表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/210

帰還と邂逅

四千文字越えたので、普段より少しは多め(*つ´・∀・)つ

「さて、残りの材料は他の冒険者から買い取れるし、そろそろ戻……」

「アイズ君、上!」


 エルミアの声が聞こえた瞬間、オレの察知能力も危険を感知した。


 ――左後ろから、風を切る音がする!


「っぉぉ!?」


 間一髪、掲げたアイシィーズ(グラス)ごと、お辞儀をするかのように攻撃を回避。

 目の前を通過した風の刃が微かに地面を抉る。


「危ねぇ……」


 オレの肉体には、直撃してもそこまで大きなダメージはない程度の威力だ。

 しかし、手に持つ草は相応の強度である。

 くそっ、気分は卵を抱えて拠点への格納を目指すハンターだな。あの立場って絶妙にイライラすると思うんだが!


「ったく、オレの察知を掻い潜るたぁどんな相手だ。――って遠っ! 角度的にあの蛇野郎が下手人に間違いないが……」


 見た目は隠密に優れるだけのアサシンスネイク。

 ただ、離れた位置から風魔法で狙ってきたって事は――


「こいつ、上位種だよ! しかも……」

「あぁ、亜種だな」


 アンデル周辺よりも魔物の危険度が高いこの霊山。

 他より環境が特殊な事もあり、見慣れた魔物も変な進化を遂げているようだ。

 霊山の奥地にもなると、その特徴が顕著だな。


「だが所詮、初見殺しだ、ろっ!」


 射線が通っているという事は、こちらの接近も木々が邪魔しないという事だ。

 左右に立ち並ぶ樹木を足場にして急速接近、一刀の下で首を落とす。一丁上がりだ。


「一撃で仕留められなければ、あの手の能力は効果が薄いんですのね」


「そゆこと。エルミア、持っててくれてサンキュ」


「いえいえー。でも、無言で放り投げるのはやめてね?」


 すまんすまん。そう謝ってアイシィーズ草を受け取る。

 だが、そんな事をしている間に、気配が一つ二つと近寄ってきていた。


「追加のお客さんだな。……え、多くない?」


「違う種類の魔物なのに、足並み揃えて襲ってこようとしているように見えますわ」


 道中に出くわした数と同数くらいが、一気に寄ってきてるんだけど!?

