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幸せという日常

あれからまた時が流れ、今日も朝からどす黒い煙がサフェリア館の煙突から立ちのぼっていた。


そして時折、仕事からぬけ出してきたラファイルが婚約者であるシャナーに怒られ、首根っこをつままれ自分の館にひき戻られている姿が目撃されるのだった。


結局王子のアレルギーはどうなったかって?


その後、正式にラファイルのアレルギー検査が再度徹底的に行われアレルギー物質になりうるものを調査し、その物質は王宮領内では使用禁止となった。

しかしその後、サフェリアの研究で見事に克服したという。


病弱気味だったビュランテも健康体になり、翌年ラースと婚姻し、元々住んでいたビュランテの館で新婚生活を送っていた二人だったがその後すぐにビュランテの妊娠が発表された。


これに刺激を受けたラファイルのシャナーへの求愛が激しさを増し、すぐに婚姻を望んだが王からまだ王子としての資質に問題ありと判断され脚下されたラファイルは、その後見違えるように公務をこなすようになった。


それからのちはシャナー共々国民から絶大な人気をえることになっていった。

また、シャナーはのちに、都の一部に恵まれない者たちの無料診療の施設を開設し、多くの病気や怪我で苦しむ貧しい者たちの援助をし続けた。


今では、今まで難病とされていた病気も数多く治療薬が開発され、貧しさで治療を受けられず亡くなる者が減ったという。


その後、サフェリアの元で三年の期間限定で修行を続けていたルコッテ王女は、その後一度はトルシャベル王国に戻っていったが、なんと数年後、トルシャベル王国の王女の地位を返還し、娘のマデリーヌと夫であるジェルドと共にファーマールズ王国に戻ってきて生涯をこの国で過ごし、シャナーと共に薬使いとして様々な薬の研究に生涯を費やし、このファーマールズ王国で過ごすのだった。



シャナーは兄の代わりに王子の世話係として初めてラファイル王子とであってから王宮領内で生活を始めてから三年の月日が過ぎ、めでたくラファイル王子と結婚し、王宮殿で生活するようになっても毎朝、サフェリア館にきては、サフェリアの仕事を手伝う日々が続いていた。


「シャナー、今日は神経痛薬の薬を作ろうかね。陛下が腰が痛いらしいからのう。裏の庭に行ってピクの花を摘んできてくれるかい」


サフェリアは目の前のぐつぐつ煮えている壺をかき混ぜながら言った。


「はい、おばあ様、あのおばあ様、一つお聞きしてもよろしいですか?」


「何だい」


「おばあ様は故郷に戻らなくてもよろしいのですか? それにカミールがオーバル家を継がなくても本当にいいのですか? 伯父様も結局、ルコッテ様の婿養子に入る形で姓を変えてしまったし」


「何を今更、故郷なんざこれっぽっちも興味ないね。好きな研究を資金を気にせず好きなだけできて、欲しい材料があれば探して届けてもらえる、こんな恵まれた環境で何に不満があるっていうんだい。今が最高に幸せだよ。本当にいい奴を虜にしてくれたねえ。お前さんは私の幸運の女神だよ。苗字なんか私の代で消えたってなんの問題もないさ」

にやにやしていうサフェリアに対してシャナーは顔を曇らせた。


「おばあ様がそういうならいいのですが。でもいい奴ではなくて、やっかいな奴の間違いではありませんか?」


「酷いなあ…僕はこんなに君の事を愛しているっていうのに、最近君からの愛情が少なく感じて寂しくて倒れそうだよ」


その声に驚いて扉のある方に振り向いた。そこには仕事をこなしているはずのラファイルの姿があった。


「ラファイル様! どうしてあなたがここにいるのですか! 今は職務中ですよ。カミールはどうしたの?」


「ああ~あいつかあ~椅子に縛り付けてきた。朝から大量の仕事をラースが持ってきてめんどくさくなってきたから押し付けてきたんだ。ラースの奴は今日は父上のお供でいないしな。この僕がもう半日頑張っているんだよ。休憩したって罰はあたらないと思うよ。大体父上も、母上が懐妊したって聞いてから、何かあると腰が~とかいって仕事をさぼっては母上のところに入り浸るようになっちゃってさっ。そのつけをラースの奴が全部僕のところにまわしてくるんだよ。いい迷惑だよ」


