後日談というか今回のオチ……ではなく原因
盗賊。
それはいつも、オレの人生を狂わせる存在だ。
「まっっった、盗賊か!!」
オレの怒声が晴天に響く。
ドラゴンを倒した後、徒歩一時間程の村まで歩き、中古の剣と荷馬車を売ってもらったオレたち一行。
ドラゴン素材はとある手段で少しは運べたが、残りはキャンベル領はイルネストから、キャンベル家のツテで人を遣わせるつもりだった。
そのために街道を進んでたら、遭遇したのが目の前に蔓延る盗賊たちである。
いつものオレなら、どっかの成り上がり勇者ばりに盗賊は資源と見なすところなのだが、今回ばかりは違った。
「そッの卵! てめぇら何処から持ってきやがった!!」
つまり、ドラゴン来襲の原因は。
「あぁ!? このガキ、何をどこまで知ってやがる!」
こいつらがドラゴンの卵を盗んだ事だったって訳だ。
「全部だ全部っ。ドラゴンの卵なんてもん盗みやがって!」
「あ、兄貴。マジで全部バレてやがりますよ……!」
「馬鹿やろっ。簡単に認めてんじゃねェ!」
いやいやいや。バレバレだから。
後生大事に積んでやがるその馬鹿でかい袋!
そもそも卵から魔力垂れ流し!
せめて荷車じゃなくて、外から見えないようなもので運べって。
挙げ句には移し替えしてるの見ちまったんだから、数時間前にドラゴンに遭遇したオレたちが察せない筈もない。
ウチの天然培養お嬢、フランだって見抜けるぞ!!
「え、え、これってどうゆう状況ですの?」
……説明すればすぐ理解するぞ!!
「ふむ。随分と残念な一団ですね」
シャルさんが表情一つ変えずにそう断ずる。
「てめぇ! 俺たちが新進気鋭の盗賊団、ヴァズーッカと知って舐めた口叩いてんのかっ!」
いや、新進とか自称してる時点で知名度に乏しいの気付けよ。
見ろ、このフランのポカン顔を。可愛いだろ。
そんな中、一歩前に出てきてシャルさんが口を開く。
「勿論」
え、知ってるのかシャルデンっ。
「存じ上げませんが」
アッハイ。じゃあ何故溜めたし。
盗賊団も上げて落とされてガクッときとるやん。
「このクソ女ぁ……」
「変な格好してるくせに盗賊を馬鹿にしやがって!」
いやいや、盗賊は馬鹿にしてないだろ、盗賊は。
そも、ここにおわすは近隣一帯を治めるキャンベル子爵令嬢とその筆頭侍従なんだが?
メイドの格好で相手の推察もできない教養の乏しさが更に哀れだな。
「ほい、ほいっと」
声を荒げながら突っ込んでくる二人のならず者に、石を投擲して沈黙させる。
「は、速い……」
「顔面潰れてんじゃねぇか……」
彼我の実力差を理解した訳では無いだろうが、流石に仲間を瞬殺されて怖じ気づくヴァ、ヴァ……なんとか団。
そんな展開の中で、隣の天才美少女はポンと柏手を打った。
「つまり、あの方々は悪い方たち、という事ですわね!」
フランお嬢様はやっと理解したようだ。
こんなやり取りすら、アホの娘的な愛らしさを感じる今日この頃。これが父性か……。
「けっ、ツイてねぇぜ畜生」
「ドラゴンの卵は高く売れるって聞いたから、金掛けて下準備したのに売り捌けなくて苦労するしよ!」
「そうだぜ、何人死んだと思ってんだっ」
いや、裏の商品はツテが無いと捌けないだろ、常識的に考えて。
ドラゴンの卵なんて報復を恐れて普通盗まないし、気軽に買えるかよ。
しかし、こんな抜けてる一団のせいで死にかけてたって考えると最悪の気分だな。
なんか段々イライラしてきた。
こうゆう輩は、おちょくりながら楽しんでとっちめるのが一番だ。
憂さ晴らしに付き合ってもらうぜぇ。
「アイズ。なんで今、眉をひそめた後にニヤッとしましたの?」
「英雄譚のギャグパートとしては面白いかと思って」
「ギャグ……前菜にすらしてもらえませんのね」
苦笑で返すフラン。風にクリーム色の髪が靡く。
いやまぁ、胃もたれするレベルのメインディッシュ、かっ喰らった後だしね。
そんな会話をしている間に、フラストレーションを発散させるのに区切りを付けたのか、武器を再度握りしめて盗賊がこちらを睨め付けている。
やっとのされる覚悟が整ったか。
「まぁいい。幾らこいつが強くても、怪我もしてるみてぇだし、こんだけ揃ってりゃ負けはねぇ。いくぞてめぇら!」
「おう!」「やったらぁ!」
揃ってるって、何を揃えた気でいるんだか……。
「ミサイル団だかナパーム団だか知らないが、お前ら賊として欠陥が多すぎるっての」
ただのぼやきだったが、反応は激烈だった。図星だったか?
