↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/60

短編5話「とある日のカイル少年」

すみません、諸事情によりリアーナの話は削除しました。

代わりにカイルの回想をお楽しみください。

――本文――





「カイル、お前は次男だ。

 そのことを分かっているな」


「はい、父上」 


「オーベルト家は長男に継がせる」


「承知しています」


「済まない。

 優秀なお前が婿に入れる家は必ず探す」


「はい」


俺はオーベルト伯爵家の次男として生を受けた。


小さな頃から勉強は得意だった。


気がつけば家中の本だけでなく、帝都の図書館の本も全て読み終えていた。

周囲が俺の賢さに気がついた時には、すでに兄が跡継ぎに決まっていた。


父が俺を持て余してるのは分かっていた。


優秀な祖父と比べられ、「皇帝の懐刀と言われるオーベルト伯の嫡男なのに、この程度か……」周囲に失望されるうちに、卑屈になってしまった。


俺はその祖父に似ているから、父は俺のことが苦手なんだろう。


婿養子に行く話も、当てにしない方がいいだろう。






そんなとき、祖父が訪ねてきた。


祖父は先帝の側近で「オーベルトの虎」とか、「皇帝の懐刀」と呼ばれ、怖れられた人物だ。


「カイル、来なさい。

 お前に合わせたい方がいる」


「はい、おじい様」


おそらく、俺がこのままオーベルト伯爵家にいても、芽を潰されるだけだと思ったのだろう。


俺は祖父を尊敬していた。


彼は、相手の顔を見ればその人物の十年後、二十年後が見れると言われていた。


その祖父が会わせたいというのだから、相当の大物に違いない。


皇帝陛下の嫡男エグモント殿下かもしれない。

彼は皇太子として将来を期待されている。


彼に支えられたらいいなぁ。







しかし、俺が連れて行かれたのは……。


「失礼します。

 アルドリック殿下、ティーガーです。

 孫のカイルをお連れしました」


「ティーガー爺か、入れ入れ」


皇帝の四男、側室の子アルドリック殿下の部屋だった。


「今、リアーナに手紙を書いているところなんだ!

 リアーナは凄いんだぞ、可愛くて、清らかで、笑顔がキュートで、清楚で、美しくて!

 天使や妖精だって彼女の可憐さには叶わない!」


俺と同い年くらいの黒髪の少年が、楽しそうな顔で机に向かっていた。


口を開けば「リアーナ」「リアーナ」「リアーナ」……。


人の上に立つ、知性もカリスマ性も欠如しているように俺には見えた。


「おじい様は、俺にコレに支えろとおっしゃるのですか?」


「ばかもの! 殿下に向かって『コレ』とはなんだ! 口を慎め!」


祖父に思いっきり、げんこつを食らった。


「アルドリック殿下、申し訳ございません!

 孫が失礼をいたしました」


「気にするな!

 僕は今とっても機嫌がいい。

 多少のことは気にしない」


殿下は、俺の言葉など意に介した様子もなく、熱心に手紙を書いていた。


「殿下の寛大なお心に感謝申し上げます。

 カイルも謝罪しなさい」


「申し訳ありませんでした」


祖父に頭を掴まれ、無理やり頭を下げさせられた。





本格的に側近として仕えるのは数年後ということになり、その日は家に帰された。


家では厄介者、父や兄との仲はぎくしゃくしているし、尊敬していた祖父の目は節穴だったし、将来仕えるのはあのポンコツ皇子。


第四皇子が皇太子になる可能性は殆どない。


側室の子では、皇太子となった兄弟の側近にもなれないだろう。


どこか地方の弱小貴族の婿に入って終わりだろう。


俺の人生はあの人に仕えて終わるのか?


将来のことを考えると、自然とため息が漏れた。





数年後。


祖父が他界。


俺はアルドリック殿下に正式に仕えることになった。


「失礼します。

 アルドリック殿下、本日よりお仕えするカイル・オーベルトです」


「ああ、ティーガー爺の孫だったな?

