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Gaillardia・Coral   作者: 海花
旅立ち
20/105

◆アイマール港④

「森の国行きの船を探してるお嬢さんと言うのはあなたのことですか?」


もう何人に声をかけたか覚えてないが全て断られ、ライムとの待ち合わせ時間も迫っているので諦めようとしたナツは不意にそう声をかけられてそうです、と声の主を振り返る。

港では少し浮くきっちりとした服を着たひょろりとした貴族の子息といった服装の人の良さそうな風体の男が後ろに数人の黒い服に身を包んだ使用人のらしき者を従えて柔和に微笑む。


「ご機嫌麗しゅう、美しいお嬢さん。

不躾に声をかけてしまって申し訳ありません。

この辺りには人攫いの奴隷船が密航していると言うのに、貴族のご令嬢が船を探して手当り次第声を掛けていると聞いてしまってね」


ふわりとした雰囲気はどちらかと言えばナツが暮らしてきた王都での人々の対応に近い。

話を聞くと若い貴族令嬢が森の国行きの船を探し回っていてこのままでは奴隷船に拉致されてしまうのではないかと心配して声をかけに来てくれたらしい。


「親切にありがとう。

森の国へ友達と2人で行くんだけどチケットはもうないから急ぎでどうしても行きたければ船の護衛としてなら行けるかもって観光案内の人が言ってたからそれで探してたんだ」


たぶんいい人、そんな気がする!と判断したナツは船を探している経緯を話す。

なるほど、と静かに聞いていた男は話が終わるとそれなら私達の船にどうですか?とナツを誘う。


「あなたの船……?」


「はい、我々【ウミユリ商会】と申しまして。

シネンシス男爵家が運営している交易船で明日の朝出航する森の国行きの船があります。

よろしければそちらでお嬢さんを送らせて頂けませんか?

……あ、申し遅れました。

わたくし、シネンシス男爵家次男のセルシス・シネンシスと申します、呼び辛いと思いますので、どうぞ私のことはセスとお呼びください」


到底船乗りに見えない男にナツがどういう事だろう?と首を傾げると誇らしげな顔で協力できますよ、とアピールした後で自己紹介してなかった事に気づいたらしく、深くお辞儀をしたあとではにかんだような笑みを浮かべる。


「セスさん、よろしくね。

私はナツ、ナツ·ヴァルトブルク。

ナツって呼んで欲しいな。

船に乗せてくれるのはとても嬉しいんだけど、友達と一緒だから友達も一緒でもいい……かな?」


「ヴァルトブルク……!?

あぁ、これは……王女殿下とは露知らず……っ!!」


人懐っこい笑顔を浮かべて自己紹介を返すナツのフルネームを聞いたセルシスの顔が真っ青になっていく。

ガタガタと震えながらなんと非礼を……と深く頭を下げながら跪く。


「あー……、その王女って言っても放逐されてるみたいなものだし、城に上がった事も殆どない平民みたいなものだから気にしないで!

顔、顔上げて!ね!」


家名を出した瞬間に態度の変わったセルシスにやっぱりそうなるかぁ、と言いだけな顔に変わったナツが私はナツ、そうただのナツって事で大丈夫だから!としゃがんでセルシスに顔を上げるように告げる。


「まぁ、王女がドレスじゃなくてこんなかっこいい服着て大剣背負ってると思わないし、仕方ないよ」


がっくりと項垂れるセルシスにどんまいどんまいと慰めるナツに王女殿下を乗せるに問題ない船か滞在の部屋に要望がないか確かめていただけますか?と言うセルシスに見せてくれるの?と目を輝かせたナツがセルシスの案内に従って少し離れたところに停泊している貴族向けの豪華客船へ案内される。


「すごい、大きい!!

それにめっちゃ豪華!」


わぁぁ、と船に上がって目を輝かせるナツに恐縮です。と照れ笑いを浮かべるセルシスが過ごしていただく部屋ですが、と船室の方へ歩いていく。


「こちらになります、よっと」


階段を降りるところで何者かに殴られたナツが階段脇にいたセルシスの傍を転がり落ちる。


「よくやった。

貴族なら魔法が使えるはずだ、魔封じの腕輪をしておけ。

ついでに自死されねぇように轡して縛って転がしておけ

王女様、なんてこんな大きな獲物が自分から掛かってくれるなんて俺はついている」


薄れていく意識の中でナツが聞いたセルシスの言葉にナツはなぜ。と思いながら意識を手放した。


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