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最終話:子どもが将来どういう職業を選ぶのか楽しみだ

 さて、卒業制作展示が終わればバレンタインデーとホワイトデーにはお互いチョコを送り合ったりもした。


 あとは卒業式で学校の行事は終わり。


 学校を卒業したあとは予定通りパラディーゾで正式な社員として俺と笠羽さんはコックとして働き始めた。


「これからも宜しくお願いします」


「おう、これまでとは違って正式に社員になったからにはもっともっと働いてもらうぞ」


 チーフがニット笑って俺たちに言った。


「はい、任せてください!」


 俺たちが正式に社員になったことでオーナーは厨房(キッチン)のメインから外れて、チーフが調理長シェフ・ド・キュイジーヌに昇格した。


 シェフというのはキッチンの中で一番偉い役職で日本の料亭で言うなら板長みたいなものなのだな。


「相田、お前はパティシエだ」


「お、俺っ、パテシエにしてもらえるんですか!」


「ってもまあ、部下がいるわけじゃないけどな」


 パテシエは菓子(ドルチェ)を担当するもののトップ扱いだ。


 まあ実際俺しかいないわけだが、これはドルチェに関しては俺に任してくれるということだ。


「茜は俺の補佐の副料理長(スーシェフ)として俺の補佐だ」


「はい、わかりました、がんばりますね」


 笠羽さんとチーフはいつの間には下の名前で呼ぶような関係になっていたらしい。


 いや去年の慰安旅行のあたりからそんな感じであったっぽいけどな。


「お店の経営とか宣伝広告とかは私に任せてね」


 桜田さんは学校で並んだ経営術を生かしてお母さんやオーナーと一緒にお店の経営の方面び基本的には専念するようだ。


 人手が足りないときはオーナーや桜田さんも厨房に入ることもあるはずだけどな。


 こんな感じでパラディーゾは新体制で新たなスタートを切った。


 そして同じ年に俺と桜田さんは結婚して結婚式をあげることになった。


 一生に一度はウエディングドレスを着たいよという桜田さんの意向もあっていわゆる教会式の結婚式を結婚式教会(チャペル)であげたのだ。


 そんなに盛大なものではなく、主にお互いの身内や調理学校の親しかった同級生などを集めたものだけどな。


 ”ガラーンゴローン”


 仰々しくチャペルに鐘の音が鳴り響く中、揃いウェディングドレスを身にまとう桜田さんはとても綺麗だった。


 そして牧師さんが俺たちに言う。


「あなた達は、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、死がふたりを分かつまで、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」


「「私達は、夫婦として、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、死がふたりを分かつまで、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓います!」」


 俺と桜田さんは同時に誓いの言葉を言う。


「では誓いのキスを」


 自分や桜田さんの親兄弟の目の前でのキスってのはなんか緊張するな。


 目を閉じて少し顎を上げた桜田さんの唇に俺は唇を重ねた。


「末永くお幸せに!」


 そう言うった祝福の言葉で俺は正式にかがりと夫婦bになたのだと認識を改めたんだ。


「では幸せのおすそ分けをもらいたい方はぜひ前に来てください」


 とアナウンスが流れ、かがりの手からブーケが宙に舞って、それを同級生の女性が嬉しそうに手にとった。


 結婚したあと俺はワンルームのアパートをでてかがりと一緒に2DKのマンションに住み始めた。


 半年ほどで妊娠、翌年には女の子が生まれ俺たちは娘に”(つむぎ)”という名を名付けた。


 大きな病気や怪我もなく紬はすくすく成長して4歳になった。


 今日はパラディーゾの定休日なのでみんなんで山下公園にバスケットを持って親子三人でピクニックへ行く。


 で俺とかがりはサンドイッチとかを作ってるのだが……。


「おとーしゃさん、おかーしゃん、つむぎもそれやるー」


 俺たちが料理をしているのをワクワクした眼で娘が見て一緒にやりたいと言ってきた。


 ちなみに去年のクリスマスには子供用の包丁やキッチンばさみ、まな板のセットを送ったらものすごく喜んでいたよ。


「わかった怪我しないように気をつけてな」


 卵をサンドした耳付きの食パンを渡してやると娘はまな板の上にそれをおいて慎重に耳を切り落とし始めた。


 俺は何度見ても手を切ったりしないは緊張するが、かがりはニコニコしながら見てる。


「できたー!」


 パンの四隅の耳を切り下ろしたあと三角になるように切った娘はとても嬉しそうにバスケットにそれを入れていく。


 芝生の上にシートを敷いて食事をしたり、芝生の植えをただ走り回ったりするのもきっと楽しいだろうけど、こういった準備というのも楽しいものだ。


「紬は食べ物をつくるのも食べるのも好きだよな」


「うん、作るのも食べるのも楽しーよー」


 娘が将来大人になったら俺のようにコックを目指すのか、それとも主婦などの他の道を選ぶのか。


 それはまだわからないけどきっと料理が得意な女性には育つだろうな。


 どういう職業を選ぶのか楽しみだよ。

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