242
「で、嬢ちゃんは1番の悪者は黒いカラスにしたのか?」
「ううん。誰が1番とかじゃない。どいつもこいつも悪い!でも事の発端は神様だ!って」
「嬢ちゃんらしいな。冷静にキレイに判断していると思うよ。でも白いカラスが“自分のために神様を裏切った”という考えにはどう思う?それが殿下のお考えだろ?」
「店主!ちょっと待って!白いカラスは神様を自分から裏切ったの?それも自分の為なの?待って!自分と視点が違い過ぎて、そこから考え直さないと」
「しょうがねぇなぁ、嬢ちゃんは。白いカラスは神様が好きで誰にも渡したくないと考えたんなら、黒いカラスを改心させる事も、連れ戻る事もする訳がないだろ?その行為は自分本位で神様の命令も信頼も裏切る行為だろ?」
「確かに」
「そこまでは理解したか?それで殿下が仰るのは恐らく、白いカラスはワザと自分の羽根には願いを叶える力があると、黒いカラスに知れるようにバラすんだ。そうしたら悪どい黒いカラスはどうする?」
「白いカラスの羽根を欲しがる!それこそ全部」
「そうだろう?つまり白いカラスは黒いカラスに自分を殺させるんだ」
「まさか!一石二鳥?」
「その通りだ。黒いカラスは2度と神様の元へは戻れないだろうなぁ。それに白いカラスは被害者ヅラして神様の元に戻り神様を独り占めだ」
「白いカラス、白い癖に何て腹黒…」
「ハハハッそうだな〜。殿下は恐らく恋をしてるんだなぁ」
「え?そんな事分かるんですか?」
「そうだろ。じゃないと、こんな答えは導き出せないだろ?普通なら嬢ちゃんみたいな解答になるさ」
これは恋をして誰かを独占したいと思わないと理解できないの?!
リリベルに衝撃が走った。
でもそれは何に対しての衝撃なのか?殿下は一体誰に恋を?まだマリィ姉ちゃんが好きって事?いや違う。まさか火山の国の…?それも絶対、違うだろう。
だったら…
「店主!殿下に私は『まだそのままで良い』って言われた。それってどういう意味だろう?」
「へ?それは…そうか〜。“準備中”って事だろ?時期が来れば分かるんじゃないか?」
「時期が…」殿下は“まだ”って言った。
だから私はまだ分からなくていい。うんそれでいい。何だかそれが安心できる。
リリベルが南から帰国して2週間後、子爵領からナル兄が王都の侯爵家に突如戻って来た。しかも父と同じ真夜中に同じシチュエーションだ。
そして玄関を開けてまたデジャブだ。
「うわっ兄ちゃん何その馬?!」
「リリ、悪いなこんな夜中に。でもまた少し休んだら侯爵領に行くから。それで、こいつは俺の相棒で俺の馬になったの」
兄の横に体格の良いグレーの馬がいる。これは色はグレーだが絶対、北の馬だ!
「兄ちゃん、もしかして北の陛下にスネイプニルをもらったの?」
「違うよ。コイツは屋敷の周りをうろついていたの。それで友達になったんだ。名前はセノビックって言うんだ!カッコいいだろ」
「ふ〜ん?大きくなりそうな名前だね。でも絶対、普通の馬じゃないでしょ?ここまで1日半で来たの?」
「そんな訳ないだろ!でも聞いて驚けリリベル。3日で来たぞ!」
「ああそう。あ、執事さん野菜ありがとうございます。毎回、子爵家の者がご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「お嬢様、お気になさらず。坊っちゃまもお帰りなさいませ。厩舎には至急、準備をさせておりますから」
ホント、毎度毎度、執事さんにはお世話になるな。
「兄ちゃん、とりあえず厩舎に行こう」
「なあ。何でお前驚かないの?俺、3日で子爵領から来たのに」
とりあえず父とサオリの事は言わないでおこう。
「父という前例があるからね」「チェッ」
「セノビック、触ってもいい?」
セノビックは回復魔法をかけるよと言わなくても大人しくしてくれた。
「この子、良い子だねぇ」
リリベルはセノビックの頭を撫でながら回復魔法をかけてやる。
「そうだろ!でもグレーだから独りぼっちでさ。だからか俺と気が合ったんだ」
「野菜食べる?セノビック。兄さん、お野菜とお水をあげて、ちゃんと世話してから来てね」
リリベルは兄に馬を任せて部屋に戻って即行で寝た。




