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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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 シャーロットが怒り狂っていた。

 なぜなら棒読みのザック殿下と男爵令息のただの読み合わせに、誰も突っ込むことなく、侯爵令嬢達もウットリと感激しているだけなのだ。


 本来、BLはシャーロット嬢の守備範囲外だった。だが元々持ち合わせた彼女の小説愛と熱が配役の宝の持ち腐れを許さなかった。

 まあ折角のこの面子に、ただの棒読み音読だったら観客たちにも期待外れでがっかりさせたことだろう。

 学院祭まで残り2週間となったところで脚本はそのまま、シャーロット嬢が怒りのあまり総監督に緊急着任した。シャーロット嬢のあまりの剣幕に侯爵令嬢を筆頭にザック殿下も誰も文句を言えなかった。


 シャーロット嬢はメガホンの代わりに扇子を片手にザック殿下相手でも容赦無かった。男爵令息は何度も泣かされた。周囲には緊迫感が蔓延したが、背景セット、背景音楽、効果音担当も、より脚本に近付けなければと緊張感を持って奮起した。

 それはまさにチーム一丸となる“プロジェクトS”だった。SとはシャーロットのSと3組のSだった。


 リリベルは生徒会の開催側の仕事があったのでクラスの役割は免除された。だから練習の緊迫状況はダイアナ様から聞くくらいで、よく分からなかったが遠くから見るザック殿下の疲弊具合でなんか察することができた。

 

 学院祭まであと一週間、放課後はどのクラスも今は開催準備を行っているのでリリベルは生徒会長と各教室を巡回して、困り事とかないか要望を聞いて回っていた。

 最近は生徒会長とセットで動くのでまた良からぬ噂が広がり出した。ザック殿下との破局説、生徒会長の妖精強奪説、これは以前からあった三角関係説など、いつでも恋愛関係の噂話は好きなんだなとリリベルは毎日心を無にして働いた。


 「やっぱり生徒会長との方がお似合いなのよね〜」

 「分かる。金と銀でなんか素敵」

 「生徒会長の大人の雰囲気の方が合ってるんじゃ」今日も周囲でヒソヒソ言われている。

 確かに殿下といるより生徒会長といるほうが心穏やかでいられる。生徒会長の方がスマートだしリリベルをちゃんと令嬢扱いしてくれる。

 

 リリベルがそんな事を考えていると生徒会長が、

 「リリベル嬢?どうしました?今日もたくさん教室を回りましたから少し疲れましたか?」と聞いてくれた。

 ほらこういう気配りもしてくれるんだよな。さすが生徒会長だ。

 「いやまだ大丈夫です。でも、ちょっと思ったんです。ザック殿下がいないから私の令嬢が剥げずにすんでるなって」

 とリリベルが言うと、生徒会長は、

 「リリベル嬢はいつだって令嬢ですよ。少し変わっていますが」

と言って笑った。そして、

 「休憩しましょう。私が少し疲れました」と言って休ませてくれる。


 恐ろしい。令嬢キラーだ。

 生徒会長は私が普段寄り付かない高位貴族が好むカフェテリアにリリベルを連れて行った。

 「今は学院祭で忙しくて、あまり人も居ないはずです」とカフェに入ると、そこは王都の有名カフェも真っ青な雰囲気の良い素敵な場所だった。

 生徒会長は樹々の緑が溢れる窓側の席に案内しメニューを差し出してくれる。

 「リリベル嬢が普段行かれるBENTOO屋さんもいいですが、ここのメニューも美味しいですよ」と言って。

 

 確かに今は人がまばらだ。リリベルはメニューを見る。ランチタイムは終わっているが美味しそうなデザートと軽食にリリベルの目が輝く。

 特にこの数量限定アフタヌーンティーセットが気になる。

 もう夕方だし残ってないかなとケーキセットにしようと思っていると、リリベルの様子に生徒会長はサッと店員にこのアフタヌーンティーセットを頼んでくれた。


 聞かずに女性の希望を察知しスマートに頼むなんてすごい技だ。

 公爵令息とはそんな事もできないといけないのかとリリベルは感心する。

 それに数量限定とあるのに、まだ残っているのか聞かないのもすごい。恐らく彼が言ったら店員は何としても出さないといけないのだろう。


 三段になったアフタヌーンティーセットがテーブルにやって来る。そして店員の淹れる紅茶の良い香りも漂う。

 リリベルは下段のオープンサンドからいただく。なるほど令嬢が頬張らなくてもいいように上品な大きさだ。

 生徒会長が普段言っている意味が分かる。小さいが色んな種類のオープンサンドが載っていて彩りも楽しめる。さすが高位貴族がお気に召すカフェだ。


 だが、きっとこういうのばかりでも飽きるんだろうな。リリベルはBENTOO屋さんのご飯も大好きだ。

 「リリベル嬢は何でも美味しそうに食べますね」と生徒会長が仰った。

 「それは令嬢らしくなかったでしょうか?」と聞くと

 「令嬢は高位貴族ほど感情を出さないように訓練を受けますから、美味しくても不味くても、あまり表情を崩さないのですよ。でもこんな普段の食事の時くらい美味しい物には素直に喜べばいいと僕は思います」

 はい。100点満点です。さりげなく「僕の前では普段の君でいていいよ」は、まさにキラー発言だろう。


 でもリリベルに発揮しなくてもいいんじゃない?


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