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死病を断つ

四日連続更新一日目~ヾ(o゜ω゜o)ノ゛


前話のあらすじ。

嫁の不調は黙って見抜く。それがデキる夫。

あと、幼女の手により目の前で絶えず変形する男子の夢(おっぱい)


これだから男って……みたいな風にした方が良いかとも思いましたが、彼の「らしい」反応が私にはイメージ出来なかった上、直前に良い旦那ムーブかましてたので自重しました。

「ん? 留守にしてるのか」


 翌日の昼食後に再度来て欲しいと言われたオレたちは、少し早めの時間に足を運んだ。この村の中では、時間を潰せるものも特に無かったので。

 しかし、入り口のドアノブには小さな木板が下げられている。


「なになに、素材採取に出掛けています。お昼前には戻る予定です、かぁ」


 エルミアが二つの木板を読み上げた。

 その端には、チョークのような粉で方角を示す文字が覆われている。


「北東、か」


 村の北側に広がる霊山。

 北東であれば山の麓から少し離れた位置に居るのだろう。


「どうせ霊山の下見はする予定だったし、少し見に行こう。フランは宿でメルヴィナと待っていてくれ」


 今が時間的には昼前である事を考慮すれば、少し遅い。何かあっても困るし、探しに行く方が良いか。

 山に分け入っていかなければ、有事の際もオレ一人居れば十分である。

 病み上がりのフランと魔花粉の影響を受けかねないメルヴィナは、宿で休ませる事にした。


「え、アイズ……何故、彼女と二人で?」


 フランが少しだけ驚いたように問うてくる。

 ……何か変な事を言っただろうか。

 先程の所見を伝えると、少しだけ渋る様子を見せたが納得してくれた。


「あらあら。アイザック君、後でお勉強が必要かもしれませんね」


「さよか」


 何故に? と思わなくもない。

 だがおっとりしているとは言え、年上のお姉さんからの諫言である。

 甘んじて受ける事にして、今は薬師の元に向かった。




「もぉ、しつこいですよぉ」


 魔物避けのお香が、視界の先で焚かれる中。

 強化された聴覚により、そんな呟きが漏れ聞こえた。


「あんまり使いたくはなかったですがぁ、仕方ありませんー」


 そう言って小さな薬師は、試験管のような容器を構える。

 その中身は見た目からして、明らかな劇薬である事が窺えた。

 素材採取に護衛も付けずに幼女が出向かう。一見すると思慮が足りない行為だ。

 だが、彼女の実年齢はもっと高いし、その姿からは想像も出来ない程度に自衛の心得もあるのだろう。


「エルミア、頼む」


「おっけー。でも奥のデカいのは一撃じゃ無理かな」


 そいつは足止めだけでいい。そう言い残してオレの体は加速する。


「はっ!」


 後方から呼気が一度発せられ、射出された三本(・・)の矢が蛙の魔物を貫いた。

 小さめな個体が纏めて屠られ、親らしき巨体を携えた大蛙の意識がこちらに向く。


「その薬は投げなくて良いぜ」


 前方で事態の把握に努める小さな女の子に言葉を投げ掛ける。と、同時に大きめの石を蛙に向かって投擲。

 もはや定番の陽動である。


 ――タタンッ!


 それに反応した魔物にエルミアの射った矢が刺さった。


「グロルァ!?」


 驚いてはいるが、速射を意識した矢はそれほど威力がない。

 ただ、着弾した場所は関節だ。軽妙に動きを阻害している。


「完璧だ」


 狩りをするに辺り、彼女との相性が良すぎる。

 勿論、今更図体だけのこんな魔物に遅れはとらないが、より安全で確実なのだ。サポートが不要とはならないだろう。


「出オチで悪いが、恨んでくれるな――」


 オレは、僅かに初動が鈍った大蛙の口内に剣を突き入れた。

 この蛙は表皮に滑りがあり、大抵の魔法を弾く。

 それでいて斬撃も効き辛いという魔法剣士泣かせの存在だ。

 唯一剣で有効なのは刺突だが、元々痛覚の鈍い魔物の上位種であるため、余程ピンポイントで貫かなければ効果は薄い。三メートルは優に越える巨体だからな。


「――解放(リリース)


