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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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 我々は兄の説明で王太子宮の応接室に向かっている。

 向かっている途中で王太子殿下がリリベルに、

 「あの水色の宝石の指輪はどういう意味があるのか?」と小声でお尋ねになったが、リリベルは伯父の声音を真似て「ただの献上品です」と言っておいた。

 ザック殿下が「似てねえから」って横から言うけど無視だ。

 王太子殿下は苦笑いされたが、王太子妃様は見事なアルカイックスマイルだった。


 応接室に到着してソファに案内される。

 伯父と私が横並びに座り、反対側の上座に王太子ご夫妻、誕生日席にザック殿下の配置だ。

 フィリップ様はザック殿下の後ろに、ライオット兄は王太子殿下の側に控え、兄はお茶を入れる準備をしてくれている。


 「さてリリベル、何から話すかな?」と伯父が聞いてくるので、リリベルは、

 「まずはカテリーナ様のお母上の王妃様は“私やベルトルトお兄様の曽祖母なんです”からかな?」と言うと、横でガチャンと音がした。

 兄がティーポットを取り落としたようだ。


 リリベルは思わず「わあ!ルト兄ちゃんお湯入れる前で良かったね」と言うと、

 「私が代わります」とフィリップ様がお茶の準備を代わってくれた。

 兄はまだ驚いたままボーッと突っ立っていたので、王太子殿下が、

 「お前はここに座れ」とザック殿下の前の反対側のお誕生日席を案内した。


 しかし兄が「殿下方と座る訳には…」と躊躇していたので、王太子殿下が、

 「どうやら我々は親類のようだぞ。お前の妹も堂々と座っているだろ。お前も少しこの図太さを見習え」と仰って兄を無理矢理、座らせた。

 何か私、失礼な事言われてないか?あ、失礼なのは私の方か。

 話は私が説明するより伯父が説明した方が説得力ありそうなので続きは伯父にお願いする事にした。


要は①王妃と北の王子は別れておらず続いていた。

  ②王妃は妊娠したが、恐らく高齢出産が原因でお亡くなりになった。

  ③産まれた子供は北の王子が連れ出し、北の民の受け入れ先とされている子爵領に逃げ込んだ。

  ④当時の子爵家当主に自分の素性と事情を伝えて子供を託し、王子はその2年後ぐらいに子爵領で亡くなった。 

 その後、子爵家は王子の子が後を継ぎ今に至る。

 というところまで伯父が説明した。


 「それはどのくらい信憑性がある話なのか?」と王太子殿下が仰った。

 やはり信じられないよね。というか直ぐに信じたら駄目だよな。


 伯父が「北の王子が逃げ込んだ時に、その場にいた者の証言を聞いた。証言者は2代前の当主の息子だ。信頼できる」と言うと「そうか」と黙り込んだ。


 でも王妃様から産まれた子供の容姿で、最初から子供は国王の子ではないと疑われていたのではないのか?リリベルがそれを王太子殿下に聞くと、当時、二人は別居していたそうだ。

 だから産まれた赤ん坊を見て、その時の王太子が直ぐに箝口令を敷き、国王にもその事実を伏せたそうだ。

 そして王妃は病死とされ、赤ん坊は取り合えず離宮に移された。

 赤ん坊をどのように扱うか検討していた矢先に、赤ん坊が行方不明となったと記述にはあるそうだ。


 王太子殿下は「前侯爵の話は時期的にも辻褄が合う。だがこの国の王家の血を引かないとはいえ王家が絡む問題だ。慎重に判断したい。他に証拠というか根拠となりそうな話はないか?」と仰った。


 リリベルは「伯父様、野生馬の件は?」と言うと、

 「ああ、そうだな」と言い「王太子殿下、子爵家の先祖に北の女神の婿になるのが嫌で逃げて来た王子がいる。その王子が北の国から逃げる時に乗って来た馬が女神の愛馬のスネイプニルだったそうだ」

 「スネイプニル!そう言えば母が、そなたらに語ったそうだな」

 と王太子殿下は王太子妃とリリベルを見る。

 「母上が?」とザック殿下が驚く。

 ザック殿下はリリベルが王妃様の茶会に呼ばれたことを知らなかったのか。


 「そのスネイプニルは女神の血を引く北の王族しか背に乗せないそうですが、北の王子は野生馬を手懐けたそうです」

 その話にザック殿下が反応する。

 「確かミネルバ殿が、野生馬は子爵を背に乗せると!」

 「そうです、第三王子殿下。我が侯爵家の兄弟はオリベル王女が祖母だ。だから北の王家の血を引いている。そして野生馬はマリベルとリリベルは乗せる。君はどうだベルトルト?」


 「私は…私とララベルは野生馬には近寄らなかった。母が怖がっていたから。母が小さい頃、祖父に懐く馬が美しくて近寄ったら威嚇され、それ以来、怖くて近寄れないと」

 「そうか。ベルナルドは?リリ」

 「ナル兄ちゃんは、乗れるようになる前に侯爵家に行っちゃったから」

 「そうか!それは悪いことをしたな。王太子殿下、野生馬は北の王族の血を引く証明になる。そしてこの子らの祖父も野生馬が懐いている。その祖父は子爵家当主にはなったが子爵家出身ではない。これで証明にならないか?」


 「‥‥そうだな、皮肉にも我々は東の王女を通して親類だ」

 と王太子殿下は薄く笑った。目は笑ってない。


 王太子って実は本性隠してる人なの?リリベルは何か直感でそう思った。

 恐らく優秀な王太子妃の引き立て役を演じているんだ!

 わートリハダ出てきた。早く逃げよう。


 「伯父様、早く帰ろう?」

 「そうだな。もう十分だろう。王太子殿下、失礼するよ」

 「ああ、時間を取らせて済まなかった前侯爵、リリベル嬢も。そうだリリベル嬢、青薔薇を大事にしてくれ。母はどう思っていたか知らないが私は好きだったのだよ」

 「分かりました」

 「あと、またマンゴーの実を甘くしに来てくれ」


 また普段の王太子に戻った!ヤバい人だ!

 「もう来ません」

 「えっ来ないの?ルト!あーまだ放心中かぁ。仕方ないなルトは真面目だからなぁ」と笑うが、私は真面目じゃないと?

 本当に王太子はムカつく人だ。


 公式にはカテリーナ様のお母上の死因は病死となっている。

 別居中の国王にも病死と伝えられたそうだが、夫であった国王は妻がまだ北の王子と続いていた事や再び懐妊したことを知っていたのかもしれない。だからプライドの高い彼は精神を病んだのではないだろうか。

 恐らく彼も王妃を愛していたのかもしれない。

 でも気付いたのが遅過ぎたんだ。


 リリベルが席を立つと、ザック殿下が「馬車まで見送るよ」と言ってきた。

 殿下にそんな事!と思って断ったのだが、殿下は気にせず付いて来た。

 当然フィリップ様も。

 「なあ、リリベル嬢、俺も野生馬に乗れるかな?」

 リリベルは殿下の思いもよらぬ言葉に一瞬驚く。


 代わりに伯父が「第三王子殿下も北の王女殿下の血を引いておられるので、可能性はあるかと」と言うが、でも従兄弟の聖騎士ミカエル様は苦労していて、まだ触れてもいない。

 もしかしたら血筋プラス何かが要るのではないか?とリリベルは思ったが黙っておく。

 殿下が子爵領に来ることはないだろうと。

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