45
リリベルがフィリップ様に3番目の伯父への手紙を依頼すると、快く引き受けて下さった。これまでも侯爵家経由でお礼のお手紙を渡せたのかもしれないが、今回、直接会いに行く人がいるなら、その方に頼める方が有難い。
昼食前にフィリップ様が神殿の売店に最新の聖騎士名鑑を購入しに行くというので、リリベルも付いて行った。
リリベルも“姉のことが好きだ”と言う聖騎士様の存在が気になっていたのだ。
フィリップ様が聖騎士名鑑の最新刊とファンクラブの会報を嬉しそうに手に取ってらっしゃるのを見て、リリベルは今でもフィリップ様は元第一王子殿下を大切に思ってらっしゃるのだなと思った。
自分の従兄弟でらっしゃるなら尚更だろう。
売店はちょうど午前の礼拝と神官様達の治癒が終わったばかりで、とても混雑していた。
リリベルは自分もさっさと名鑑を買って帰ろうと思っていたのに、
「もしかして聖女様の妹の妖精様?」と夏の巡礼に遠路はるばる来ていた聖女ファンに捕まってしまったのだ。
夏休みの時期だから若い巡礼者も多い。明日は月に一度の聖女の顔出しもあるから余計にだ。
リリベルはフィリップ様とご一緒だったので、今日の侍女のデイジーさんとザック殿下、護衛の聖騎士様には先に食堂に行ってもらっていた。
これは食堂には遅れるが仕方ないと、咄嗟に、
「はい。巡礼ご苦労様です。私は今日は奉仕活動で売店の手伝いをしないといけませんので」と言って売店の売り子側に回る。
売店が落ち着いたら裏に逃げたい。
今日の売店担当の神官様は驚いていたが、顔見知りの神官様だったので直ぐに理解して下さった。
リリベルは目でフィリップ様に「先に行って下さい」と合図する。
フィリップ様も頷いて直ぐに戻って下さったのだが、なぜかザック殿下を連れて戻って来た。
殿下が来たら聖騎士様も来るでしょう!?今日の聖騎士様はミルフィーユ様じゃん。
赤毛の殿下は目立って仕方ない。
第三王子殿下と女性聖騎士のミルフィーユ様の登場に更に盛り上がる現場。
リリベルは心を無にして神殿グッズを売り捌いた。
時々、聖女ファンと握手した。
殿下はなぜかミルフィーユ様と一緒に聖騎士名鑑にサインまで求められていた。
ジャンル違うだろ!
有名人なら何でもいいのか!と突っ込まずにはいられなかったが、ひたすら売って握手していたら昼食を食いっぱぐれた。
だけど神殿史上最高額の売り上げを記録したと大神官様に褒められる名誉を頂いた。
殿下も王族としての奉仕活動の貢献度を認められた。
それよりもお腹空いた…助けて。
こちらも登場人物が入り込んできましたので、分からなくなってきた方は
本編の66話にあたる“筆頭侯爵家、子爵家、家族一覧”をご参照下さい。




