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ボーイミーツガール発、修羅場経由、カオス行き

感想いただけたので更新頑張りますヾ(o゜ω゜o)ノ゛

「ぐぼぉっ」


 ワプルの口から呻き声が漏れる。

 奴はかなりの勢いを伴っていたので、相殺するには相応の衝撃が必要だった。

 多分ゴブリン程度であれば、正面からの攻撃なのに背骨を折り砕いていたに違いない。


「周りを見ないで駆け出すからだ。これを機に少しは反省しろ」


 事故を防ぐための最低限の力配分に留めたので、オレに謝罪する気は皆無である。

 それでも、Cランクで一流と言われる冒険者ですら、吐瀉物を盛大に撒き散らす程の威力だった筈だが、ちらっと見てみると大丈夫そうだ。しゃがみ込んではいるけど、骨を砕いた感触も伝わってこなかったしな。


 くっ、嫌に頑丈な奴め。

 今回は不可抗力だったので、ダメージがないのは歓迎すべき事だ。

 けれど、今後これに付き纏われる可能性を考えると憂鬱である。

 そんな感情を振り払い、被害者たる女性に声を掛けた。


「えっと、大丈夫お嬢さん。怪我はない?」


「はっ、はい! お陰さまで何一つ怪我はありませんっ」


 視線を女性に移すと、まず美麗な容姿と服装が目立っていた。

 艶やかな黒髪を後ろで結んでいて、それが絶妙に似合っているな。髪型の名称に聡くないので、ツインテールっぽい髪型としか分からないけど。

 ポーっとオレを見ていたようで、声を掛けてからハッとして佇まいを直している。


 流石に自身の脇をすり抜け、迫る巨体との激しい接触(コンタクト)をしたオレは、彼女に認識されているようだった。

 守った事も伝わっているみたいで、怪訝な顔を向けられなかった事に一先ず安心する。

 オレが一因とは言え、助けておいて変質者みたいに見られたくないからな。

 変質者は、そこでうずくまっている輩だけです。


「なら良かった。そこで転がってるの一応知り合いだからさ。迷惑掛けたね」


「いえ……とても良いものが見られましたので」


 一瞬、言葉の意味が理解できなかったが、恐らくはオレの動きを言っているのだろう。

 この子、端麗で深窓の令嬢のような見た目にそぐわず、中々の実力者のようだ。足運びで分かる。

 また、ステータスを見ずとも相当な魔力を持っている事も察せられた。

 どうやらフランとの修行の過程で、魔力の感知能力が深まったようである。


 そんな彼女も事故の回避には動けなかったようだ。

 歩いていたのが狭い道ではないからか、曲がり角から出てきた相手と衝突するような事態は、まったくの無警戒だったものな。

 オレが使った、歩法と体軸の回転を用いた体の割り入れ方が、勉強になったなら幸いだ。


「身を呈して庇ってくださったけれど、貴方様もお怪我などありませんか?」


「大丈夫大丈夫。これでも冒険者でね。パーティーの前衛はオレ一人だから、鍛えているし体は頑丈な方なんだ。……君に怪我がなくて安心したよ」


 そう言ってニカッと笑う。

 いやー、変態との付き合い方が原因で、女性に怪我を負わせちゃうなんて展開にならなくて、ひたすら安堵ですよ。


「はうっ」


 途端、対面から謎の声が漏れたけど、どうかしたか?


「さて、連れも追い付いてきたし、そろそろ行くとするかな」


「えっ、もう行ってしまうのですか……?」


 フランが歩いてきたので、宿に戻ろうと思ったのだが、彼女に呼び止められた。

 そそくさと去ろうとしたのは、一応理由があるんだけど、どうしたものか。


 彼女の特徴は、僅かにオレに警戒心を抱かせたのだ。

 なんせ、この世界で初めて見た黒髪だ。


 一瞬、黒髪黒目の転生者かと疑ったが、目の色は奇麗なコバルトブルーだった。人形のような瞳とでも表現しようか。

 まぁ、服装も着物に似たものだし、警戒しておくに越した事はないけれど。

 仮に転生した存在であったとしても、日本人とは限らない訳だし。


(しかし、綺麗な子だなぁ)


 見た目はフランより少し大人びているが、それは姿勢や物腰のせいだろう。

 後は口許にあてがう扇子だ。オレが(フラン)にプレゼントしたものよりも、雅な感じ――どことなく京扇子っぽい雰囲気だろうか――で、彼女の大和撫子然とした雰囲気に明確にマッチしていた。


 彼女も貴族としての立ち姿などは仕込まれているが、カーテシーなどを普段から行う訳もなく、必然馬車での移動を主とした生活では、貴族らしさを醸し出す場所に欠ける訳だ。


「アイズ、大丈夫だったんですの?」


「おぉ、フラン。特に変な事態にならなかったぞ」


 フランが、変態巨漢に尻込みしかけたオレを励ましてくれたお陰である。

 あれがなければ、距離が開きすぎていて、正直間に合わなかったかもしれない。


 そんな事を思考していたオレの前で、二人が対峙する。

 そして、変な空気になっていた。あれ、何故こんな雰囲気に?


「あら……貴女はこの殿方のパーティーメンバー、でしょうか」


「……えぇ。アイズの妻の(・・)フランチェスカ・キャンベルと申しますわ」


 一部を強調した口調だった。


「つっ、それはそれはご丁寧に」


 言葉の先制パンチを受けたかのように、黒髪美少女がこめかみに力を入れる。

 そして、わざわざ体の向きをオレ寄りにしてからこう言い放った。


「その身を盾にして護っていただいたのに、名乗りが遅れて申し訳ありません。わたしはメロディー・スターシアです。気軽にメロディとお呼びください。どうぞ以後お見知りおきを」


「そんな機会はありませんわ」


 ボソッとフランが呟いた。

 ねぇ、何この空気。オレ鈍感系主人公じゃないから、なんか居たたまれない場になっていく事をひしひしと感じるんだけど?

 オレの発言を訂正するかのように、徐々に変な事態になってるんだけど?


 また、視界の端ではワプルが復活していた。

 奴自身はどうでも良いが、聞き捨てられない独り言を抜かしている。


「げほっげほ。凄まじい衝撃、駆け抜ける甘く痺れる感覚……こんなの初めて味わうよぉ。まさかこれが――恋?」


 違うから。それは確実に違うから変な考えを持つな、こんの巨漢野郎が! 漢と野郎で意味が被っていても知った事かっ。

 ホントこれカオス空間形成され過ぎじゃないだろうか。

 そう思ったが、まだ序の口だったようだ。


「ってワプル? 何故此処にいるのです」


「おぉ、メロディお嬢。この街に流れて居たんですねェ。こりゃ驚きったい」


 そんな会話が目の前でなされる。いや、多分オレの方が驚いてるよ?

 君たち知り合いだったの?! って意味で。

 世間は国を越えても狭いんだな……。


 あと、お願いメロディさん。

 ――知り合いなら、そいつ引き取って。

本来プロットには影も形もなかったワプル。

一度途中まで書き上げた三章の矛盾を、解消するためになんとなくクリエイトしたキャラがライバル令嬢を食っていく……(´・ω・`)

まぁ、メロディさんの活躍はここからなので!


エルミアとナルヴィクのステータスですが、ワプルとメロディのステータスを出せそうな段階で纏めて更新する事にしました。

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