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そのエルフ、風雲急で魅せる

今回のサブタイ、雰囲気だけで付けたのでハッキリ言って意味が通ってないです。

まぁ、『風雲急を告げ、己が魅せる』の略という事で何卒(*つ´・∀・)つ

「まーだ、着いてきてやがる」


 オレは馬車の上から森林地帯を眺めてそう言った。

 街道から少し離れたところに見える木々の隙間からは、時折樹上を駆ける人影が見える。

 誰あろう、腹ぺこエルフ、エルミアであった。


「アイズ、折角出会えたエルフですのよ? そう邪険にしなくても良いのではないかしら」


 心優しいフランが遠慮がちにそう溢す。

 だが、先程とは打って変わって厳しい態度を見せる女性が一人。


「お嬢様、お気持ちは分かりますが、施すばかりでは駄目ですよ。彼女は対価を払いましたが、私たちには髪留めはこれ以上要りませんからね」


 あの後オレたちは、エルフ手製の髪留めをもう一つ追加で貰った。

 若干赤字だが、これで飯代はチャラとしても良い。

 ただ、女性陣は二人だし、男女バランス的に次の仲間は男が望ましいからな。

 ぶっちゃけ、三つ目は不要なのである。


 つまり、もう彼女に飯を施す義理がオレたちにはない。


「むぅ……頭では分かっているのですが……」


 ままなりませんわ。そう言って頭を振るフラン。


「これも旅の縁ってやつだ。縁があれば、あいつの追跡(ストーキング)が終わってもどっかで会えるさ」


「……そうですわねっ」


 おためごかしめいたオレの意見でも、純粋なフランは納得してくれたようだ。


 そうして街道を進み、辺りに夕焼けが差し込み始めようかという時分。

 分かれ道を曲がって暫くしたところで、ようやく目的地に辿り着けたようだった。


「畑が見えてきましたわね」

「遠くに見えるのは柵でしょうか」


 本日目指していた、獣人が住まうウコロフ村……の、所有する農地である。

 動物の身体的特徴を色濃く残す彼らの村は、閉鎖的なところが多い。

 ウコロフ村はキャンベル領からギリギリ外れるため、キャンベル家も特に交流がなかった。


 なので、本来はもっと早く着き、交流の交渉をする予定だった。

 もちろん、交渉が決裂した時は先を進んで、適当なところで野宿する。

 しかし、エルミアとのやり取りや二度に渡る調理ですっかり遅れてしまった。


「んー、微妙な時間に押し掛けた招かざる客人……大丈夫かねー」


 オレが交渉自体に頭を悩ませていると、未だに森を駆けていた存在が急速に近寄ってきた。


「なんだ……?」


 視界の先で、街道脇の草原に飛び出したエルミア。

 彼女の表情は先程よりも深刻そうで、楽天的だった先程までの雰囲気はない。


「おにーさんたちぃ~! 大変だよっ。急がないとだからあたしも馬車乗せてぇ! 事情は何か摘まみながら話すからぁ!」


 ……あんまりない。


 遠くからの声掛けが間延びするのは仕方ないだろう。

 だが、何故急ぎの事態らしいのに軽食をねだってくるんだ、このアホの娘エルフは!




