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ヘテロクロミアの魔眼騎士  作者: 礼(ゆき)


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39/50

39:霧を破る

「その方の計らいで、私は太子御所に住込みで働く女官に推挙され、やっと落ち着けると安堵したところで、唐突に息子と離れなくてはいけなくなりました」

「ご子息はどうされたのですか」

「息子は私たち親子を匿った方が預かることになりました。

 ですが、御所で働き始めた矢先、霧が発生したのです。すぐに、これは息子が行っていると分かりました。

 息子はまだ年端もいかない子どもです。恐らく、自分が何をしているか理解していないことでしょう。自覚がある、無いに関わらず、あまりにも罪深いことをしています。どうか、息子がどこにいるか見つけ、止めてくださいませ。どうか、お願い致します」


(暗殺、国家転覆罪、絞首刑……。明るみになればどんな咎を背負うか。それが本当なら、子どもにさせることじゃないよな)


 デュレクは眉を潜めた。

 自らは手を汚さず、罪もかぶらず、子どもを利用していると想像すると胸苦しくなる。


(幼子に、罪を背負わているなど言語道断)

 セシルの憤りで腸が煮えくり返る。

 剣の柄を握る手に力がこもった。


「ご子息は、誰かに利用されているということか。あなたをここに推挙した者が黒幕か、ならば、その者は誰なのだ!」


 セシルの問いに、女官はうつむく。左右に首をふり、分からないと言いたげな意思を示す。

 瞑っていた目を開いた殿下が、セシルに顔を向ける。


 これ以上、女官を問いただせなくなる。セシルは言いたいことを押し殺した。


「セシル、デュレク、まずは霧を晴らせ。

 女官も騎士も、もう道にはいまい。私は御所内部に戻る。すぐに、開門し、女官の子息を助け、必ず私の元へと連れてこい」


 命ずるなり、殿下は踵を返す。女官はセシルとデュレクに深く頭を垂れ、殿下に付き従う。二人は御所内部へと消えて行った。


 二人の背を見送ったセシルとデュレクは顔を見合わせる。


「腹立たしい限りだ」

 

 セシルは嫌悪を隠さない。

 熱い子だなとデュレクは、飄々と見つめる。


「秘密裏に処理する事情があったんだな。兄貴は知っていたのだろうか」

「団長なら、知っているかもな」

「知ったうえで、明かさないのか?」


 デュレクはどこか釈然としない。

(俺はそんなに信用無いかな)


「殿下と示し合わせたのかもしれないぞ。霧を発する正体が子どもなら、隠したくもなるだろう。デュレクの件も身近にあるのだ。子どもが犠牲になることには敏感なのかもしれないじゃないか。ばれて、子どもが咎を受けることを嫌悪したとも考えられる」

「まあなあ。正体が人だったら、手を出すな……。だから、そう言ったのかもなぁ」

 

 腕を組み、デュレクは空を仰いだ。煙幕がかかったように、まともな空は拝めなくなっている。


「扉を開けた瞬間に私は魔眼を使い浄化するつもりだが、どうだろう」

「俺は霧を辿りたい。そうだなあ……、六十、いや、動くなら百数えてからいしてもらえるだろうか」

「了解した」

「この扉、一人でも開けれるのか」

「それは出来る」

「意外。分厚くて、すごい重いのに……」

「扉の下部に車輪が隠されているんだ。操作一つで、女の手でも開け閉め可能な仕様になっている」

「えっ。さっき、俺が頑張って閉めたのって意味なかったの!」

「ないな」

「ひっどい。教えてよ、そういう大事なこと~」

「閉める力があるんだからいいだろう」

「そういう問題じゃない。無駄に体力使っちゃたじゃないか~」


 ぶうぶう文句を垂れながら、デュレクは門に近づく。扉の横にひっそりと門の上部へとつながる階段が備え付けられている。


「俺は、上に行く。周囲も見渡せるから丁度いい」


 階段に手をかけるとデュレクはするするとのぼっていく。

 見送るセシルは、感嘆した。


「まるで猿だな」


 デュレクはたどり着いた門の上で、端に立ち、周囲を見渡す。白い霧がたれこめつつある。門から王宮の中央部へと続く道の灯篭が煌々と光り、道の人影は消えていた。


(さて、俺は人探しと行くか)


 地上ではセシルが数を数え始めていた。


 デュレクは眼帯を取り払い、ポケットへと詰める。


 光沢ある左目の紅が輝きをさらに増す。


 破魔の魔眼が霧に潜む呪いを視る。

 呪詛の霧も効果は多様。触れる対象物へ、爛れ、呼吸困難、湿疹、などの症状を見せる場合もあれば、吸い込むだけで命を落すものまである。


(殿下にしかきかないとはいえ、やはり吸い込むと息苦しいな)

 デュレクは腕で口をふさぐ。

 

 紅の瞳がさらに光る。白い霧が赤く染まる。魔眼が霧に潜む呪いを辿り、視界は張り巡らせる呪詛の痕跡を追う。


 破魔の魔眼は、呪詛を放つ魔または人へと呪詛をかえすこともできる。それは霧に潜む、人や魔の痕跡をさかのぼり、対象物を見つけた瞬間に、放たれた呪詛そのものを逆流させるものだ。


 前線においても、相手が弱いと判断できた場合は、術を放った魔族生の生物に自らの呪いを返し、殺してきた。

 おそらく、子ども相手ならそれもできる。宰相はそれを望んでいたのかもしれない。


(今回は、返したりしない)


 見つけ次第、魔眼を解き、呪詛の魔眼を使う子どもの元へと走る。呪詛を放つ者が強力な場合、探索のみで切り上げるのと同じことだ。


 霧と視界を絡めると、眼前の視界とは別に、脳天辺りに呪詛を辿る二つ目の視界が映る。意識的に二つの景色を切り替えながら、デュレクは呪いの痕跡を辿る視界を頼りに、門に連なる塀の上を走り出した。


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