帰還と邂逅
四千文字越えたので、普段より少しは多め(*つ´・∀・)つ
「さて、残りの材料は他の冒険者から買い取れるし、そろそろ戻……」
「アイズ君、上!」
エルミアの声が聞こえた瞬間、オレの察知能力も危険を感知した。
――左後ろから、風を切る音がする!
「っぉぉ!?」
間一髪、掲げたアイシィーズ草ごと、お辞儀をするかのように攻撃を回避。
目の前を通過した風の刃が微かに地面を抉る。
「危ねぇ……」
オレの肉体には、直撃してもそこまで大きなダメージはない程度の威力だ。
しかし、手に持つ草は相応の強度である。
くそっ、気分は卵を抱えて拠点への格納を目指すハンターだな。あの立場って絶妙にイライラすると思うんだが!
「ったく、オレの察知を掻い潜るたぁどんな相手だ。――って遠っ! 角度的にあの蛇野郎が下手人に間違いないが……」
見た目は隠密に優れるだけのアサシンスネイク。
ただ、離れた位置から風魔法で狙ってきたって事は――
「こいつ、上位種だよ! しかも……」
「あぁ、亜種だな」
アンデル周辺よりも魔物の危険度が高いこの霊山。
他より環境が特殊な事もあり、見慣れた魔物も変な進化を遂げているようだ。
霊山の奥地にもなると、その特徴が顕著だな。
「だが所詮、初見殺しだ、ろっ!」
射線が通っているという事は、こちらの接近も木々が邪魔しないという事だ。
左右に立ち並ぶ樹木を足場にして急速接近、一刀の下で首を落とす。一丁上がりだ。
「一撃で仕留められなければ、あの手の能力は効果が薄いんですのね」
「そゆこと。エルミア、持っててくれてサンキュ」
「いえいえー。でも、無言で放り投げるのはやめてね?」
すまんすまん。そう謝ってアイシィーズ草を受け取る。
だが、そんな事をしている間に、気配が一つ二つと近寄ってきていた。
「追加のお客さんだな。……え、多くない?」
「違う種類の魔物なのに、足並み揃えて襲ってこようとしているように見えますわ」
道中に出くわした数と同数くらいが、一気に寄ってきてるんだけど!?
しかも、ただ遭遇した程度の敵意じゃ無いぞ。
「なぁエルミア。こいつら、殺してでも奪い取る! って言わんばかりのオーラが出てんの、気のせい?」
「気のせいじゃないねー。多分だけど、聞いてた大きさより何倍も大きいその草が原因じゃないかな」
やっぱり? 魔物たちの視線、確実にオレの手元に吸い込まれてる気がしたんだよね。
ゲームだとこうゆう展開たまに見るけど、今回の理由が分からんぞ。
「アイシィーズ草が? マールさんはそんな事言っておりませんでしたけど……」
「いやー、もっと浅いところにあるって話だったからねー。さっきのアサシンスネイクみたいに、特性が追加されてるんじゃないかな。環境が変わると植生も変わるし」
森の植生に詳しいエルフらしい意見。
その中身をフランが理解した瞬間、彼女の顔が一瞬で蒼白になる。
「それって……薬の材料にならなかったりするのではなくて?!」
「魔物がより蔓延る地帯での処世術的進化だろうし、大丈夫だとは思うけど……」
「来るぞっ!」
そんな会話をしている内に、数が集まったからか魔物たちが襲ってくる。
先頭をステップを用いて撫で斬りにし、雷魔法で迎撃する。
片腕が塞がっているので、体重を掛けられない。火魔法もオレのコントロールじゃ、確実に山火事になる。討伐手段が限られるな、ど畜生。