 馬車にエルミアを乗せて再出発をすると、彼女は宣言通り説明してくれた。


「んぐんぐ、森の木々がざわめいていてさ。遠くの音を拾ってみたら、君たちの目的の村? が襲われてるみたいなんだよね。もぐもぐ」


 フランが差し出した焼き菓子を頬張りながら。

 菓子を食べて美味しさに綻ばせる表情と、深刻そうな顔の行き来が激しい。正直、見ててイラッとするな。


「お前、この距離から騒動を感知できるのか?」


 オレの索敵範囲から遠く離れた距離も探れるとは……こっちは戦闘執事(セルバフ)仕込みだぞ。この女、どんな索敵能力してやがる。


「あー、あたしが分かるのは音だけだよ。気配とかは全然。道の先から、獣の足音が響いてきてるんだ」


 長い耳(エルフ)特有の聴覚って事か。


「つまり、魔物の大群が村を襲っている訳ですか?」

「そーそー」


 軽いなオイ。

 流石に畑を突っ切る訳も行かず、道なりに進んでいるとカーブした道は終着となった。

 やや高台気味の立地にある門が見え、その先に村が広範囲に広がっている。


「彼女の仰る通り、反対側から魔物が押し寄せてますわ!」


 予想より小規模だった魔物の軍勢は、しかし村の中にまで侵入していた。

 人族よりも比較的肉弾戦に強い獣人たちが、それに応戦している。

 ただ、多くの住人は普段戦闘など行わないのだろう。その戦いぶりは、ぎこちないものだった。


「くッ、建物付近にまで入り込んでやがる! 村人も近いし、纏めて倒せねぇ……」


 もう少し人や建物と距離が開いていれば、オレの雷魔法で蹴散らす事ができる。

 ただ、あそこまで接近していると、魔物だけを狙い撃つ事は不可能だ。

 投擲では距離がありすぎる。


「わたくしも、あそこまで広がられると流石に……」


 魔法のコントロールに優れたフランも、狙いを付けて放つならば一発ずつになってしまう。

 自身の回転率の悪さを自覚しているのだろう。彼女の顔色は悪い。

 今後の課題は、連続で放てる遠距離魔法だな。


「――それでもやらなくてはいけませんわ!」


 奮起の言葉と共に紡がれる詠唱。


「フラン。分かっているだろうけど、狙うのは浮いた魔物(やつ)だけだぞ」

「分かってますわ。自分の力の無さを恨むばかりでしてよ……!」


 魔法の到達までに双方が動けば、当然狙い通りの結果は生まれない。

 つまり、魔物と応戦する村人の動きを予想して攻撃する必要があるのだ。

 放った魔法が当たらないだけなら、まだ良い。

 読みを外せば、下手をすると獣人の命を刈り取ってしまう状況である。


 移動標的と守るべき命が揺れ動く戦場は、まだ彼女には早すぎた。


「くそっ、怪我人も既に出ているようだし、全員は救えない。けど、オレが掻き回すしかないか」


 停めた馬車から飛び降り、全速力で魔物たちの元へと飛び込もうとした、その時。


「んー、ここはあたしの出番だねっ! 任せてよ、おにーさん」


 妙に自信満々の女エルフが、背負い袋から口が広い、かなり大きめの矢筒を取り出す。

 え、なんで弓もないのに矢筒を……って矢筒の中から弓が出てきたァ?!


「おまっ、それアイテム袋か!」


「そだよ! あたしの里に伝わる矢筒なんだっ」


 やっぱりか。

 合理的と言えば合理的だけど、だからって矢筒に弓そのものを入れるか、普通!


「よし、風詠み(リーディング)完了。いっくよぉ~!」


 弓を取り出す前から上空を見据えていたエルミアが一本の矢をつがえ、目にも留まらぬ早さで射出する。

 その一矢が見事魔物の急所を貫いた。


「速い……ッ」


 オレの投擲ナイフすら、まったく比べ物にならない速さだ。


「まだまだ、あたしの独壇場は続くんだよっ、と」


 三度引いた弓は、標的が移動しているのにも関わらず、敵の行動を阻害する箇所に着弾する。

 オレも移動標的の狙い付けは得意な方だが、それでもここまで百発百中ではない。

 しかも、彼女の矢はただ当たるだけでなく、最も効果的なポイントに命中していた。


「んっ、殲滅スピード上げないとかな」


 そう呟いた彼女は、六射目から複数の矢をつがえている。

 放たれた矢は、距離があまり離れていない魔物たちを同時に屠っていった。

 創作物以外でこんな行為初めて目の当たりにしたぞ……。

 エルフの指先は異常に繊細だと聞いたが、文字通り人間離れしている。


「す、凄い……」


 元貴族令嬢であるメルヴィナですら、その行為が超常のものである事が理解できたのだろう。

 感嘆の息を漏らすだけだった。


「へへへーん、魔法が使えないあたしの唯一の特技だからねぇ」


 そう言って得意そうな笑顔を見せる。

 弓を放つ指はそのままだ。

 このままだと殲滅も時間の問題だな。

 怪我人はいるが、パッと見て死者はまだ出ていない。


 これなら――


「?! エルミア、上だ!!」


 別方向から、蜘蛛の魔物がエルミア目掛けて糸を噴出しているのが見えた。

 知性が少しでもある個体が、彼女の排除を試みたようだった。


「あ、ありがと。おにーさん」

「まだだ!」


 抱き抱えて糸を回避したオレに、追撃とばかりに酸が飛び交う。


 それをも全て避けた、その瞬間。


「ちぃっ!」


 もう、魔法の展開も間に合わない。


「アイズ!」「アイザック君!」


 死角から、燃え盛る火球が降り注いだ。

明日も更新します。

が……頭痛がぺいんヾ(o゜ω゜o)ノ゛

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