「両陛下が仲がいいのはよろしいことではありませんか。それに弟様か妹様が生まれるのは喜ばしいことではありませんか。仕事はいずれは全部あなた様がすべき仕事ではありませんか。きちんと日があるうちは仕事をこなしてくださいませ。さあ、私も仕事がありますから邪魔はしないでください。夜には戻りますから」


「信用できないな。そんな事をいって、昨日も戻らなかったじゃないか」

「昨日は王妃様に呼ばれていたからです」

「とにかく僕はシャナ―不足なんだ!」

「まったく」


シャナ―がラファイルを睨みつけながら大きなため息をついた。

二人のやり取りを聞いていたサフェリアが棚からいくつかの薬草を取り出すと、煮詰めている薬草入り茶と水をコップの中へ注ぎながらその取り出した薬草を入れると、扉の前でごねているラファイルに近づくと差し出した。


「今日の分の薬草茶だよ。昨日よりちと匂いがきついかもしれないが、これを全部飲みほせたら、シャナーを今日半日貸してあげるよ」


「おばあ様!」


「お前さんも仕事のし過ぎだよ。今日はもういいから、一緒にカミールを手伝っておやり」


「サフェリア様、これ…葉っぱも飲むんですか? なんだかいつもよりどす黒い色と匂いがしていますけど」


「贅沢いうんじゃないよ、それを作るのにどれだけの貴重な薬草を使っていると思っているんだい。効果はあるって実感があるんだろ」


「そうですけど…そろそろもう飲まなくてもいいんじゃないかと思うんだけど」


「そうかい、まあ私はどっちでもいいんだよ、だけど、せっかく作ったものを飲まないっていうのなら、この子は貸せないね。仕事の邪魔だから帰っておくれ」


サフェリアの言葉でラファイルは鼻をつまんで一気に飲み干した。


「おえ~だっ駄目だ…病気が治る前に僕の嗅覚が死んでしまうかもしれない」


ラファイルが口を抑えながら真っ青な顔をして地面にうずくまって悶えていた。

その様子をみてシャナーはほほ笑みながら、ラファイルの背中をさすりながら言った。


「もう仕方がありませんね。今日だけですよ。さっ時間がもったいないですよ。さっさと仕事を終わらせて、ドリマーの散歩に行きましょうよ」


「やだよ、どうして仕事して散歩まで行かなきゃいけないんだよ。あいつなら自分で好き勝手に庭を駆け回っているじゃないか」


「あら知らないの? ドリマーってあなたをひっぱるのが好きなのよ」


「普段は何もなしで好き勝手な所に行ってるのに変な犬だな」


「私もあなたと手を繋いで散歩に行くのが好きなんだけどな」


「よし、時間がないからな。散歩から帰ったら、君の手作りクッキーを食べさせてくれるんだろう」


「あら、どうして私が今朝クッキーを作っていたのを知っているの?」


「さあー行こう、カミールが悲鳴をあげているからな」


ラファイルはシャナーの質問には答えないでシャナーの手を掴むと軽い足取りでシャナーの手を掴んで地下の階段をのぼり始めた。


「やれやれ、あれだけ好かれているんだったら、今日は本当に戻ってこれなさそうだね。まっここにいれば研究のし放題だし、新しい材料はどんどんはいってくるし、実験台には事欠かないし、シャナーには頑張って立派な王妃になってもらわないとね」


サフェリアは仲良く歩いて行く二人を見送りながら呟いた。



その後、ラファイルの性格は変わらず、時々公務を抜け出し、ラースの怒鳴り声と、カミールのなだめる声が王宮殿に響いていたが、ラファイル王は王妃を生涯愛しぬいたと言われている。彼女との間に二人の男の子と一人の女の子に恵まれたようである。


表向きは頭がきれるやり手の立派な王と成長したラファイル王子だったが、いくつになっても相変わらず、仕事を抜け出して愛する妻の仕事現場に顔を出しては、妻に怒られ、渋々仕事場に戻される様子が王宮領内で見かけたという。


それでもシャナーはこの欠点も含めて愛すべき夫を生涯愛し続け、夫婦仲もよく、ラブラブぶりは生涯変わらなかったようである。



                              完



たくさんの読者の皆様、この物語は今回にて完結となります。

最後まで読んでくださりありがとうございました。


この物語にでてきた薬草や花の名前などは異世界での名前や効力であり、現実の全ての事柄名前効力、アレルギーなど全く関係ありません。

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