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どうする、どうする。

 奏矢はあの後すぐに帰ったらしい。私も次の日の夕方には実家を後にした。


 駅に着くのは夜だったので、忠犬はお迎えにあがりますとメールでいってきた。別に来なくても良かったのだが、買い物もあったので断らなかった。それが失敗の始まりであった。


 

 駅からスーパーへ向かおうとした時、突然後ろから声をかけられた。


 「綾乃ー」


 振り返ると紗希がいた。後から聞いた話によると家庭教師の帰りだという。紗希がこの駅を使うなど頭になかった。


 

 「ねぇねぇ、どなた?」


 眼が完全に冷やかしていた。彼氏だと思われているのだろうか。どうする、どうする。


 「お、お兄ちゃんなの」


 実家に行っていた事はメールで伝えてあった。幸い大きなバッグも持っている。チャンスだ。こっちに遊びに来たんだという設定を作り上げた。


 「初めまして。同じサークルの杉浦紗希って言います。お兄様っ」


 お兄様??こ、こいつ……


 奏矢にアイコンタクトを送る。余計な事言うなよー。


 「綾乃の兄の奏矢です、初めまして。いつも妹がお世話になっております」


 よし、OK。それでいい。じゃあ買い物行くからーなどと逃げにかかるが紗希様は逃がしてくれなかった。


 「お兄様はいつまでこちらに?」


 ボロが出るのはまずい。綾乃が素早く答える。


 「あんまり時間ないんだよね?明日の夜には帰るんだっけ?お兄ちゃん」


 そう言って再びアイコンタクトを送る。


 「えー、そうなんですかぁ」


 残念そうな紗希はしばらく考えて言い出した。


 「じゃあ明日、優奈も呼んで4人で遊びましょうよっ」


 メールなら確実に最後にハートマークがつくであろう口調であった。


 なぜ、そうなる。曖昧な返答をしたが強引に押し切られた。ああ、ついてないったらありゃしない。




 翌日は13時に待ち合わせだった。行き先は某遊園地。せっかくこっちに来たんだから、と紗希が決めた。


 JR改札で待ち合わせをすると優奈が待っていた。偽りの紹介を済ませているとやや遅れて紗希が現れた。そこまでひどくは無いのだが、遊園地に適しているとは言い難い気合100%の服装の紗希は奏矢の隣に陣取って歩いている。

 

 昨日の夜ボロを出さない様に打ち合わせはしておいた。うまく誤魔化してくれるのを祈るばかりである。


 遊園地に着きどこから回るか相談していた。紗希がメリーゴーランドがいいと言い出す。いやいや、狙いすぎだってば。だいたい最初といえばジェットコースターだろうがっ!


 仕方ないので4人でお馬さんと戯れる。ああ、優奈は絵になるなぁ……


 「お兄様、白馬の騎士みたいですねっ」


 目を輝かせている紗希が少し怖い。まぁいいのだけれど。


 次に紗希姫はティーカップをご所望された。お好きなだけお回り下さいな。


 その次はお化け屋敷。可愛らしく聞こえる叫び声がこだまする。


 ここで紗希の行き先の希望が途絶えた。はいはい、私が言えばいいんでしょ?ジェットコースター行くよー。


 ああ、風が気持ちいい。ようやく鬱憤を解消できた。優奈は本気で怖がっている。ウイヤツメ。もう1人怖がっていた人もいたが触れないでおく。


 

 そろそろ少し休憩かな?私はまだまだ平気だけど。トイレに行った後、休む事にした。


 3人でトイレに行く。あんたねぇ、やり過ぎじゃないの?とたしなめる。本当の妹だったとしてもきっと言うだろう。


 「別に狙ってる訳じゃないわよ。でも格好いい人の前では可愛くいたいじゃない」


 紗希らしいといえば紗希らしいのだが。


 「でも、本当に素敵だよねぇ」


 優奈まで言い出す始末。まぁ素敵に見えるのかもしれないけどさ。


 飲み物とソフトクリームを買って、席を取っていた奏矢のベンチに戻る。スーツ姿でペロペロとソフトクリームを食べる奏矢の姿に紗希がキュン死していた。


 その後も適当に楽しんだ。遅くはなれないと言ってあったので18時頃遊園地を出た。奏矢を先に帰らせた後、3人でご飯?という話にもなったのだが、疲れていたのでお茶だけしてお開きにする事にした。



 1人になった電車の中で奏矢にメールをする。本屋にいるらしい。そこに行くと伝えた。


 ああ、そうだ。今度それとなく家庭教師の曜日を聞いておこう。買い物禁止曜日にしなきゃ。


 

 本屋で奏矢を捕まて家に帰ると、どっと疲れが溢れ出してきた。2人に疑われずに切り抜けた事はいい事だが。


 夕飯を食べていると奏矢の携帯が鳴った。メールのようだ。聞いてみたら紗希だった。いつの間に……


 適当にあしらって、その内彼女がいるとでも言っておきなさいよ。そういって食事に戻る。


 

 「妬いているのですか?」


 はぁ?耳を疑った。



 「兄にヤキモチを妬くなんて変ですよ?困った子ですね綾乃は」



 いつまで兄妹設定引っ張ってんのよっ!! 台拭きを顔に投げつけた。



 「では、兄・恋人・ペット。どれになさいますか?」


 迷わずペットと答える。



 「飛びついたり、顔を嘗め回されるのをお望みなのですね。かしこまりました」



 返事をせずに食事を続ける事にした。今日の説教は長いぞ。覚悟してインプットしろよ?



 


 

もっとお兄ちゃんプレイした方が良かったかなぁ(マテ

友達の兄にこんなに積極的な子はいるのだろうか・・・



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