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「鉄壁の淑女か。目標達成だな」って義母に言われたよ。
この感じ…何で父と同じ気風なの?
「でもちゃんと大事にしてるだろ?好きだし。」
わーこの感じも父と一緒。冷めてるようで凄く好きなヤツ。
ツンデレは私なら絶対グーパン案件だ。本当に面倒くさい。
「でもさクララベルがベルモントを連れて来た時はビックリしたんだ。義兄がお前の父親ソックリだって言ったんだよ」
はい待って!「爺様、また見逃せないワード!義兄って?」
「え?バカンス3世の息子だよ。私より5歳程上の」
「今、彼はどこに?なぜ彼が子爵位を継がずに、あなたが子爵に?」
「ああ私もそれを言ったんだが、義兄には平民の恋人がいたから子爵位は継ぎたくないって。それに義両親も義兄もマラカス1世の正当な流れを汲むのはお前だって。しかも王族同士の血筋なのだから貴族になれって言うんだ。ちなみに義兄は北の移民の受け入れ先の村で村長をしている。今も現役だ」
「僕、何度も会ってる…移民の件で」
「あああぁ〜オリベル王女の弟でんかぁ〜」伯父は泣き崩れた。
父は放心している。母は「まあ」と言ってるだけだ。
マジでカオスだ脳が特に。
リリベルはグラスの米酒を一気に飲み干した。
「父様!伯父様!飲もう!」飲まんとやってられんだろ。
次の日、婆様と母以外、全員二日酔いになったが、爺様、伯父、父、リリベルで脱北者の受け入れの村に行った。
「あれぇ。領主様、皆様お揃いでどうしたんだ?最近来た移民達なら、元々、こっちの言葉喋れるし文化も知っているから多分早いよ。北の貴族だったんだろ?子爵邸で雇ったら?」
腰が曲がり杖を突いた爺さんが出てきた。白髪だが瞳の色は水色だ。やっぱり親族なんだろう。
「義兄さん、あのさ二日酔いで…」
「ジジィ!二日酔いの話は今は違う!」
「リリ騒ぐな、頭痛に響く…」「え〜っ一体何しに来たの?」
「うぷっ、村長、トイレどこだ?」「何だ吐きに来たの」
「ちがーう!」「だからリリ叫ぶな〜!」伯爵領アゲインだ。
男どもは毎回、全く不愉快だ!!
気を取り直して「村長、爺様が子爵領に初めて来た時の事、教えてくれない?」
「あぁ。バスタブが来た日の事か…」
何か風呂桶が来た日みたいに言うなよ。今、笑いは要らない。
「俺がまだ6歳くらいの時だな。金髪の男が赤ん坊を連れて子爵家に来たんだ。この子は北の王族の血筋だから子爵家と同じ血筋だって。それでこの子を預かれと言ってきた。そいつは自分を北の王子で妻は東の王女だと言ったよ。だが母親は高齢出産だったから、赤ん坊は難産で命を落としたそうだ。自分は北からもこの国からも追われて逃げているから、この子を育てられないと言っていたな」
皆、顔が青い。
でもそれはこの話を聞いたからじゃない。ただの二日酔いだ。
「王子とやらも連れて来た赤ん坊も金髪で、瞳も王子は水色で赤ん坊はエメラルドグリーンだ。特徴が北の王族とも子爵家とも一致したから、俺たちは赤ん坊だけじゃなくて父親も匿うことにしたんだ。領主様はご存知だろうが子爵家は先祖代々、北からの者は受け入れなければならない。だから身分はどうでも良くって、とりあえず北の者を放っておけなくて受け入れたんだ」
「まあ幸いどちらの追手も来なかった。それか馬達が蹴散らしたんだな。」
多分、それだ!
「父親は息子をバスタブ1世と呼んでいた。まあ本当に王子だったんだろうな、スゴい高価な宝石を何個もゴロゴロ持っていた。北の最高の宝石だよ。俺も一個貰った。その日からバスタブは俺の弟になったんだ」
買収されたんだな。
「それから父親は馬達を手懐けていたなぁ。だから、やっぱり北の王族だなってなったんだよ」ちょっと待て!その情報何だ?
「村長!馬が慣れるのに王族は関係あるの?」
「そりゃそうだろ。北の女神の馬だぞ。あれは王族の血筋しか乗せない。王族は女神の子孫だし。まあ緊急時は違うがな」
またスゴいのぶっ込んできた。
「あと王子はこの国の女神に改宗したんだ。そもそも彼も北の女神の婿候補に選ばれたそうだ」ちょっと待て!それも何だ?
「北の女神の婿?」
「何だそれも知らないのか?こっちの国も女神様に選ばれる聖女様がいるだろう?北の女神は婿を選ぶんだよ。しかも金髪で水色かエメラルドグリーンの瞳が好きなんだ。だから王族が選ばれることが多い」
どうしてこの人、ただの村長してるの?