 せいぜい励め。

 無能なら切り捨てる」


数年振りに再開したアルドリック殿下は、前とは別人のようだった。


氷のように冷たい目をし、使えないものは容赦なく切り捨てた。


勉学や剣術に熱心に打ち込んでいるのはいいのだが、ほっとくと食事も睡眠の時間も削ってしまう。


魔物の討伐に向かえば、命はいらないんじゃないかという戦い方をする。


この方にはストッパーが必要だ。


殿下がこうなった理由は、初恋の人が隣国の王太子と婚約し、聖女として城に上がってしまったかららしい。


手紙を出しても返事すらもらえないようだ。


隣国の王太子の婚約者で聖女では、ほぼ手出しは不可能。


それでこの荒れようか。


世話の焼ける御仁だ。







側室の子でも皇族。


アルドリック殿下のところには、いくつもの縁談が持ち込まれたが、殿下は全て断っていた。


どんなに待ってもリアーナ様が手に入ることはないのに。


この方は一生独身かもしれない。


リアーナ様を手に入れるなんて、絶対に不可能だと思っていた。


だけど、奇跡は起きた。


リアーナ様が婚約破棄され、聖女も首になり、国外追放されたのだ。


ハルシュタインの王太子はバカなのか?


国の結界の供給源であるリアーナ様を首にするとかあり得ない。


でも、まあそのお陰で我が国の皇太子が笑顔になったんだから良しとしよう。







リアーナ様は聖女として回復の力も持っているが、それより恐ろしいのは彼女の描く絵の力だ。


彼女の描く絵には精霊が宿る。


精霊を怒らせたハルシュタインは、嵐によって港が封鎖された。


ルーデンドルフ帝国でも、精霊は力を振るっている。


「アルドリック殿下とリアーナ様の結婚に反対する貴族がまた一人消えたか……」


消えたと言っても消滅したわけではない。


原因不明の病にかかり登城不能になったのだ。


過保護な精霊の力だろうが、確証はない。


「殿下もリアーナ様を裏切り浮気したら、消されるかもしれない」


……あの人に限りそれはないか。


永遠の愛を疑うことなく信じられる人だから、精霊の加護を受けるリアーナ様の傍にいられるんだろうな。


俺にはとても無理だ。


リアーナ様がお祭りで「千年後も平和が続きますように」と願って、ランタンを飛ばしたそうだ。


彼女の願いならきっと天に届くだろう。


「覚えておきなさいカイル。

 アルドリック殿下は千年続くルーデンドルフ帝国の繁栄と平和の礎を作る方だ」


祖父の言葉をふと思いだした。


アルドリック殿下は、この国に平和をもたらす凄いお方を伴侶にしようとしている。


「本当、おじい様の人を見る目は大したものですよ」


俺は天を仰ぎ、祖父を思い手を合わせた。







――終わり――








本編に一回も出て来たことはありませんが、皇帝とその息子には名前があります。

皇帝バルデマー

長男エグモント

次男マルクス

三男イーノ 


正室ユリア

側室(アルドリック母)ブルーヌ





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


    ◆◇◆ 【お知らせ】 ◆◇◆

『妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される』

コミカライズ第9話が、本日8月21日よりコミックシーモア様にて先行配信スタートしました!


あわせて、今回より配信スケジュールが変更となります。


・新スケジュール:毎月「第三金曜日」配信

(※これまでは毎月第一金曜日でした)


覚えていただけると嬉しいです。


茶賀未あと先生による美麗な作画が目印です。

コミカライズでも、リアーナとアルドリックの物語をお楽しみいただければ幸いです。


・作画:茶賀未あと先生

・原作:まほりろ



【配信ストア情報】

・コミックシーモア:第9話 先行配信中(本日8月21日より最速でお読みいただけます)

・pixivコミック

・BOOK☆WALKER

・ブックライブ

・Renta!


各ストアにて絶賛配信中です!

この機会にお手に取っていただけると嬉しいです!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★ コミカライズ配信中 ★

『妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される』

9flu2ls9hy224m8s54pmj4zx7s0j_h2h_rs_138_esjo.gif

☆ コミックシーモア様にて先行配信中 ☆

作画:茶賀未あと 先生 / 原作:まほりろ

【© 茶賀未あと/まほりろ/シーモアコミックス】
 ※無断転載禁止
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇◆◇ 【 まほりろ の作品一覧 】 ◇◆◇

嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。

捨てられた悪役令嬢ですが、美貌の王弟殿下から溺愛されています

踏み台令嬢に転生したのでもふもふ精霊と破滅フラグを壊します!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。