今回の卒展ではなんとか入賞できたぜ
さて、飴細工で赤いバラを作ってはイマイチだと破棄すること数回……。
「ようやくそれなりのものができたかな?」
バラの花びらの艶と質感をそこなわず、更に美しさのバランスが取れた物がようやくできるようになった。
飴を沸騰させて溶かす時間の長さも、なんとなくその後の細工にベストっぽい時間がわかってきたぜ。
「よし、バラが行けたならあれも行けるはず」
俺は本命の作品作りに取り掛かる。
「俺の桜田さんのイメージでいくぜ」
それは大輪のひまわりだ。
真冬には合わないとも思えるけど、彼女はとても明るくて人懐っこくいるだけで場が暖かくなる女性だ。
お嬢様女子学校の御三家の一つの横浜雙葉中学高等学校の出身だと言うことで俺には手の届かない女性だと思ってたんだけどそんなことは全然なかったんだよな。
俺がかってに彼女を遠くに見ていたせいでだいぶ時間がかかったんだけど、あんなにいい女性が俺を好いてくれていたんだ。
だから俺にとって最高のイメージに仕上げたい。
ちなみにひまわりの花言葉のひとつはは「私はあなただけを見つめる」だそうだ。
飴細工のモチーフとしてひまわりはそれなりにメジャーだがバラよりも実はひまわりのほうが細かいので作るのは難しい。
「意外と難しいんだなひまわりは」
練った飴を切って伸ばしてをて、綺麗にまとまったら手袋をして、飴を手に取り、伸ばしては畳んでを繰り返して均一に空気を含ませていきある程度艶が出たら薄く細く伸ばして花びらにするのだが、バラよりも細くて長い分花びらをうまく作るのが難しい。
真ん中の武運の茶色いぶつぶつした部分も大きな丸いやつに小さい粒を付けていってそれらしく仕上げる。
茎や葉っぱも手で伸ばしてそれらしい曲線も作りながら作っていき、最後に加熱して接着する。
「うし、できたな」
大輪の明るく元気良く力強く咲くひまわり、これが俺の桜田さんのイメージだ。
桜田さんだから桜のイメージ……は今の俺にはないな。
バラの高貴さとか桜の儚さと言うのも美しいけど、ひまわりってなんだか見てるだけで元気を分けてくれるよな。
卒業制作展示の当日壊れないようにそれを学校に運ぶ。
飴細工は繊細で脆いのでちょっとしたことで壊れてしまうから要注意だ。
「なかなか心臓に悪いよな」
実際コンクールなどでも工芸菓子は運んでくるときに一部が破損してしまうことも少なくないらしい。
「お願いします!」
「はい、では展示しておきますね」
やれることはやったしあとは結果を待つだけだ。
和洋中の教室はそれぞれのコース料理を提出してるやつが多いが製菓製パンは生菓子もあるし工芸菓子もある。
ジャパンケーキショー東京に製菓学校の生徒の作品がプロに混じって展示されていたりもするが、「これがホントに学生の作品?」というレベルの高い作品も少なからずある。
卒業すればほとんどのやつは即働くことになるし職場もバラバラだ。
「これで学校でやる行事も実質最後か」
クラスメイトとしして一年間一緒に学んできたわけだが、それぞれが持つ夢も目指す未来もみな違うし場合によってはこれからもコンテストや店のライバルになるやつもいるだろうな。
同窓会でまたあったりはするかも知れないけどな。
「ん、これ桜田さんの作品か」
ホワイトチョコで作られたシルクスクリーンが綺麗なチョコ細工の宝石箱とその中には飴細工のきれいな宝石の指輪が飾られてる。
「作品タイトルはエンゲージリング?!」
うむ、去年のウエディングケーキから更に進化してきたか。
笠羽さんはイタリア料理のコース料理を綺麗にまとめてるな。
「ふむふむなかなか堅実だな」
卒業制作展示が始まれば展示会場や食堂などは多くの人達で賑わいはじめる。
「すごいよねこれー」
「私も作れるようになるのかな?」
来年入学予定の生徒がめを輝かせて作品を見て回ったり、一般入場者がいろいろ買っていたりと騒がしい。
そして結果だが……俺の作品は製菓部門の銀賞に入賞した。
「やったぜ!」
ちなみに桜田さんの作品も校長の特別賞を受賞、そして笠羽さんは金賞を受賞していたぜ。
入賞はできたけどなんかパラディーゾでドベな気がするなぁ……。
後は3月頭の卒業式だけだ。
そして4月からは社会人になるんだな。




