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どうしてドレスを着ないといけないのですか?

「カミールいるか?」


それは今朝の事だった。朝食が終わり、仕事を再び再開するまでの間、シャナーは自室に戻り自分の部屋にいたドリマーに餌をあげながら、おいしそうに食べている様子を眺める至福の時間を過ごしていた。


ちょうどドリマーが食べ終えた頃、突然ラファイルが部屋に入ってきたのだ。


「はい殿下、どうなさったのですか? 今はうたた寝の時間ですよ」

「何を言っているんだ、今朝散歩で話しただろう」


シャナーはそう言われて今朝の散歩を思い出した。

(そういえば、孤児院へ視察に行くとか言っていたような…)


シャナーがそんな事を思い出していると、後ろからラースも顔をだし、手になにやら衣装のようなものを持っていた。

ラースは無言のまま部屋に入ると手に持っていた女性用らしき衣装をシャナーのベッドに置くとすぐに何も言わずに部屋を出て行ってしまった。呆然としてその衣装を眺めているとラファイルがとんでもないことを言い出した。


「今日の視察はお前もこれをきて同行するんだぞ、もうすぐ出発だから早く着替えておけよ」


そう言って部屋を出て行こうとしたので、シャナーはハッと我に返って急いでベッドに置かれたドレスを掴むと、ラファイにそのドレスを押し付けながら叫んだ。


「視察に行くのにどうしてこんなものを着ないといけないんですか? お断りいたします」


ラファイルはそのドレスを下に落とさないように持ちながらシャナーの方に向き直ると、平然とした様子で言い切った。


「お前が着ると似合うからに決まっているだろ」


「はあ?! 早起きのしすぎで頭がおかしくなったのですか?」


「何を失礼な、僕はいつだって沈着冷静だよ。今日はいつもと違う場所だからごねている時間はないんだ。何だったら僕が着せてあげようか?一応着方は知っているからね。僕は着たことはないけどね」


「それぐらい自分でも知っていますよ。どうして殿下の世話係の自分がそんなものを着ないといけないんですか?」


シャナーはそのフリフリのドレスを指差して聞き返した。

正直、ドレスを着るのはあまり抵抗はないが、今はカミールななのだ、絶対ドレスなんか着るのはおかしい。


そんな事を考えながら全力で抵抗しようと身構えた。

それをみたラファイルがシャナーににじり寄りよりながらニヤリとした顔でじわりじわりとシャナーに近づいてきていた。


シャナーは後ずさりしながらこの局面をどう回避すればいいのか必死で考えながら抵抗を試みようと身構えた。

足元ではこの館で飼われることのなったドリマーがラファイルに向かって唸り声をたてていた。


「でっ殿下、何度も言っていますが、どうして自分なんですか? どうしても必要なら、王城の方で勤務している侍女さん方に頼めばいいじゃないですか」


「お前は僕の世話係だろ? 都に視察に行く僕に何かあったらどうするんだ? 侍女が僕を守れるのか?」


「そっそれはそうですけど、それをいうなら自分も同じですよ」


「大丈夫だ、お前の強さは僕のお尻で実証済みだ。それにお前、最近騎士団の剣術の訓練にも参加してるんだろ? とっさの襲撃にはお前で十分だと思わないか? 王城の侍女たちも王城での仕事があるだろうしな。どうせお前も視察には同行するんだから、お前がこれを着るのが一番手っ取り早いだろう」


「そうですが…嫌、だっ騙されませんよ。それを言うなら、別にそんな恰好じゃなくてもいいんじゃないですか? 女性の護衛が必要なら女性騎士の格好でもいいはずですよね。それなら自分も喜んで着ますよ」


「だ・か・ら、それじゃあ意味がないんだ」


「どうっどうしてですか? 舞踏会じゃなくただの視察ですよね」


シャナーはどうにか目の前の物を着なくて済む方法がないかできうる限りの抵抗を試みていた。


「そんなの簡単な事だ、僕が嫌なんだ」

「だからその理由を教えてくださいと言っているんです」


「父上が都に行く時はいつも愛妾達を連れて行っているのはお前も知っているだろう。それに比べて僕は騎士団みたいなむっさい男どもばかりだ。たまには女性も同行させたいんだ」


