終わらぬ戦い
何故かよく通る声の天使(仮)は筋骨隆々で鼻下から顎のフェイスラインまで髭が生えている強面の男で頭部は髪の毛が生えていない。
『汝らは、悪神と悪魔との終わらぬ戦いのために、この地へと天使として転生せし者たちである』
はぁ!?俺たちが天使!?
普通なら頭がイカれたのかと思うところだが、一度は死んでまた転生(?)したからなのか本当に嘘だとも言い切れずにこの意味の分からない状況に混乱する。
それに俺たちは悪神と悪魔?と戦うって…でも俺は元々平和な世界の住人だしいきなりそんなこと言われても…こういう展開は好きだけど、いざ自分のこととなると複雑だな。
混乱する俺たちを他所に天使は言葉を紡ぐ。
『いずれ、汝らもこの戦列へと加わる日が来るだろう』
いずれってことは今すぐじゃない筈だから訓練とかしてくれるのかな?じゃないと戦場に出ても直ぐに死んじゃうからきっとそうだよね…てかそうであってくれ!
『それまでは、己を鍛え、力を蓄えよ』
天使はそれだけ伝えると上に飛び上がり消えていった。
え?それまでっていつまで?いきなり明日から戦場に投入されたりするの?なんか雲行きが悪くなったんだけど。
「え?…俺たち強くなれば良いってことだよな」
「そう…だな、でも戦うとかしたことないし…」
「訓練?でも武器もないし…誰か知ってるやついなか?」
「私戦いなんて無理!」
周りの人たちは天使から伝えられた内容に混乱しており蹲って既に病んでそうな人まで出てきている。
「おーい!こっちに色んなゲートがあるぞ!」
その場で立ち止まってどうしよか悩んでいると入ってきたゲートの反対側から声が聞こえてきた。
恐らくあっち側のゲートは訓練場などに繋がっているのだろうと考えて人混みを掻き分けて反対側に向かう。
生憎既に戦意喪失している人たちを助けてあげる余裕は持ち合わせていないので心の中で健闘を祈っておく。
反対側に着くとそこには三つのゲートがあり、既に人が出入りしているのでとりあえず適当なゲートに入ってみる。
* * *
それから三つのゲートを軽く見て回った。
三つのゲートはそれぞれ訓練場と庭園、図書館に分かれている。
一つ目の訓練場は豊富な種類の武器や防具が揃っており、一般的な訓練場の他に円形の闘技場型や森林型など様々な訓練場があり、異なる環境でも訓練出来るようになっている。
それと訓練場にはなんと訓練用の迷宮もあり、後で図書館で知ったがレベルシステムなどは無いので経験値を得て身体能力が上昇することは無いが魔物と戦えるので実践経験を積むにはとても良い場所だ。
二つ目の庭園は憩いの場という感じで静かで景観が良いからリラックス出来る場として使われたり、他の塔の人たちとも交流することが出来たりするので、俺たちより天使歴が長い先輩天使と話せるなら色々と情報が得られると思うが、一人で話しかける勇気は無いので一先ず友達を作るところからだ…
三つ目の図書館は数百の人間が入って広々と使える程広さで勝手に本棚が空中に浮いていたりする以外は現代の図書館のレイアウトに似ている。
あの後真っ先に訓練場や庭園に行く人たちもいたが、情報の宝庫たる図書館で先ずは情報収集をしようと考える人たちが多いようで図書館は人で溢れていて、例に漏れず自分もその一人だった。
そしてついさっきまで図書館で色々調べていた内容によると俺たち天使は文字通り悪神と悪魔との終わらぬ戦いの為に転生させられたらしい。
改めて考えると終わらぬ戦いって…戦えるなら永久に酷使され続けるってことだよね!?ここって労基はあるのかな?
そして俺たちが住む場所は『養天塔』と言うらしく下位の天使は強くならないとこの場所から出ることが出来ないらしい。
この養天塔とは唯の天使の住処では無いらしく転生したばかりの天使の魂を安定させる為にあるらしい。
転生して直ぐに戦場に投入されて精神が崩壊して自壊したり悪魔から魂を奪い易くするのを防ぐ為らしい。
寮完備はありがたいけど、悪魔に魂を奪われるとか悍ましいな…
そして俺たちは、九つ存在する天使の階級の最底辺の
『下天』に属している。
階級は下から順に
『下天』『侍天』『戦天』
『統天』『司天』『憲天』
『審天』『王天』『至天』
そして更に階級毎に一級〜九級に分かれており三階級ごとに下位・中位・上位と区分されている。
この階級の中でも最下級の『下天』の俺たちは命の価値がとても軽いので俺一人死のうとも問題にすらならない。
何故なら天使は死んだ魂が送られる場所である『冥界』から幾らでも作り出すことが出来るかららしい。
無数の俗世から毎日数えきれない程の魂が冥界に送られてくるらしいから、消耗品のような扱いを受けるのも理解は出来るのだが…納得は出来ん!
こんな扱いの俺たち下天だが身体能力は普通の人間より高水準で、侍天にもなれば俗世の英雄並みに強くなれるらしい。
てことは下位の悪魔も同じくらい強いってことだよな…エグいよ、英雄並みに強い敵と沢山戦うなんて、悪魔の知能が低いことを祈るしかないな。
「どうすんのこれ…」
図書館の一角で思わずため息が溢れる。顔を上げればもう仲良くなって話し合っている天使たちが沢山いる。此処でしばらく生活するなら友達の一人でも作っておくべきなのだろうがそんな気も起きない。
そしてしばら空中を見つめていると一人の男が近づいてきた。