 しかも、ただ遭遇した程度の敵意じゃ無いぞ。


「なぁエルミア。こいつら、殺してでも奪い取る! って言わんばかりのオーラが出てんの、気のせい?」


「気のせいじゃないねー。多分だけど、聞いてた大きさより何倍も大きいその草が原因じゃないかな」


 やっぱり? 魔物たちの視線、確実にオレの手元に吸い込まれてる気がしたんだよね。

 ゲームだとこうゆう展開たまに見るけど、今回の理由が分からんぞ。


「アイシィーズ草が? マールさんはそんな事言っておりませんでしたけど……」


「いやー、もっと浅いところにあるって話だったからねー。さっきのアサシンスネイクみたいに、特性が追加されてるんじゃないかな。環境が変わると植生も変わるし」


 森の植生に詳しいエルフらしい意見。

 その中身をフランが理解した瞬間、彼女の顔が一瞬で蒼白になる。


「それって……薬の材料にならなかったりするのではなくて?!」


「魔物がより蔓延る地帯での処世術的進化だろうし、大丈夫だとは思うけど……」

「来るぞっ!」


 そんな会話をしている内に、数が集まったからか魔物たちが襲ってくる。

 先頭をステップを用いて撫で斬りにし、雷魔法で迎撃する。

 片腕が塞がっているので、体重を掛けられない。火魔法もオレのコントロールじゃ、確実に山火事になる。討伐手段が限られるな、ど畜生。


「メルヴィナの病状は一刻を争うって訳じゃないんだし、最悪また浅いところで採取すりゃ良いさ。そこそこ貴重みたいだから、今手元にあるこいつを諦める気は微塵も無いが」


 先頭を瞬時に屠ったので、各個体のスピードの差で後続の位置にバラツキが生まれた。

 この間隙を縫って活路を開くぜ。


「パラライズ・リンクッ」


 電気が魔物の体を繋げ、痺れさせていく。

 高威力なものを木に当ててしまうと、火魔法と同じく山火事の原因になりかねない。

 威力を絞ったものを、的確に敵の体に命中させないといけなかった。


「ガンシューティングは嫌いじゃないが、蔓延りすぎなんだよ。もちっとコンパクトに纏めろやっ」


 耐性がありそうな奴と、電線を避けた奴だけを剣で倒していく。

 しかし、剣の鍔に魔法を溜めておけるから、かなり戦略に幅が拡がったな。

 ドラゴンとミスリル、そしてドワーフ様々だぜ。


「ガトリングバレット! ウインドスイープッ。道が拓けましたわっ、行きましょう!」


 フランが土魔法で作った複数の岩礫。

 それらを小さな魔物群にぶつけ、追撃の風魔法で薙ぎ払った。

 オレが前方に作った空白地帯が、直線上に拡がる。

 そして始まる逃走劇……なのだが。


「ねぇなんで? なんでこいつらオレの髪を執拗に狙ってくる訳? このフサフサヘアーを、ガラッとハゲにするつもりか!」

「そうなったら、戻るまで口を利いてあげませんわよ! 頑張って避けなさいな」


 フランの叱責が飛ぶ。


 オレが抱える巨大な草が大事だからか、大抵はオレを目掛けた攻撃になる。

 強化された脚部は、こいつら程度の攻撃じゃさして動きが阻害されない。そもそも当たらないし。

 そして胴体付近には、お目当てのブツがあった。

 冷静に考えれば、多少の知恵がある魔物が、頭部や首を狙ってくるのは自明の理である。

 狙われた方は、堪ったもんじゃないけど。


 ――ブォォン!


「ぐおっ!?」


 樹齢数百年でも足りないくらいの巨木から、猿型の魔物が急降下攻撃を放ってきた。

 超速度でも、音と空気の流れから襲撃は予想できる。事実何匹かの襲撃は躱せた。

 けれど、枝を用いて巧妙且つ流動的な動きを見せた統率個体により、一撃被弾してしまった。


「こいつ、尻尾を絡めてきやがるっ」


 無駄に長い手を回避して安心した瞬間、シュルシュルと肩口に尻尾が巻き付いてきた。

 くそ、体勢が悪すぎるぞ。


「離せよ、草が破けちゃうだろうが!」


 一本背負いの要領で、絡みついてきた手長猿を木にぶつける。

 短剣に切り替えたエルミアがトドメを刺して、どうにか体から外れていった。


「だぁもう、この草が邪魔だっ!」

「……ねぇ、アイズ」


 イマイチ思い通りにいかず苛立ちがこもったオレの咆哮に、思案気な仕草を見せるフランが反応した。


「アイシィーズ草は、刈られた今も魔力を放っておりますわ。けれど、生き物ではないのだし、アイテム袋に入れられるのではないかしら?」

「あ」


 気が抜けた事で疲労が虚脱感に変わる。

 襲い来る羞恥と怒りも手伝い、オレはワナワナと震えた。


「おーけー。両手が解放されて気分も開放的になったオレの――蹂躙の時間だ」


 その後は、獣と化したオレが周囲を狩り尽くし、怯えた魔物たちが人間に近寄らなくなるまで追撃を続けた。

 身体能力強化(フィジカルブースト)を限界以上に漲らせた攻勢により、断末魔が絶えず鳴り響いたのは言うまでも無い。久し振りに筋肉痛になったぜ。


 ……え、それって無双じゃないか?

