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うちの子爵家はかなり変わっていると思う。
ただの地方の貧乏子爵家のはずなのに、1番上の兄は王都で王太子殿下の侍従をし侯爵令嬢の奥さんをもらって伯爵になった。
2番目の姉は学院を中退したが、外交官のダンナ様で男爵様と海外を飛び回り、勉強嫌いだったくせに今では数ヶ国語を操り、妖精のようだと言われる美貌で海外の社交界を席巻している。
3番目の姉は神殿で聖女候補の侍女だったにもかかわらず、女神様のご指名で聖女になってしまった。
4番目の兄が一番普通かな。学院には通わなかったが、今は代替わりしたばかりの筆頭侯爵家で侯爵様の秘書兼補佐官をしている。
リリベルは5人兄妹の末っ子で、ずっと上の兄妹達を見て育ってきた。両親にも「リリは普通でいいからね」と言われてきたし、私が居なくなったら子爵家は祖父母と両親だけになってしまうから、私は家に残ろうかなと思っていた。
しかし、それにもかかわらず私も学院に入学後、厄介ごとに巻き込まれる事になってしまった。
そもそも同学年で同じクラスに第三王子殿下がいた時点で、それに気付くべきだったのだ。
でも従来ののんびりした性格が、自分にも兄妹達のような何かが降り掛かるなんて欠片も思っていなかったのがいけなかったのだ。
子爵家の末っ子のリリベルは春から学院に入学するため、冬に入る前から王都の侯爵家に来ていた。
侯爵家は父の兄の家で、伯父は2年前に引退し、今は従兄弟のアイオットが当主となり侯爵家を継いでいた。
従兄弟と言っても歳が倍以上離れている。どちらかと言うとアイオットの10歳の息子や4歳の娘と年が近く、侯爵家に来てからはこの2人と過ごすことが多かった。
リリベルのすぐ上の兄のベルナルドは、アイオットの息子の侍従として侯爵家に入ったのだが、最近はアイオットの側で仕事を手伝っている事が多いようだ。
「ナルは優秀だからね。まだ10歳の息子の側仕えには勿体ないから、僕の仕事を手伝ってもらってるんだよ」
とアイオットは言っていた。
兄もまだ17歳だが、学院にも行かなかったのにスゴいなとリリベルは感心した。実は侯爵家で学院よりも、すごい教育を受けていたことをリリベルは知る由もなかった。
リリベルの学院入学は春からなので、本来なら冬の終わりに王都に来れば良かったのだが、早めに王都に慣れた方がいいだろうと父に強引に王都に送られた。
本当は田舎の子爵領が好きなんだけどな〜。
聖女になった姉のマリベルは婆様っ子だったけれど、リリベルは細かいことを言わない、おおらかな爺様が大好きだった。
爺様と畑に植えた冬野菜の白菜と大根が食べ頃になる前に侯爵家に来たことが、今でも悔やまれてならない。
爺様は昔、“美し過ぎる子爵令息”として有名だったらしい。
妖精だの王子だの何だのと通り名があったらしいが、マリィ姉ちゃんは爺様のことを「どこが妖精なの?王子様なの?ただの農夫じゃん」って言っていた。
リリベルにしてみたら爺様は妖精ではないが、立派なイケ爺だった。
美し過ぎた過去は知らんが、今は日に焼け立派なマッチョで麦わら帽子が似合っている。婆様だって今の爺様の事を「これはこれで良き」って言ってたし。
それに爺様の作る野菜は育ちも早いし大きくて美味しい。
容姿は違うが間違いなく“妖精の手”を持っているとリリベルは思っている。
そしてリリベルはそんな爺様の手に憧れていた。
爺様は子爵家では、ぞんざいに扱われがちだったから、リリベルは余計に爺様の肩を持ちたかったのかもしれない。
なんせ父は母の次に婆様を大事にしてたからなとリリベルは回想する。
そんな事より「はーっ」とリリベルは溜め息を吐く。
今、自分は侯爵家の侍女達によって可愛いドレスを着せられている。そろそろ実家のクマの剥製に体当たりしたい!と思っているところに、侯爵夫人が「リリベルちゃん、準備できた?お茶会行きましょー」と声をかけてきた。
夫人は娘がまだ小さいので、年頃のリリベルがいるのが嬉しいらしく、よくお茶会や観劇などの貴族婦人の催し物に一緒に連れ出される。
本来、下位貴族の娘が高位貴族のお茶会など参加できるはずもないが、そこは兄や姉の七光りで、皆、リリベルのことも歓迎ムードで迎えてくれる。
「今日は庭師の所に逃げそびれたなぁ…」
とリリベルは仕方なく玄関に向かうのだった。




