エピローグ
勇者さんの身体に埋め込まれているソレを見た僕は、驚きのあまり言葉を失う。
勇者さんは、上着を下ろすと、遠くを見詰めながら話し始めた。
「数年前のことだ。俺はパーティーメンバーと共に、高難易度のダンジョンに潜っていた。だが、まだランクの低かった俺には、そこへの挑戦は早過ぎたらしくてな。ダンジョンのボスに心臓を抉られ、喰われた。これは死んだなと、覚悟した。当時、グラーレは、まだ上級回復魔法までしか習得していなかったからな。だが、その時、冒険者仲間のアーティが偶然通り掛かった。そして、この核を金貨百枚で買ったんだ。グラーレが核を埋め込み、上級回復魔法を掛けたことで、俺は助かった」
そこまで話した勇者さんは、僕を真っ直ぐに見据えた。
「どうだ、ロス。こうして二人揃ったのも何かの縁だ。一度本気で戦っ――」
「勇者さんも〝魔導具〟を埋め込んであるんですね! すごい偶然!」
「!」
「叔父さん! 勇者さんが僕と一緒だったよ! って、あ、そっか。映像魔法はもう消えちゃったから、話せないんだ」
「勇者さんとお揃いとか、なんか嬉しいな~」と、僕がウキウキしていると。
ふと、勇者さんがじっと見詰めていることに気付いた。
「どうしました、勇者さん?」
「……いや」
勇者さんは、一瞬躊躇った後――
「……お前は、叔父のことが好きなんだな」
「はい! 大好きです!」
そう言うと、目を細めた。
※―※―※
馬車が王都に着いた後、僕とセティスは、勇者さんとグラーレさんに礼を言って、別れた。
中央通りを歩いていると、セティスがもじもじしながら、話し掛けて来た。
「あ、あのね、ロス」
「うん」
「えっと、その……」
何故か、俯いて躊躇しているセティス。
何だろう?
何か、深刻な話しかな?
心配しながら、待っていると。
セティスは立ち止まり、意を決して顔を上げた。
「良かったら、その……今度……一緒に買い物行かない?」
目をパチクリさせた僕は――
「もちろん良いよ! 一緒に行こう!」
――笑顔で答えた。
パァッと、セティスも明るい笑みを見せる。
「約束よ! 約束だからね!」
そう言って、セティスはブンブンと手を振って、家に帰って行った。
「さ~て。僕も帰ろうっと!」
僕は、夕暮れの中、家路を急いだ。
※―※―※
家の玄関を開けた僕は――
――僕の大切な家族が――
「あっ」
――今にも泣き出しそうな顔で、僕を出迎えてくれて――
――それを見た瞬間――
――自然と、〝その言葉〟を口にしていた。
「ただいま、父さん!」
「!!! お゛がえ゛り゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛! む゛ずごよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」
―完―
最後までお読みいただきありがとうございました! お餅ミトコンドリアです。
新しく以下の作品を書き始めました。
【無自覚最強おっさん武闘家】田舎道場師範の無名おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女である事が判明、何故か全員から言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
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