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「マレシアナお帰り」
子爵領から戻って来た妻を出迎える。
私はあちらで南の王族が襲撃を受けたとの報せを受け、一人先に王城に戻って来ていた。
王女達は馬車で眠ったようで、そのまま乳母達に寝室に連れて行かせた。
「殿下、戻る道中で嫁がれた王女殿下も、アイザック殿下含む派遣メンバー全員が無事だという報せは頂きましたが、王妃様が心労で寝込んでおられるとか?」
「ああ、だが今はもう食事もできるようになって回復しつつあるよ」
「本当に?!アイザック殿下の無事なお姿を見られたからですわね。良かったわ」
少し違うが余計なことは言わないでおくか?
「それか、リリベル嬢がまた何か助けてくれましたか?」
やっぱりマレシアナだ。
「ああ。神官の治療をずっと拒んでいた。だがリリベル嬢の回復魔法は受け入れたそうだよ」
「王太子殿下、私、子爵領を訪れて思ったのです。あそこは…あそこに居る方々は北の国民や環境にも近い。だから、王妃様も心を開きやすいのでしょうね」
「そうだな。アイザックもそう言っていたよ」
「美しい所でしたわね。食事もシンプルな料理が多かったですが、素材が美味しくて。王女がトマトを食べた時は驚きましたわ!」
「そうか、王女が?」
「ええ前子爵に畑に連れて行ってもらったのです。沢山、トマトがなっていて、自分でもいで食べていました。甘いって」
「そうか色々、土産話がありそうだ。こちらも伝える事があるよ。アイザックの事なんだ」
「まあ!私もアイザック殿下の事で子爵から伝言を預かりました」
「そうか、とりあえず部屋で話そう」
我々は急いで私室に戻り、侍女にお茶を淹れてもらってから人払いをする。
「先に君の話から聞いてもいいか?」
「ええ。まずは東の国から受けた警告と同じ内容を、北の国王陛下も仰っておられたみたいだわ。ですが、やはりリリベル嬢がいるから大丈夫だろうと」
「なあ?何で彼らは直ぐに我々に知らせてくれなかったんだろう?」
「ああ、それは私も思いましたが、北の陛下は普通の会話のようにして仰るようです。それに最後はリリベル嬢がいるなら全ての事に“ま〜いいか”って」
「それ!東の神も、こちらに伝えて欲しいと仰った訳ではないそうだ。神の発言を司書殿が心配して、配慮で西と南にそれぞれに知らせてくれたそうだ」
「そうですのね。ですが子爵が仰るにはアイザック殿下の赤い髪の方を北の陛下が気に掛けておられたそうですわ」
「ああ、それは以前、父から説明を受けた話か?確か火山の国出身の王妃の名残だと」
「ええ。そうなのですが実は火山の国では既に赤い髪は失われているそうなのです。北の陛下はそれが重要だと…」
「重要な部分が何かって事か…」
「そうです。子爵には全く見当がつかないそうですが、重要な情報だと言われたそうですの」
「成程。だがそれに関しては気になる情報を南から得ている」
「それは?」
「アイザックが南に滞在中に、火山の国の女王が急に南を訪問して来たそうだ。名目は盆ダンス大会の鑑賞だったそうだったが、目的は明らかにアイザックに会う為だったと」
「もしかして再び、赤い髪を取り戻したいのでしょうか?」
「その可能性はあるが、彼女は既婚者で子供もいる。もしかしたら他の王族の伴侶にとか」
「あちらは一夫一妻なのですか?もしかしたら複数の伴侶は普通の事だとしたら?」
「まさかな。だが今はマズイな〜。アイザックが自覚したばかりなんだ」
「リリベル嬢の事ですか?」
「ああ。それで王族籍を抜けたいと」
「まあ!そこまで覚悟を決めて?それなら王族籍をさっさと抜いてしまえば良いのでは?そしたら彼を婿にと言われても、もう彼は王子ではないと断ってしまえば良いのです」
「そんな簡単なことか?」
「まあ表向きは。ですがそうなると強行に出られると困りますわね。王族でなければ、もう守って差し上げられなくなるわ」
「そうだな誘拐なんかされても国際問題にできないかもな」
「アイザックに一応、この事は伝えておいた方がいいと思うか?どう思う?」
「彼のやる気に水を差すのですか?でしたら、今、直ぐにリリベル嬢と先に結婚させてしまうのが1番の解決策では?」
「解決だけならな。だが違う問題が勃発するだろ」
「確かに。火山の国より我々には厄介ですわね〜」
「当人たちの為にもならないしな」
「では当人達が自力で解決するということで」
「本当に、それでいいのか」
「本当にあの二人が結ばれるなら必要なことかと」
「雨降って地がってやつ?」
「と言うより、二人で困難を乗り越えたほうが盛り上がりますでしょ!」
マレシアナ…面白がってるな…。
「リリベル嬢も一緒に盛り上がってくれるだろうか?」
「そこですわねぇ。難易度高いですわ」
「確かにな。子爵領以外に何に興味を持つんだ?あれは…」
「南国フルーツ!」
「アイザックはその下か…?」




