第29話 一分間の抗いと人の終わり
遅れてすみません。
「うわぁあああああ!!」
「ッ!?」
「え!?な、なに今の悲鳴は!?」
「今の何処からだ!?」
「彩芽ちゃん達、落ち着いて!?あまり動かずに固まって!?」
男の叫び声が辺りに響き渡ると同時に俺は発生源の方を向くが、佐間義達三人は方向までは分からなかったらしく、忙しなく辺りを見回しながら……彩芽は急な悲鳴に体を震わせ、それを守るように視角では見えない後ろをカバーする様に彩希羅が周りを睨み付け、その二を自分に引き寄せながら支持をだす佐間義。
だが俺はそれを気にする余裕はなく、加速させた思考回路で疑問と現状把握に務めることに務める。
(アイツか。……見たところ異常な部分が見当たらない。しいてあげるなら常人から外れかけてる脚力位か?だが……何故、気付けなかった?)
(アイツから感じる気配や雰囲気もそこらの普通の奴と変わらない。にもかかわらず、あの距離まで俺や姉貴が気付けなかった。一体どういう能力を持ってるていうんだ?)
見えている光景が遅くなるなか、サバイバルナイフを構え一直線に姉貴を目指す姿を観察し思考をこらすが、答えに辿り着くどころか更なる疑問が生まれる。
(……駄目だ。これ以上考えていても時間の無駄になるな。そろそろ姉貴も動きだすだ…ろ、う…)
考えても増え続ける疑問に現状での判断は無理だと思うと、首を振って浮き上がっていた疑問や憶測を追いやり、姉貴の行動を見ようと視線を移した瞬間―――――動揺で言葉を失った。
そこにいたのは親しい人や周りの人をを守る為に動く姉貴――――でわなく、普通の少女の様に身をすくませた姉貴の姿だった。
俺はその姿に一瞬、思考を停止させてしまう。それがまずい!?と思うと同時に戻すが、あの一瞬のミスにより先程まで開いてた距離も今は四人程しかない事を理解すると、ある事に気付き内心舌うつ。
(クソ、そういうことかよ!)
姉貴が動かない理由が動かないのでわなく"動けない"と困惑と焦りを含んだ目を見た事で悟り急いで向かおうと―――――
(早くアイツの所にッ!?)
――――――したが、体が動かなかった。
(なんだ、これは。動、かねぇ。クソ!これが原因かよ!!)
内心、悪態つきながらもなんとかして体を動かそうと試みるが糸に操られるマリオネットの如く身体中がいうことを効かない。
ピクリとも動こうとしない身体を動かそうと抗うなか、姉貴を殺さんと確実に距離を縮めるその姿は死神に見えた。
(……ざ…けんな、ふざけんな!!)
普通の奴であれば死神に見えた時点で、もう無理だ。と諦めの感情がでてきただろうが、俺から沸き上がった物は純粋な怒りだった。
(何処までも家族の事を思い、残された姉弟を支えようと努力し、自身の不安も悲しみも見せず影で泣いて耐え続けた人が何故!!こんな理不尽なめにあわされなきゃいけねえんだ!!俺は死を受け入れたにもかかわらず姉貴を殺そうとしてんじゃねえぞクソ野郎共が!!)
抗いながらこの理不尽な現実に叫びつつ、ただ姉貴を助ける事だけに思考を向ける。
それが項をなしたのか、今までビクリとも動かなかった体が指先から徐々に動かせ始めるが、それをかけた奴が気付いたのかまた拘束の様なものが強まりだす。
だがこの時そいつには誤算が二つあった。一つは、未来の力量を測りきれていなかったこと。そして二つめが、未来の理性が無くなっていたことだった。
強まった拘束に気付かず、ただ姉貴の所に向かう為だけに集中していた未来は、骨や筋肉そして神経が不気味な音をたてている事も気付かず、動こうとし続けた。
そして徐々にプツン…プツンと糸が切れていく音が鳴るなか、やはりと言うべきか……筋肉や神経も傷付いていき内出血をおこしていく。
このまま行けば神経等が完全に切れ動けなくなっただろう。だがここで、二つの運が味方をした。
一つが、傷付きながらも無理矢理拘束を解いていく未来に驚きと恐怖を感じて怯み、それに連動し拘束が緩んでしまったこと。
二つめが、理性をほぼ失い拘束を解く事に集中していたこと、この二つの運があわさり―――――糸の千切れた音が一斉に鳴り動きだした。
残っていた理性が動けると理解したと同時に、力の一つを脚に集中させ疾走した。
その時には姉貴が殺傷範囲内に入っており、姉貴の中心にナイフを刺そうと腕をのばしはじめていた。
そして――――ズドッ!と鈍くも突き刺さる音が場に木霊する。
「あ、う……そ」
驚きに眼を見開きながら消え入りそうな呟きを溢し終えると、ナイフの塚から赤い雫が数的溢れ落ち……地面を赤く彩る。
「な……んで」
自分に起こった事に理解が追い付いたのか、目尻に涙を溜め震えた声で――――――
「未、来」
―――――――自身を抱き締め脇腹から血を流す俺を見上げていた。
俺は脇腹からくる激痛をこらえつつ、邪魔者が現れた事で動きを止めてる奴の手首を掴み逃げられないようにする。
そこでようやく意識を戻した様に拘束を逃れようと暴れだすが……それを無視し、姉貴と眼をあわせる。
「あ、あぁ」
そうとうショックが大きかったらしく、目の前で起こってる出来事になにも言えず、静かに涙を流し言葉ともとれない声をだす。
「……ごめ、んな」
そんな姉貴の頭を一度撫でて謝罪の言葉を言い終わると後ろに突き飛ばし掴まえてる奴に顔を向ける。
「…おい」
「ヒッ!」
自分でも驚く程低い声で言葉を発すると、目の前の奴は掠れた悲鳴をあげ怯えた表情で此方に顔を向けた。
改めて見たそいつの顔は整っており髪は染めてないがパーマをかけた髪型にピアスというそこいらのイケメンよりは頭一つ上の部類に入る遊んでそうな奴だった。
(こんな奴が、姉貴を―――美咲を殺そうとしやがったのか!!」
「ヒィイイ!?」
怒りから我慢出来ず叫ぶと怯えが明確な恐怖に変わり、顔色を更に青白くさせてまた抜け出そうと暴れ始めた瞬間――――
―――――バキッと音をたて掴んでた手を折った。
「ッ!!?!?」
折られた痛みに言葉ととれない悲鳴をあげるが、それを無視し手がナイフから離れると一切の慈悲なく全力で投げた。
その際に今度は肩から不快な音を鳴らしながら、周りに響くほどの轟音をたてて屋台にぶつかる。
だがそれだけでは終わらさず下にあった石を瞬時に掴み取り足があるであろう場所に投げつけた。
「ぎ、ぁあああ!!?」
「…はっ、ザマァ……みや、がれ」
汚い悲鳴が聞こえた事であたったのが分かり、理性が戻る。ただ理性が戻ってきたことにより、先程まで感じなかった痛みや倦怠感が押し寄せ、視界が霞み身体がふらついてくる。
そして倒れていくなか、呆然とした状態で此方を見続ける姉貴とポツリポツリと降りだした雨を最後に俺の意識は途切れた。
そして、数分の気絶から覚め……
姉貴の無事を確認し安堵と罪悪感を感じながらも
この日、静かに
日牝神 未来は"人としての"人生を終えた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次でとりあえず第一部が終ります。