「メルヴィナの病状は一刻を争うって訳じゃないんだし、最悪また浅いところで採取すりゃ良いさ。そこそこ貴重みたいだから、今手元にあるこいつを諦める気は微塵も無いが」
先頭を瞬時に屠ったので、各個体のスピードの差で後続の位置にバラツキが生まれた。
この間隙を縫って活路を開くぜ。
「パラライズ・リンクッ」
電気が魔物の体を繋げ、痺れさせていく。
高威力なものを木に当ててしまうと、火魔法と同じく山火事の原因になりかねない。
威力を絞ったものを、的確に敵の体に命中させないといけなかった。
「ガンシューティングは嫌いじゃないが、蔓延りすぎなんだよ。もちっとコンパクトに纏めろやっ」
耐性がありそうな奴と、電線を避けた奴だけを剣で倒していく。
しかし、剣の鍔に魔法を溜めておけるから、かなり戦略に幅が拡がったな。
ドラゴンとミスリル、そしてドワーフ様々だぜ。
「ガトリングバレット! ウインドスイープッ。道が拓けましたわっ、行きましょう!」
フランが土魔法で作った複数の岩礫。
それらを小さな魔物群にぶつけ、追撃の風魔法で薙ぎ払った。
オレが前方に作った空白地帯が、直線上に拡がる。
そして始まる逃走劇……なのだが。
「ねぇなんで? なんでこいつらオレの髪を執拗に狙ってくる訳? このフサフサヘアーを、ガラッとハゲにするつもりか!」
「そうなったら、戻るまで口を利いてあげませんわよ! 頑張って避けなさいな」
フランの叱責が飛ぶ。
オレが抱える巨大な草が大事だからか、大抵はオレを目掛けた攻撃になる。
強化された脚部は、こいつら程度の攻撃じゃさして動きが阻害されない。そもそも当たらないし。
そして胴体付近には、お目当てのブツがあった。
冷静に考えれば、多少の知恵がある魔物が、頭部や首を狙ってくるのは自明の理である。
狙われた方は、堪ったもんじゃないけど。
――ブォォン!
「ぐおっ!?」
樹齢数百年でも足りないくらいの巨木から、猿型の魔物が急降下攻撃を放ってきた。
超速度でも、音と空気の流れから襲撃は予想できる。事実何匹かの襲撃は躱せた。
けれど、枝を用いて巧妙且つ流動的な動きを見せた統率個体により、一撃被弾してしまった。
「こいつ、尻尾を絡めてきやがるっ」
無駄に長い手を回避して安心した瞬間、シュルシュルと肩口に尻尾が巻き付いてきた。
くそ、体勢が悪すぎるぞ。
「離せよ、草が破けちゃうだろうが!」
一本背負いの要領で、絡みついてきた手長猿を木にぶつける。
短剣に切り替えたエルミアがトドメを刺して、どうにか体から外れていった。
「だぁもう、この草が邪魔だっ!」
「……ねぇ、アイズ」
イマイチ思い通りにいかず苛立ちがこもったオレの咆哮に、思案気な仕草を見せるフランが反応した。
「アイシィーズ草は、刈られた今も魔力を放っておりますわ。けれど、生き物ではないのだし、アイテム袋に入れられるのではないかしら?」
「あ」
気が抜けた事で疲労が虚脱感に変わる。
襲い来る羞恥と怒りも手伝い、オレはワナワナと震えた。
「おーけー。両手が解放されて気分も開放的になったオレの――蹂躙の時間だ」
その後は、獣と化したオレが周囲を狩り尽くし、怯えた魔物たちが人間に近寄らなくなるまで追撃を続けた。
身体能力強化を限界以上に漲らせた攻勢により、断末魔が絶えず鳴り響いたのは言うまでも無い。久し振りに筋肉痛になったぜ。
……え、それって無双じゃないか?
