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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第二章 王立学院編
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第39話 首席アレン・クロイス

「次は調査系もいいな」


 昼休み。


 四人で机を囲んでいると、カイルがそんなことを言った。


「この前まで討伐って言ってたのに?」


 リリアが返す。


「それはそれ。実際に外へ出てみたら、調べたり記録したりするのも結構面白かったんだよ」


「分かるよ!」


 ユウも身を乗り出した。


「薬草採取も、やってみたら確認することがたくさんあったもんね」


「ユウは次、何やりたい?」


「僕は運搬もやってみたいな。町の中でも、依頼で歩いたら普段とは違うものが見つかりそうじゃない?」


「それも面白そうですね」


 エステルが頷く。


「次の掲示、早く出ないかな」


 そう話していた時だった。


「ちょっといい?」


 四人が顔を上げる。


 そこに、一人の男子生徒が立っていた。


 整った顔立ちの少年。

 きちんと制服を着た姿は、周囲にいる一年生と何も変わらない。


「あ、この前の……」


 リリアが思い出したように言う。


 学院冒険者の登録をした日。

 一年生の総合成績一位として、名前を呼ばれていた少年だった。


「ちゃんと話すのは初めてだよね」


 少年はごく普通の調子で名乗った。


「俺はアレン・クロイス。同じ一年生」


 ユウも姿勢を正す。


「ユウ・リシェルです」


「リリア・フェルナです」


「カイル・フェルド」


「エステル・ヴァレインです」


「ありがとう。灰牙狼と戦った時のこと、聞いてもいい?」


「はい。僕たちの依頼についてですか?」


「うん。時間、大丈夫?」


「もちろんです。まだ昼休みもありますから」


 空いている椅子を引く。


「よかったら、どうぞ」


「ありがとう」


 アレンは椅子を寄せ、四人の輪に加わった。


「学院で公開されている活動記録を読んだんだ。旧街道でDランクの灰牙狼と遭遇して、一度は戦闘を避けようとした。そのあと逃走が難しいと判断して、四人の連携で討伐したって」