 まぁ、全て体の外の話である。

 一拍の間も置かず、愛剣デュランに施した火焔が解き放たれた。


「うわぁ、体突き抜けてるねー」


 エルミアが観測手のようなポーズを取りながら能天気にそう言った。

 その横で、薬師マールは口を開けて唖然としている。

 先程の蛙は、多分普通のCランクパーティーと同等以上の力があったと思う。

 そんな存在が一撃で倒されて驚いてるかのもしれない。


「大丈夫か?」


「も……」


 オレの掛けた言葉は見事にスルーされた。

 その視線は傾いでいく大蛙の頭部辺りを見ている。

 まぁ、オレが殆ど消し飛ばしたんだけど。


「もったいないですぅー!!」


 初めて聴いた幼女(マール)の大声は、素材を惜しむ慟哭だった。



 ◇◆◇◆◇



「はっ? メルヴィナが大病を患っている?」


「そう思われる、ですけどねぇ」


 工房に帰ってくるなり伝えられたその突拍子もない発言に、オレはすっとんきょうな声を上げていた。

 フランとエルミアもポカンとしている。


 ただ、メルヴィナだけは何か心当たりがあるのか、俯き気味だった。

 そう言えば、宿から工房まで歩く間、彼女たちは何か話をしていた。人を治す二人だからこその対話かと持っていたが、あれは問診だったのか。


 実は昨日飲んでいただいたのは、予防薬じゃないんですよぉ。

 そんな事を宣うマール。


「あれ、とある病気のお薬なんですー」


 と言っても、症状緩和薬なんですどけねぇ。

 そう続く彼女の言葉に、目に見えてフランが気落ちする。

 進行すれば、確実に死ぬ病気だと言われたのが原因だろう。


 その薬は、罹患者が服用すると、寝起きに僅かな痛みを感じるようになる。

 麻痺していた臓器が正常に戻るからだそうだ。

 服用の翌日に痛みを感じてしまったメルヴィナは、ほぼ黒と言えるグレーな状態であった。


「どうにかならないんですの……?」


 藁にもすがるような涙目で、椅子に座る幼女を見る美少女。

 なんかオレとは感性が異なる人が見れば、百合百合しく感じそうな光景だな。

 そんな勘違いを生みかねない上目遣いに対し、マールは少しだけ哀愁を帯びた目で頭を撫でた。

 フランのクリーム色の髪がさらさらと流れる。


「あらあら?」


 メルヴィナが恋愛中の娘を見るような、生暖かい視線を向け始めた。

 いや君、自分が病人だって自覚あります? さっき俯いてたのは何だったんや!

 そんな謎の空気を壊す意図も持って、口を開こうとしていたマールを言葉により制する。


「待ってくれ。君は信頼できる薬師だとは思う。けど、だからこそ先に聞いておこうか」


「はいぃ。多分予想できるので、えんりょなくどぉぞー」


 間髪入れずに返事が飛んでくる。

 彼女は見た目以上に聡明だ。自分の発言がどう思われるか、客観的な視点で理解しているようだ。

 じゃなきゃこの年で凄腕薬師なんてやれないだろうが、天才はどこか抜けてる事も多いから、確認は一応しておくか。


「なんで、昨日一目見ただけでそこまで分かる? 魔花粉のように地域的な物でもなければ、先日君は自分を医者ではないと言った。だのに、何故すぐに看破できたんだ?」


「わたしのししょーがその病にかかっていたから、ですねぇ」


 ……成る程。話に筋は通っている。

 そして、彼女が何故、こんな若さで一人立ちしているのか。腕が良く、大人びているのか。

 その背景(バックグラウンド)を示唆する中身だろうと予想が着いた。

 あんまり幸せな話にはなりそうにない。


「そのお師匠様は……?」


 オレは、会話に潜む地雷を警戒して躊躇してしまった。

 話を掘り下げたオレが、話をリードするべき場面だったのに。

 その師匠なら治せるのでは。そう思ったらしきエルミアの質問に、彼女は首を振った。


「その(やまい)のかいめーを目指し、願いかなわず天に旅立ちました」

「ッ! ごめっ」


 特徴的な間延びした口調が、真剣味を帯びる事で落ち着きが足される。

 彼女の声のトーンなどにより、エルミアは言葉以上にやらかした事を悟っていた。

 マール自身がそんな彼女に浮かべる表情は、時間が風化させた痛みを思い出す、一種の郷愁のようなものを感じさせている。


「……お気になさらず~。ただ、その時の研究があるので――」

「め、メルは死んじゃうんですの!?」


 呆然自失の体で固まっていたフランが、急に再起動した。

 その指先は震えており、死という存在を身近に感じた者だけが纏う畏れを如実に表している。


「気持ちは分かるが、落ち着け。まだマールの話は続きがあるぞ?」

「で、でも、メルが助からないかもしれないんですのよ!」


 ちらっとオレが視線を向けると、小さな薬師は僅かに頷きを見せる。


「いえ。ししょーほど進行してたらムリですがぁ、今なら治せますよぉ」

「本当に? 嘘じゃありませんのね?!」


 元々接近していた二人だったが、感極まったフランによりマールの肩が激しく揺さぶられる。

 待て、流石に絵面も酷いし、餅つけ。違った、落ち着け。


「く、くるしっ……」

「あ、ごめんあそばせ。気が動転してしまいましたわ」


 オレが止めに入るまで、魔物食で見た目よりは強化された腕力が、幼女の三半規管を揺さぶっていた。

筆が乗車拒否を起こして三日空きました。すまぬ。

最低でも四日連続で更新するので許してくだせぇ(*つ´・∀・)つやるぜー

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