「だったら、殿下もとればいいじゃありませんか。殿下ももう17歳ですよ、そろそろお妃候補を募集してもいいと思いますよ。最近はお痩せになってカッコよくおなりになってきたことですし」


「えっ?お前もそう思うか?」


「はっはいもちろんです。ですから」


「だったらなおさらだな。イケテル僕とこれを着たお前が並べば注目の的間違いなしだ」

「ですから、そんな噂を広げる必要がどこにあるのかとお聞きしているのです」


「はあ…お前にそんなこという必要はないだろ。グダグダ言っていないで早くこれを着ろ!」


「ですから…」


シャナーが後ずさりしながら抵抗し続けていると、その様子をしばらく部屋の片隅で傍観していたドリマーが突然ラファイルの所に駆け寄り、唸り声と共に牙を出していかくし始めた。


「ヴゥーワンワン」

「あっドリマー辞めなさい」


シャナーはあわててラファイルに今にもとびかかろうとしているドリマーを抑え込みながらたしなめるが、ドリマーは一向に唸り声を止めようとしなかった。


するとラファイルが今にもとびかかろうとして唸り声をあげているドリマーの目の前にしゃがみ込むと自分の顔を近づけて言った。


「なあドリマー、お前も見たいと思わないか、このドレス姿のカミールの姿、きっとかわいいぞ、お前もお前のご主人様が可愛く変身した姿を見たいだろ」


「でっ殿下、犬に何を言ってるんですか?」


「なんだよ、お前は黙っていろよ。コイツと男同士の会話をしてるんだから」


唸り声をあげているドリマーに視線を向けながらラファイルはシャナーに向かって反論した。


「でしたら、男同士ならどうして男の自分に女装させて、可愛いなんていうんですか? 変態ですか?」


「お前、美に対しての冒涜だぞ、これは母上の子供の頃のドレスを借りてきたんだから、最新の流行ものではないと思うが最高級のドレスだぞ、中身が女であろうとなかろうと、見た目で完璧なら問題ない。王城で働く使用人の中でこのドレスが着られるのはお前ぐらいだろ」


「そっそれはそうでしょうけど」


そんな会話をしていると、今の今までラファイルに向かって唸り声をかけていたドリマーが唸るのを止めて大人しくなった。


「おお~ドリマーわかってくれたのか?」


急に大人しくなったドリマーの頭を撫でながらラファイルが言うと、ドリマーは大きなあくびをしだした。


「ドリマー、どうしちゃったのよ、私の味方してくれないの?」

「アウ?」


ドリマーを抱きかけながらドリマーに話しかけるシャナーの顔をペロペロなめながらご機嫌でしっぽを振り出した。


「もうドリマーったら」


シャナーは顔を舐められながら、怒ろうとするのだか、ドリマーの顔を見ているとつい笑顔になってしまう


「覚悟を決めたか? 時間がないんだけど」

「はあ…わかりました。ですが条件があります」

「なんだ?」


「長い鬘を用意してください」


「ああ、それなら用意してるぞ」


ラファイルがそういうなり、部屋を出て行ったはずのラースが手に丸い箱の中を持ち再び現れた。

ラースはその箱から金髪の長い鬘が出した。


「・・・準備がいいんですね」


てっきりないという答えが返ってくると思っていてシャナ―は肩を落としてポツリと言った。


「準備にぬかりはないぞ、靴も用意したしな。用心の為にほら、足に短剣を付けられる奴も用意してるぞ」

そう言って太ももに短剣をつけるレッグホルスターもラースは取り出し見せた。


「わかりましたよ。その代わり、明日午後からお休みをください」

「どこかに行くのか?」


「森へ、昼間の薬草採取はまだしていないので、一度昼間に採取をしに森に行きたいと思っていたんです。もちろん、特別手当もいただきますけど」


「休みか…仕方ないな、わかったそれで手を打とう」


ラファイルは上機嫌で了承した。

この時シャナーは気付いていなかった。

この殿下がすんなりと一人きりの休暇をくれるはずがないということに…。






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