いや、八つ当たり的に暴れただけだから、あんなん無双じゃねぇよ。
また、今回のゲーム染みたギミックの背景だが。
後で聞いた話だと、アイシィーズ草の内部の魔力密度がかなり上昇していたそうだ。
蟲系の魔物は、葉を食べればより強くなれる。その蟲を食べる魔物も寄ってくる。
そして、放出される緩やかな冷気が動物系の魔物には居心地が良い。その周囲は魔物たちにとって、体内に魔力を取り込みやすくもある。
持っていかれる事を察知した魔物たちの阻止は、地面から抜けた事でより放出量が上がった魔力に後押しされ、更に加熱する。
そんなモテモテ草に進化を遂げていたようだった。
生存戦略なのだろうが、はた迷惑な……
◇◆◇◆◇
どうにか無事に素材を傷付けず帰参し、数日。
幼女薬師マールの調合した薬によって、おっとり僧侶メルヴィナの初期症状は無事収まった。
「魔法だけじゃどうにもらならない事もあるし、やっぱり薬の常備は必要だねー」
魔法が使えないからこそなのか、しみじみと言葉にするエルミア。
全員が同意を示す中、オレは考え事をしていた。
(どんな事態にも対応できる薬なんて、ゲームじゃないんだから無理だ。やっぱり旅に信頼のおける薬の仕入れ先は欲しいところだ)
そこまで考えて、オレがリクエストした継続回復ポーションを作成中のマールに視線を向ける。
元々この工房に蓄えられていた分だけでは、作れなかった逸品である。
幸か不幸か、アイシィーズ草の使用しなかった部分で、魔力放出の元になっていたところが最後のピースだったらしい。魔草の雫とか言ったっけ。
その他オレが乱雑に擂り潰した魔物の中にも、受け取った薬の素材になった奴らは一杯いる。
人生、何がどう転ぶか分からないもんだ。
(マールって、ああ見えて戦えるんだよな。しかも、世話になった師匠を蝕んだ病気の根絶が目標なんて、こんな健気な子 1パーティーに1人欲しいくらいだ。かといって、こんな小さい女の子を旅に連れて行く訳にもいかないしなー)
「どうかしましたの? アイズ」
フランが少し心配そうに覗き込んでくる。
うん、取り敢えず内心で留めておこう。
最近はエルミアと親しげ(?)な会話をする度に、何か言いたげな雰囲気を感じるし。
大丈夫と返事を返してから、ポーション作りを終えたらしきマールに向き直る。
「色々とありがとな」
「いえいえ、こちらこそぉ」
差し出された手を握り、パーティー全員で別れを告げる。
「これからも、機会があれば贔屓にするよ」
「はいぃ、今後もよろしくですねぇ」
旅の目的上、頻繁には来れない。
オレたちが旅を重ねるように、彼女もまた研鑽を積み、更に凄い薬を作れるようになるだろう。
その頃に再び訪れて、互いの成長を見せれたら良いな、と思った。
◇◆◇◆◇
馬車と馬を預け、街並みに目を向けながら伸びをする。
「ようやく戻ってこれたな、エルーダに」
「特に用事らしき用事も無いけど、マールちゃんに薬の運搬頼まれちゃったしねー」
オレたちには、実力もそうだがアイテム袋と馬車がある。
多量の安全な輸送を考えれば、オレたち以上の適任はいないだろう。
「何か手頃な依頼が入っていると良いですね、アイザック君」
「おいおい、街に入ったばかりだぞ?」
思わず苦笑を返す。
療養で大人しくしてたからか、メルヴィナは幾分乗り気のようだ。
「……む?」
雑談が耳に留まったのか、道を行く一人の冒険者が振り返った。
オレたちを見て、複数の女性連れ、輝く銀髪……などと口走る。
「貴殿が傲岸不遜の冒険者、アイザック・フェイロンか?」
いや、なんやねんその謎の二つ名。
最近よくやるミス。
アプリで書く→文字数カウントアプリにコピペ→何故かそこで誤字チェック→元の文をなろうに投稿ヾ(o゜ω゜o)ノ゛
何が言いたいかと言うと、誤字報告ありがとうございます……(*;д;)ノ