 いや、八つ当たり的に暴れただけだから、あんなん無双じゃねぇよ。


 また、今回のゲーム染みたギミックの背景だが。

 後で聞いた話だと、アイシィーズ草の内部の魔力密度がかなり上昇していたそうだ。

 蟲系の魔物は、葉を食べればより強くなれる。その蟲を食べる魔物も寄ってくる。

 そして、放出される緩やかな冷気が動物系の魔物には居心地が良い。その周囲は魔物たちにとって、体内に魔力を取り込みやすくもある。

 持っていかれる事を察知した魔物たちの阻止は、地面から抜けた事でより放出量が上がった魔力に後押しされ、更に加熱する。

 そんなモテモテ草に進化を遂げていたようだった。

 生存戦略なのだろうが、はた迷惑な……



 ◇◆◇◆◇



 どうにか無事に素材を傷付けず帰参し、数日。

 幼女薬師マールの調合した薬によって、おっとり僧侶メルヴィナの初期症状は無事収まった。


「魔法だけじゃどうにもらならない事もあるし、やっぱり薬の常備は必要だねー」


 魔法が使えないからこそなのか、しみじみと言葉にするエルミア。

 全員が同意を示す中、オレは考え事をしていた。


(どんな事態にも対応できる薬なんて、ゲームじゃないんだから無理だ。やっぱり旅に信頼のおける薬の仕入れ先は欲しいところだ)


 そこまで考えて、オレがリクエストした継続回復(リジェネ)ポーションを作成中のマールに視線を向ける。

 元々この工房に蓄えられていた分だけでは、作れなかった逸品である。

 幸か不幸か、アイシィーズ草の使用しなかった部分で、魔力放出の元になっていたところが最後のピースだったらしい。魔草(マジックグラス)(しずく)とか言ったっけ。

 その他オレが乱雑に擂り潰した魔物の中にも、受け取った薬の素材になった奴らは一杯いる。

 人生、何がどう転ぶか分からないもんだ。


(マールって、ああ見えて戦えるんだよな。しかも、世話になった師匠を蝕んだ病気の根絶が目標なんて、こんな健気な子 1パーティーに1人欲しいくらいだ。かといって、こんな小さい女の子を旅に連れて行く訳にもいかないしなー)


「どうかしましたの? アイズ」


 フランが少し心配そうに覗き込んでくる。

 うん、取り敢えず内心で留めておこう。

 最近はエルミアと親しげ(?)な会話をする度に、何か言いたげな雰囲気を感じるし。

 大丈夫と返事を返してから、ポーション作りを終えたらしきマールに向き直る。


「色々とありがとな」


「いえいえ、こちらこそぉ」


 差し出された手を握り、パーティー全員で別れを告げる。


「これからも、機会があれば贔屓にするよ」


「はいぃ、今後もよろしくですねぇ」


 旅の目的上、頻繁には来れない。

 オレたちが旅を重ねるように、彼女もまた研鑽を積み、更に凄い薬を作れるようになるだろう。

 その頃に再び訪れて、互いの成長を見せれたら良いな、と思った。



 ◇◆◇◆◇



 馬車と馬を預け、街並みに目を向けながら伸びをする。


「ようやく戻ってこれたな、エルーダに」

「特に用事らしき用事も無いけど、マールちゃんに薬の運搬頼まれちゃったしねー」


 オレたちには、実力もそうだがアイテム袋と馬車がある。

 多量の安全な輸送を考えれば、オレたち以上の適任はいないだろう。


「何か手頃な依頼が入っていると良いですね、アイザック君」

「おいおい、街に入ったばかりだぞ?」


 思わず苦笑を返す。

 療養で大人しくしてたからか、メルヴィナは幾分乗り気のようだ。


「……む?」


 雑談が耳に留まったのか、道を行く一人の冒険者が振り返った。

 オレたちを見て、複数の女性連れ、輝く銀髪……などと口走る。


「貴殿が傲岸不遜の冒険者、アイザック・フェイロンか?」


 いや、なんやねんその謎の二つ名。

最近よくやるミス。

アプリで書く→文字数カウントアプリにコピペ→何故かそこで誤字チェック→元の文をなろうに投稿ヾ(o゜ω゜o)ノ゛

何が言いたいかと言うと、誤字報告ありがとうございます……(*;д;)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