21:追い出される二人
「お前たち、今週は二人で行動しろ。霧の様子は俺が見ておく。
そうだな、二日後の昼に登庁してくるまで、自由にしてていいぞ。
セシル、有給丸二日とれ。その休みの間、王都に来たばかりのデュレクを頼むぞ」
突然、飛び火してきたセシルは面食らう。
(この非常時に、遊んでいろとでも!)
ドンと団長の執務机に両手をついた。
「待ってください。そんなことをしては、書類関係の雑務が溜まりますし、部下たちにも示しがつきません」
「そおかあ。逆だろ。セシルが仕事熱心過ぎて、部下が休みを取りにくくなってるかもしれないだろ」
「部下の休みは、部下の自由です。私は殿下の件もございます。ここに詰めていろ、というのなら納得できます。なのに、休みを取れとはなにごとですか」
「ただの休み申請でもいいが、せっかくなんだ有休を消化しておくのも悪くないだろう」
「待ってください。どうして、話が休むこと前提なんですか? 休みぐらい自分で決めます」
団長はひらひらと手を振ってみせた。
「でもさ~、セシル副長。殿下の件が始まる前から、有給溜まっているだろ」
「いや、それは……」
「ずーっと、有給使わない上司と仕事している部下が気後れしないと言い切れるの~? セシル副長」
疑い深い目をすわらせる団長は、口を丸くして指摘する。
セシルは返す言葉なく、喉を詰まらせた。
「というわけ、いいよね。デュレク副長」
「俺は、それで嬉しいけど。いいのか、兄貴。俺が羽を伸ばしていても」
「いい、いい。お前がいると、否応なしに俺の仕事を増やすだろ。まったく、一日ぐらい実家に泊れって言っても、頑なに家を出るような弟だ。
ちゃらいくせに、変なところで頑固。やる時はやるが、なまくらなうえに、突飛なことをやらかす。二日間、大人しくしてろよ。兄ちゃんに迷惑かけんな!」
「団長! 団長の弟のお守りを、私にしろというのですか!」
デュレクより、セシルの方が先に噛みつく。執務机に置いた手、その肘を曲げて、身を乗り出した。
「うん、そう。セシル。お目付け役、二日間」
「お守りって何? 俺、一応大人だし、セシルより年上なんですけど……」
「デュレク。大人なら、一日ぐらい実家にいようよ。嫌なら、誰も近づけさせないように配慮するんだから。
とかく、お前はすぐどこにでも消えてしまおうとする。勝手に前線に志願するとかな。魔眼が開眼したから助かったようなもので、そうでなければ、命はなかっただろう」
「それはそうだけど。それと今は、違うだろ~」
「お兄ちゃんは、弟が心配なの。あと、悪目立ちしてほしくもないしな。眼帯付きなんて人目を引く。かといって、目を晒すのも言語道断。どこの誰が見ているとも知れない。
黒幕が誰か、まだ分かっていないんだからな。こっちの手の内に、破魔の眼がついたとは知られたくない。そういう意味でも、お前が適任だから呼び寄せたんだ」
「仕掛けている者に、手札を勘づかれたくない、ということでもあるのですね」
団長の真意を察したセシルは背筋を伸ばす。
「そうだね、セシル。
だから、殿下の希望日まで休めよ。デュレク。
ほら、一応、早馬を駆って、長旅してきたんだ。着いた翌日から仕事ってのも、息が詰まるだろう」
「そうだな。昨日の今日だもんな」
デュレクとセシルが納得する雰囲気を醸すと、団長はにかっと笑った。
(笑うと、デュレクと似ているな)
セシルは、ふとつまらないことに気づく。
「俺に、これ以上厄介事を持ってこないように、見張ってて、セシル。頼むよ」
「はっ、最後にそれかよ。兄貴! ひどい!!」
「ここでは団長だよ、デュレク副長。口の利き方に気をつけたまえ」
きらんとデュレクを団長は流し見る。
「さあさ、二人は自由行動~。王宮から、さっさと帰ってちょうだい。これは団長命令で、決まりだよ」




