学校卒業後は正式に社員としてパラディーゾで働くことになったよ
さて楽しかった慰安旅行も終わると、去年同様にバイト漬けの夏休みだった。
この夏休みにインターンシップ制度を利用して、学校を卒業した先輩が働いてる職場で職場体験をするやつもいるが、俺はもともと就職希望先はパラディーゾなので普通にバイトを続けている。
ディナーの時間に俺ができる調理もちょこっとずつだけど増えてきてるし、なかなかいい感じだぜ。
で、あっという間に夏休み終わって後期授業が始まった。
9月は採用試験のピークで毎日のようにどこかの面接に受けに行く人がいる。
しかし、飲食業は基本的に離職率が高くて人手不足だったりもするので専門学校生の就職率そのものはかなり高く90%くらいは就職そのものはできる。
しかし離職率も高いのがこの業界だ。
飲食業で働く事の最大のネックは基本的には休みは週一回で月4か5日、土日祝日は書き入れ時なので基本休めず、労働時間も10:30から23:00くらいと長いことだったりする。
そうすると高校とかの友達と遊ぼうとしても休みの日や時間があわなかったりするんだな。
店のランチタイムは11:30から14:30まで、ディナータイムは18:00から22:00までだとしても、 朝イチはランチのための食材などのカットなどの仕込みや掃除などの開店準備をしてからランチタイムを迎え、ランチタイムが終わったら、食事休憩を取りつつ、もう一度清掃や仕込、場合によっては食材の買い出しなどもあるし、ディナータイムも終わりは22時アウトなので実際はそのあとに片付けがある。
レジの現金合わせなんかをやるオーナーなんかはもっと遅くなるはずだ。
そして本来は合間に休憩をとることになっていても、本当に忙しいときは休憩なしなんてこともある。
最も暇な時は営業中でも休憩してるようなもんではあるけどな。
定休日は月曜日なのでオーナーやチーフの休みは基本月曜だけなはずだ。
だけど俺は調理が好きだし、そして食べてくれるお客さんの笑顔も大好きだ。
これは駅前のシフォンケーキのおばちゃんのようになりたいと思っていたときから変わらない。
だから、普通の仕事よりも休みなんかの条件が悪くてもここで働いていきたい。
まあ、まかないがあるっていうのも正直かなり助かるしな。
給料はちゃんとでてまかないがあるって結構大事だぜ。
ディナーが終って片付けをしているときにそんな事を考えていたらオーナーから声をかけられた。
「相田くん、少し時間いいかな?」
俺はうなずく。
「はい、大丈夫です、何でしょうか?」
「そろそろ学校も就職活動の季節だと思うけど、僕としては専門学校卒業後もここで正社員として働いてほしいんだけどどうかな?」
おおっ、オーナー直々に俺を正社員で働かないかと聞いてきてくれた?!
「はいっ、もちろん、学校を卒業した後も社員として働かせてもらいたいです」
オーナーはコクリと頷いて話を続ける。
「一応確認しておくけど、正社員になったらバイトみたいに自由に休みや時間のシフトは組めない。
休みは基本的に定休日の月曜日だけの週一回で拘束時間も12時間位になると思う。
無論正月などは休みがあるけどね。
あと月給は27万からのスタートになるよ」
週一回休みだと月間の勤務日数は27日くらいだよな?
日給一万なら悪くはないよな。
「はい、27万なら十分です。
今までどおりまかないは食べられるんですよね?」
俺がそういうとオーナーはコクリとうなずく。
「うん、それは大丈夫だよ」
「ならばむしろ是非お願いします!」
俺がそう言うと安心したようにオーナーは笑った。
「うん、わかったよ。
来年以降もよろしく頼むね」
「はい、ありがとうございます」
そしてオーナーの目がすっと細まった。
「それと娘を不幸にしないと誓ってくれるかな?」
俺はコクコクとうなずく。
「あ、は、はい、桜田さんは絶対不幸にしません」
俺の言葉を聞いたオーナーは笑顔に戻った。
「うん、それならよろしい」
うむ、オーナーにとっても桜田さんは大事な娘さんだよな。
不幸にするようなことをするつもりはもちろんないけど。
休みは合わせられるし、旅行とかに行きたいといっても簡単には行けないのもわかってもらえると思うし大丈夫だろうと思うんだけどな。