「活動記録って読めるんですね」


「全部じゃないよ。依頼内容と結果、大まかな経過くらい。誰が何の魔法を使ったとか、具体的にどう戦ったかまでは出てない」


「へえ、そうなんですね!」


 思いがけない話に、声が弾む。


「実戦の記録は勉強になるから、時々読んでるんだ。それで『四人の連携』ってところが気になった。よければ、実際にはどうつないだのか教えてほしい」


「もちろんです!」


 答えると、アレンが首を傾げた。


「それと、ユウさん」


「はい?」


「同じ一年生だし、俺には敬語じゃなくていいよ。名前もアレンでいい」


「え、いいんですか?」


「うん。その方が話しやすいから」


 一瞬だけ迷ってから、表情を明るくする。


「じゃあ、そうするね! 僕のこともユウでいいよ」


「分かった、ユウ」


     ◇


 四人は灰牙狼との戦闘を、順を追って説明した。


 まず、灰牙狼がカイルへ突進し、カイルの反応が一瞬遅れたこと。


「そこから話すのか?」


「最初からの方が分かりやすいでしょ?」


「本当だけどさ……」


 リリアとエステルも、初めは実戦の速さについていくだけで精一杯だった。


「私が水を当てたんだけど、それだけじゃ止められなかったの」


「その水を利用して、私が足元を凍らせました」


「それで動きが鈍ったんだ」


 カイルが続ける。


 アレンは途中で口を挟まず、一つずつ聞いていた。


「それから最後は?」


「僕が光障壁を出したよ」


「灰牙狼を防ぐため?」


「ううん。カイルの足場にしたんだ」


 アレンの目が僅かに見開かれた。


「障壁を足場に?」


「うん!」


 机の上で手を斜めに傾ける。


「カイルが上から攻撃できるように、こういう角度で出したんだ。そこを踏んで跳んでもらったの」


「その場で考えたの?」


「そうだよ。でも、僕一人で思いついたって感じじゃないんだ」


「どういうこと?」


「リリアの水を、エステルがそのまま利用して凍らせたでしょ?」


「うん」


「それを見て、一人の魔法を次の人につなげるって、こういうことなのかなって思ったんだ」


 三人へ目を向ける。


「だったら僕の障壁も、ただ攻撃を防ぐだけじゃなくて、カイルがもっと動きやすい形にできるかもしれないって。それなら最後までつなげられそうだったから」


「なるほど……」


 アレンは考え込んだ。


「俺なら、自分の魔法をどう当てるかまでは考えても、味方の移動手段として使うところまでは思いつかなかったかもしれない」


「アレンでも思いつかないことあるんだな」


 カイルが言う。


「当然あるよ」


 アレンはあっさり答えた。


「だから聞きに来たんだ。知らないやり方を知れたら、次に選べる手段が増えるから」


「それ、いいね!」


 ユウの表情がぱっと明るくなる。


「僕もアレンの戦い方、今度見てみたいな! 僕たちとは全然違いそうだし」


「もちろん。俺も見てもらいたい」


「じゃあ約束ね」


「うん」


 昼休みの終わりを知らせる予鈴が鳴った。


「あ、もうこんな時間か」


 アレンが椅子から立ち上がる。


「聞かせてくれてありがとう」


「こっちこそ! 話してたら、僕もあの時のことをもう一回整理できたよ」


「じゃあ、また」


「うん。またね、アレン!」


     ◇


 午後の実技場へ入ったところで、リリアが足を止めた。


「あれ、アレンじゃない?」


 授業開始までは、まだ時間がある。


 実技場の端で、アレンが一人、何かを試していた。


 詠唱を終えると、空中に小さな魔力の板が現れる。


 一度目。


 足を乗せた瞬間、板が崩れる。


 二度目。


 作り直した板の角度を変えたが、踏み込んだ身体が横へ傾いた。


 アレンは小さな帳面を開き、今の結果を書き込む。


「何してるんだ?」


 カイルが見ている前で、三度目の板が作られた。


 先ほどより斜めに傾いている。


 アレンが踏み込み、強く蹴った。


 身体が前方へ大きく跳ぶ。


「もう始めてる……」


 リリアが呟いた。


 着地したアレンは再び帳面を開き、手早く書き留めてから顔を上げた。


 こちらに気づき、歩いてくる。


「ユウ」


「なに?」


「さっき話してた障壁、今のより角度ついてた?」


「うん。もっと前へ進みやすい角度だったよ」


「やっぱり」


 アレンは自分が作った足場の位置を振り返った。


「次はもう少し傾けてみる」


「すごいね! 聞いたばかりなのに、もう試してるんだ」


「忘れないうちにやった方が、どこでつまずくかも見えてくるから」


「じゃあ、うまくいったら僕にも見せてよ!」


「いいよ」


 授業開始の鐘が鳴った。


「またあとで」


「うん!」


 アレンは帳面を閉じ、自分の班へ戻っていく。


「失敗したところも、すぐ次に直してたね」


 ユウは感心しながら、その背中を見送った。


「だから一位なんだろうな」


 カイルが言う。


「僕も、思いついたことは試してみようかな。できることが増えたら楽しそうだし!」


「ユウまで影響されて、休み時間のたびに試し始めないでよ?」


 リリアに言われて振り返る。


「毎回はしないよ。たぶん!」


「最後がちょっと怪しい」


「ちゃんと授業には間に合うようにするよ」


「そこは心配してないけどね」


 エステルが口元を緩めたところで、クラリスが実技場へ入ってくる。


 四人も話を切り上げ、それぞれの位置へ向かった。

第2章はここまでです!第三章からは学院遠征編ですが、ここから様々な出来事がさらに起こってきます。

是非読んでいただければ嬉しいです♪

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