ナンパ野郎
俺達は休憩後、周囲を警戒しながら一旦街の方角に戻ることにした。
街から離れるほど敵は強くなり、今回のイベントのポイントも稼げるのだが、
死んでしまっては意味がない。なにせ、その場での蘇生方法が現状ないためだ。
僧侶系が使えるようになるらしいが、まだ序盤の序盤。蘇生魔法を使える
僧侶なんていないんじゃないかと思う。そもそもこのPTには僧侶系はいないのだが。
「なぁ、もうちょっと遠くに行ってもよかったんじゃないか?一体だったら楽勝なんだし」
「遠くに行ったら複数出てきたんだから、あれより遠くに行ったらもっと増えるだろうが!それに、こっちには蘇生方法がないんだ。無理してPTメンバーが死んだらそれで俺達のイベント終わっちゃうぞ」
どうやら紫苑はもっと強敵と戦いたいらしく、不満があるようだ。まぁ、気持ちは分からないでもない。せっかくゲームをやっているんだから、もっと燃えるような戦いをしたいのだろう。
「キュトは弱い敵の方がいいニャ。楽が出来るほうがお得にゃのに、塩ニャは血の気が多すぎるのニャ」
「男だったら強敵と戦い。そして死ぬ。それがいいんじゃないか!」
「キュトは女の子ニャ。かよわいニャ」
「ぐぬぬ」
なんというか強敵と戦うのはいいけど、死ぬのが前提なのか?ちなみにキュトさんは紫苑の事を塩ニャと呼ぶ。キャラネームだからいいんだけど、やっぱりなれないな。ネームチェンジできるアイテムとかあるのかね?紫苑は使わないと思うけど。
「はーい、そこまで!二人ともそろそろお喋りはお仕舞いにして!レーダーに反応があったわ。ここから南西に一匹いるみたいよ」
「わかった。皆戦闘準備。敵を視認したらいつも通りのパターンで倒すよ」
俺達はレーダーに映っている敵方角に移動し再び戦闘を開始するのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふぅ・・・・。これで40匹目かな」
あれからも戦闘に戦闘を繰り返し、ゴブリンを40匹倒すことに成功していた。
Lvも14に上がり、もうすぐジョブチェンジが可能になる。サラさんのMPの消費が激しかったので三度目の休憩をしている時だった。
「っお!もしかしてキュトちゃんじゃない?」
「マジか!PTに入ってるって本当だったんだな~」
二人組みの男がキュトさんの方をジロジロ見ながら近寄ってきた。一人は犬族の
戦士系の男で盾持ちの片手剣を装備している。もう一人は猫族の男で短剣を装備している。二人ともニヤニヤした顔でキュトさんの胸を見ながら話し掛けてきた。
「こんにちはキュトちゃん♪こんな所で会うなんて思わなかったよw」
「もしかしてキュトちゃんもイベ中なの?wよかったら俺達と組まない?w」
「え・・・・と、あのその・・・・」
キュトさんがチラチラと此方を見て「なんとかしてニャ」と目で訴えてくる。
うん。それはいいんだけどさ。ネトゲナンパすんなよ。しかもこっちはガン無視か。あと草多すぎ。
「悪いんだけど、キュトさんは俺達と組んでいるんだ。ナンパなら他を当たってくれないかな」
「・・・・あ?」
「お前になんか聞いてねぇんだよ。ナイトでもロールしてんの?はwずwかwしwいww」
よし殺そう。そうしよう。
「おう!お前ら喧嘩売るっていうんなら買うぞ!さっきからゴブリンばっかで飽き飽きしていたんだ!」
男二人が紫苑を見てキョドってる。まぁ、見た目竜族でデカイからね、しょうが
ないね。
「もちろんPT戦よね。こっちは四人だけど貴方達は二人。かまわないわよね?」
サラさんが鬼の形相で男共を睨んでいる。怖い。
「・・・・チッ。行こうぜ」
「キュトちゃん!またね~ww」
そういって男達は未練がましそうに俺達から離れていった。
「ふきゅ~・・・・。みんなありがとうニャ。助かったニャ」
「いや、クレアさんが言っていたのってああいう奴等のことなんだな。」
クレアさんから聞いていたけど、やっぱり胸に釣られて寄ってきているのかな?
もしくは男を引き付けるフェロモンとかなんとか。
俺はキュトさんの胸に目がいきそうになるのを必死に堪え、なんとか目線を顔に合わせることに成功した。となりでサラさんがジト目だったような気がしたが気のせいだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「チッ」
せっかくキュトちゃんとお近づきになれるチャンスだったってのによ。ジャマしやがって。
「なぁなぁ丁度いいしwあいつ等にもアレ使おうぜww」
そうだな。あのナイト(笑)野郎の恥を掻かく姿を、キュトちゃんに見せれば少しは気も治まるか・・・・。
「いいなそれ。それにもう少しライバルも減らしておきたいしな」
ククク・・・・。あの野郎の間抜け顔を想像すると笑いがこみ上げてきやがるぜ
悪役って難しいですね