「あぁ!? 何処から見ても知性溢れるパーフェクト盗賊団だろうがっ」
「そうだそうだ!」
何処がじゃ! 鏡見てからものを言え! って、この世界じゃ高価な鏡をこいつらが持ってる訳ないな。
「お前らに足りないものを教えてやる。それはな--」
その言葉を最後にオレは駆け出し、急速に敵との距離を詰める。
「--人数・武器・鍛錬・知識・判断・決め台詞・計画性!」
「今、何か一つ変なもの混ざってた気がしますわ」
婚約者のぼやきは華麗にスルー!
「そして何よりッ! マスコットが足りない!」
ギャアギャアと盗賊どもが騒ぎ立てるのをガン無視して、先頭の敵を派手にかちあげ、注目をオレに集める。多少怪我に響くが、二人を狙われるよりはマシだ。
そうしてから、純粋な剣技で薙ぎ払いに掛かった。
「さてさて、お立ち会い」
オレは、ふらつくように上半身を前に傾け、重心移動と共に低く跳躍した。
着地と同時に直角の曲がりを入れ、相手が予測しない方向に絶えず動き続ける。
「乱刃・千鳥繋ぎ」
翔ぶように低空を駆け、空中で鞘に収めたままの剣を振るう。
千鳥足のようにゆらゆらと捉え難く、急角度で動く物体から繰り出される打撃に、棒立ちになるか逃げ惑うしかない卵泥棒ども。
「ひぃぃ」「なんで捉えられねぇんだっ」「ゆらゆらちょこまかと!」
一人、また一人と叩き伏せられ、手際良くシャルさんが拘束していった。
「解決が速すぎて、確かにこれはギャグパートですわ……」
フランも呆れているようだ。
後で聞いたら、オレの無双っぷりにらしいが。いや、ただの捕縛作業ゲーだったぞ?
「……気のせいでしょうか。卵を移し替えていた時はもう一人居たような気がするのですが」
「シャルの気のせいではなくて? 遭遇から誰一人逃してないと思いますわよ。逃走する素振りもありませんでしたし」
「そう言われれば……確かに仰る通りでしたね」
フランとシャルさんが小声で会話をしてるが、上手く聞き取れないな。
女の子どうしの秘密の会話かもしれないし、深入りはせんが。
シャルさんが拘束した盗賊たちを馬車に括り付け終えたところで、痛みから回復したらしい奴らがぼやき始める。
「俺たちは、あの青白野郎に唆されただけだってのに……」
「これからどうなるんですか、兄貴ぃ」
「俺が知るか!」
この馬鹿集団を騙した奴が居るのか?
そうだとしたら、ここまで道化まっしぐらだと一つ物申したくなるぜ……。
よし、無双じゃないけど取り敢えずビシッと終わらせて溜飲下げるか。
黒幕らしき存在の正体が、この場ですぐ暴けるとも思えないしな。
「どうなるかって? 街道駆ける、ふてぇ輩なお前らにゃ」
オレの言葉に痛がりながら振り向くオーディエンスたち。
「気絶して、臭い豚箱が待ってるぜ」
なーんてな。
「アイザック様、一日ではイルネストに着きませんよ」
「シャル、そこは流してあげるところですわ」
シャル「鞘に収めてる以上、刃は無いのでは?」
物語としてご都合的なドラゴン襲撃を含めて、まだ裏があります。
一章はこれで終了で、閑話を挟んで二章となる……予定でしたが。
PVやポイント、感想が伸びない事もあり、このままだと今後も変わらない気がしております。
その為、展開含め精査推敲を再度行いたいと思いますので、六日程お休みを頂き再開は来週土曜に致します。
楽しみにして下さっていた方が居ましたら、申し訳ございません( ;´・ω・`)
果たしてフランの家族と揉めたりするのか? とぅーびぃーこんてにゅー。
あ、新しい仲間は早めに出てきます(。・x・)




