ見た事がない愛沙の笑顔があった。
「あ……愛沙!?」
「わー……久しぶりにみた……愛沙ちゃんがあんな笑ってるとこ……」
隣に並んでいた吉昭がぼやく。
詳しく話を聞いてみると本当の彼女は年相応の人格(と、いう言い方も変だが)と場合に合わせる人格が存在するらしい。私の知る限りでは、クールで大人びた所や狂変してしまう所までしか知らない。
「あはは……なんだか、久しぶりに見たら怖いね」
「吉昭が言うなら余程ね」
はぁ、と軽く溜息を吐く。
「それでは、始めます。」と実況役員の声がした。
○愛沙side○
今さっきまでなぜ、幼稚園生の誘導なんかしていた(ことになっている)のだろう。
次の選抜リレーが最初の実況。一応。一応である。
実は本当の事を言うと、飛悟の野郎がこの仕事のはずだったのだが、いなかった(らしい)ので私が変わりに(人格を)引っ張り出された(そうだ)。
「愛沙ぁ、すっかりぼーっとしてるなぁ」
飛悟に頭をぐしゃっと持たれる。
痛いと言いながら彼の手を振り払う。
「あ……ごめん。なんだっけ。」
「いや、なんも言ってはないんだが。」
「……そう。」
なんとも言えない。なにせ、さっきまでの記憶がないのだから。
あ、ちょうど玉入れ終わったか……。そう思っていると、三人のお母さんがこちらに向いてきた。
3人は仲が実に良さげであった。
「あら、愛沙ちゃん。飛悟くん。」
「こんにちは〜」
「あ、舞夏のお母さんと愛のお母さんと……えっと…」
飛悟が呟いている。舞夏んとこと母さんと……後もう一人の綺麗な女の人。この人は確か……
「大稀のお母さん………?」
そういうと飛悟は何度かあわあわとこちらをみて、その大稀のお母さんはニコッと笑った。
「えぇ。お久しぶりね。愛沙ちゃん、飛悟くん」
やっぱりそうだ。大稀に似ない黒髪の、それも漆黒の長い髪はよく覚えている。
「が、学校行事で、見たことなかったような…………」
飛悟がポツポツと呟いていると大稀のお母さんは「ふふ」と笑い、
「小学校以来だもの。飛悟くん、写真で見るより可愛いわね」
「ふ……ふぇ!?そそそ、そんな!」
珍しい表情に、私は、はぁ、とついつい溜め息をつく。
すると、後ろから「松羅さんに平斗さん、あら、林道さんまで〜!」なんて女性の声がする。
3人は振り返ると声を揃えてその女性を呼んだ。
「宮技さん!」
彼女たちは楽しそうに話していたからそっと私たちは立ち去った。




