第二十一話 ダメおっさん、リリアに餌付けする
まあまずはいつもの料理からだ。リリアはすらっとした体つきであまり凹凸がない。恐らくご飯があまり好きではないのだろう。ちなみにサラは隠れ巨乳だぞ。さらし巻いてるけどな。無理やり飯を食わせることはしたくないが、稽古は体力を使う。俺は少し考えながら、リリアに何が好きかを聞く。
「リリアは肉は好きか?」
首を横に振る。やっぱりあんまり肉は食べないのだろう。
「じゃあ野菜や果物が好きか?」
ここでリリアは首を縦に振る。お、目の輝きが違うな。野菜と果物か。
「乳製品はどうだ?」
リリアはこくりと頷く。チーズなんかも好きかな。
うーん。何を作ろうかな。サラダの中にオリーブオイルとチーズを混ぜたやつは好きだろう。だが肉は欲しい。うん、野菜たっぷりのハンバーグにしようかな。異世界の勇者が目の色を変えて食べていたものだ。人参と玉ねぎをたっぷり刻んでオーク肉は臭みを消すためにハーブを練り込む。サラがあたしも手伝う! と言ってこちらに来たので野菜とオーク肉を刻んでもらう。リリアは少し興味深そうに台所をのぞき込んでいた。ハンバーグは出してるところあまりないからなあ。美味しいんだけど。トマトもそう言えば、買ってきていたよな。
「そうだ、ミートソーススパゲティを作ろう」
「?」
「ガンク! それ美味しいの?」
「おう、トマトソースとお肉が合わさった麺料理さ」
「やったわ!」
サラが喜びを爆発させて、リリアはそわそわして俺の手つきを見つめてる。フフフ、リリアの嬉しそうな顔を見ると作り甲斐があるな。俺はまずハンバーグを三人分、いや四人分作っておいた。どうせ食いしん坊のラーナが遊びに来るからな。かまどに火をつける際にあえて生活魔法の種火ではなく、火魔法のファイアーボールで着火する。それを見たリリアは手をパタパタとさせて、目を丸くしていた。何故かサラがどや顔をする。前にも言ったが料理の際に魔法を使って加減を覚えるのが俺の流儀だ。何かしら、この方法がリリアの心に響くと良いな。
主食は俺が果物から作った酵母で発酵させた白パンだ。ミートソーススパゲティの麺も暇なときに手打ちして乾燥させたやつだ。異世界の勇者はこの麺をどちらかというとうどんだと言っていた。東方で食べたうどんは本当に美味しかったからな。俺の好みがそっちに寄っているのかもしれない。
成形したハンバーグの真ん中にくぼみをつけて、フライパンで弱火で蒸し焼きにする。しょうがを入れておくことも忘れない。ミートソーススパゲティはトマトを細かくカットしてハーブとにんにくで炒める。スパゲティは少し硬めに茹で上げる。異世界の勇者は自分で作れもしないのに、俺にレシピを教えては作ってほしいと頼んできた。”彼女”は異世界から元の世界に帰還して無事に生きているのだろうか。つくづくあいつの呪いをかばって受けた俺を褒めたくなる。
よし、昼ご飯ができたな。果物から発酵させた白い発酵パンと野菜とオーク肉のハンバーグとミートソーススパゲティだ。我ながらかなり美味しそうな匂いがする。
「サラ、魔力操作を使って、魔力で皿を運ぶんだ」
「えー、こぼしたらどうするのよ」
「しょうがないな。こうやるんだよ」
俺は自分の両腕と魔力で作り出した透明な腕を使って四人分の皿を運ぶ。
俺の魔法の使い方にリリアはまた目を輝かせた。
よし、もう少しで本心が聞けそうだ。
「美味しい匂いですね」
「早っ!」
また食いしん坊のラーナが見ていない隙に転移してきた。
本当は食べさせなくてもいいのだがラーナは本当にご飯を美味しそうに食う。それは料理人とって一番うれしい褒美だからな。断れない。
「はあ、皆手を合わせて!」
『いただきます!』
「……」
俺たちのあいさつに首をかしげていたリリアだったが、一緒に手を合わせると少し顔をほころばせて、ミートソーススパゲティにフォークを付ける。
「フォークでくるくる巻くんだよ」
「……!」
リリアはミートソーススパゲティを口に入れた瞬間、つぼみが花を咲かせるように幸せそうな表情を浮かべる。サラはハンバーグを口に入れて俺の肩をバシバシ叩いてくる。ラーナは無表情な顔などいつもしていないかのように頬にパンパンに食べ物を詰め込んで笑っていた。
「どうだ、美味いか?」
「……!」
リリアは本当に嬉しそうな顔で俺に微笑む。肉と野菜入りのハンバーグや、ミートソーススパゲティをお行儀よく交互に食べていた。俺は依頼以外の日はゆっくり噛みしめてご飯を食べることにしてるんだ。ああ、今日の飯も美味いな。
「お代わり!」
「ガンク殿、わたくし淑女ですのでもう三個はハンバーグを食べられます!」
「サラはともかく、ラーナは淑女の意味間違ってるだろ」
「細かいことは良いのです。ぎぶみーハンバーグ!」
俺はため息をついて、リリアに話しかける。
「サラはともかく、ラーナは本当に有能なやつなんだが、ご飯が絡むとバカになる」
「!」
リリアはクスクス笑いながら、俺の言葉にうなずく。
やっと年相応の顔になってきたな。
俺はサラとラーナにお代わりを作ってやった。あ、ちゃんとチーズと緑野菜のサラダも出したぞ。オリーブオイルは健康にいいしな。三人の笑顔が俺の一番のご褒美かもな。
俺たちは飯を食べた後、食休みをしながら、リリアに話しかける。
サラがリリアに好きなものや嫌いなものを色々と質問していた。
「リリアって綺麗な金髪ね。それにお人形さんみたい」
「!」
リリアはサラの言葉に恥ずかしそうにしていた。
そろそろいいかな。俺はサラに便乗してリリアに質問した。
「リリア。お前さん、魔法を使えないんじゃなくて使いたくないんだろ?」
俺の言葉を聞いたリリアは、動揺したように否定しようとしたが、俺の目線を受けてがっくりと肩を落とす。
ふむ。やっぱりか。リリアにペンを渡し、筆談で事情を聴きだすことにした。
次話に続く。
小説をいつも読んで頂きありがとうございます。面白かった、また読みたいという方は高評価やブックマークをお願いします。作者の励みになります\( 'ω')/
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を★★★★★にしてくださると作者が大変喜んで更新頻度が増えるかもしれません。よろしくお願いします。




