◆アイマール港⑤
「お頭ァァァ!!
お頭ァァアアア!!」
時間まで、とお茶をしながら談笑をしていたライムがいる部屋へドタバタと音をさせながら血相を変えたどう見てもゴロツキの男が飛び込んでくる。
「どうした」
「やっぱり奴らでした!
女の子が殴られて魔封じの腕輪されて船底に連れていかれました!
今他のやつが騎士団に連絡しに行ってます!」
半ば転がるように入り込んできた男は上半身を上げて正座するようにしてお頭、商会長の傍で早く助けてあげないと明日の朝には奴ら出ちまいます!と必死に訴える男の言葉に何事かと様子を見ていたライムがぴくりと反応する。
「その女の子の姿、分かりますか?」
「へい、青い肩くらいの長さの……ってぇええええ!?ら、ら、らライムさん!?なんてったってこんなところに??」
ライムから掛けられた声に答えながらライムの方を見た男が目玉が飛び出すのではないかと言うほど目を見開き悲鳴じみた声を上げる。
「その騒がしさ……もしかしてルドウィンさんですか?」
「え、え!?ま、マジっすか俺の事覚えててくれていたなんて……!
ありがとう、ありがとう神様!
俺、明日からちゃんとお祈りするわ!!」
一々がオーバーリアクションな男にライムがもしかして、と心当たりを口にすれば既に両膝をつけているのに膝から崩れ落ちるように床に両手をつけて、それから胸の前で手を組んで虚空に向かって感謝を叫ぶ。
「それで、ルドウィンさん。
その女の子ですけど、もしかして背中に大剣を背負ったちょっと大柄で緑のコートに茶色のズボンと革のブーツ履いてませんでしたか?」
「ライムさん、千里眼取得しやしたか?」
「それ、今回の私の旅の同行者です」
ライムがもしかして、と告げた特徴にルドウィンが不思議そうに見つめるが、ライムは眉間を抑えて深い溜息をつく。
「大丈夫だと思ったのですが……なんというか……はぁ」
再び深い溜息をついたライムがゆるゆると立ち上がる。
全身からやりたくないけど仕方ない。という気持ちが溢れるような気怠そうな緩慢な動きで私が行きます、と商会長とルドウィンを見て告げる。
「やはり、1人にするんじゃありませんでした。
ルドウィンさん、案内お願いします。」
杖を握ったライムが白い魔導師のローブを翻して踵を返すと待ってくだせぇ!というルドウィンのバタバタと走る足音を引き連れて商会の建物を出てライムはナツが捕らえられていると言う奴隷船へ向かう。
「どうしてこう、私の連れは全員が全員問題を起こすんですか、私の運が悪いってことですか!?」
若干苛立っているライムの独り言が港町の喧騒に飲まれて消えた。




