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花菱女学園重装機兵部  作者: キ74
第一章 赴任/出会い
14/45

4-1

平征29年5月11日


 「流石ですね、大島教官」

 「えっ?」


 昼休みに僕に特別に与えられた12畳ほど広さの準備室で午後の授業の用意をしていた時、山下先生が尋ねてきて開口一番そんなことを言ってきた。


 「今朝二人やってきましたよ」

 「ん?ああ、凛君と未彩君ですか?」

 「そうです。二人とも昨日の訓練見学したのでしょう?大鳥教官って見かけによらず若い子の扱い慣れてるんですね」

 「いえ、そんなことは」


 山下先生の悪戯っぽい物言いに僕は苦笑で返した。


 「まあ、転科届は受理されるだろうけど、すぐにとはいかないかもしれません。いろいろ学園長の方で融通は効かせてもらえると思うけれど…まあ、しばらくの間は放課後の活動だけ参加してもらうことになると思います」


 とにかく、凛君と未彩君は無事重装機兵部に入ってくれそうでよかった。昨日、すぐに親から許可を貰っていた凛君はともかく、未沙君は態度が曖昧なままだったし、体のこともあってご両親に反対されるだろうなと思っていたが…意外と彼女も昨日の体験でやりがいみたいなものを見出したのかもしれない。


 「でも…緑川さんはわかるけれど、白藤さんがねぇ…。あの子は…」

 「わかってます。無理をさせる気はありません。ただ―」

 「ただ?」

 「…感じたんです。多分、未沙君は強くなります」


 未沙君からは、上手くは言えないが何か感じるものがあった。その感覚はなんの根拠もないように思うかもしれないが、僕はこれまでの人生で二人、未沙君と同じような感覚を感じさせる人に会ったことがある。


 その二人はとても優秀な、そして人並み外れた重装機兵だった。


 だから、未沙君もまた尋常ならざる重装機兵となると、僕は勝手に確信している。彼女の体のことを思えば入部なんてさせるべきではないのだろうが、僕にはどうしてか入部を止める気など全く起きなかった。


 その理由を考えたが…明確な答えなど思いつかなかった。


 「あっ、それでですね、実は朗報があるんです」

 「朗報ですか?」

 「はい、以前話した転校生とは別に、もう一人転入が決まったんです」

 「本当ですか?それは良かった。どんな生徒なんです?」

 「えーっと、それが…」


 山下先生は笑顔を浮かべつつも少し困ったような表情を見せる。


 「どうかしたんですか?」

 「それが…どこでうちが部員募集しているのを聞きつけたのかわからないのですけど…知ってますか桜陽院って?」

 「ええ、お嬢様学校で有名な…まさかそこの生徒が?」

 「そうなんですよ。まだ、この話学園長にしかしてないんですけどね。私もいきなり生徒本人から電話を受けたものだからびっくりしてしまって。昨日はその対応で朝から大変だったんですよ」

 

 言われてみれば、昨日は山下先生とは全然顔を合わすことはなかった。昨日は僕も僕で勧誘とか見学の準備で忙しかったからあまり気にはしてなかったが。


 「こっちの事情もある程度知っているみたいで、来週の月曜日にはこっちに来るって話なんですよ」

 「そんな急で、手続きとかは大丈夫なんですか?」

 「それが何とかなりそうなの。これ今朝学校に届いた転入関係の書類」


 僕は山下先生から受け取った書類にざっと目を通す。転校したことがないわけではないが、その時はまだ小学生だったので転校に必要な書類が何なのか目を通したところでわかりはしなかった。


 が、


 「この子は…」


 彼女の履歴書を見て僕はまるで雷に打たれたかのような衝撃に襲われた。


 「そうなんですよ。びっくりですよね。私も名前を聞いただけの時は気付かなかったですけど、父親の名前を見てピンと来たんです」


 それは僕も同じだった。彼女の父親の名前は山下先生はともかく僕にとっては、忘れようがない名前であった。


 「でも、あの剣聖の妹さんが、うちに来るなんて」


 転校生の名は柴崎百合香。元陸軍大臣・柴崎時貞陸軍予備役大将の次女で、そして、天才的な重装機兵として2度の恩賜を賜ったこともある剣聖・柴崎瑠璃の妹。


 だが、その姉の名前は履歴書には書かれてはいない。


 僕はこんな偶然があっていいのかと愕然とした。


 「…あの、転校の理由って聞いてますか?」

 「うーんと、理由は機兵部に入りたいからって言ってましたよ。桜陽院には機兵部はありませんから。…でもそこがおかしいと思ったんですよね」


 そう、おかしいのだ。こんな偶然があっていいわけがない。きっと何か明確な意思が介在しているはずだ。


 「入学して一か月で転校するぐらいなら、最初から機兵部のある学校へ入ればよかったのにって。だから、もしかするとお姉さんのこともあって、機兵になることご両親から反対されているのだと思ったんですけど、こうして書類はちゃんと届きましたし、さっきお家の方に電話してみたらお母さんが出られて、親としても応援しているから、なるべく早く転校できるようにしたいって言ってましたよ」


 山下先生が詳しく事情を話してくれたが、その半分も耳に入らなかった。

 

 柴崎百合香、彼女自身には何の因縁もない。ただ、彼女の姉、柴崎瑠璃大尉…いや、今はもう二階級特進で、中佐か。


 とにかく僕には彼女とは決して消すことのできない因縁がある。


 彼女が死んだとき………


 いや、僕が彼女を殺した時の記憶が、まるで走馬燈のように脳裏によぎる。


 あれは、正しいことだったのか、正しいとあの時の自分は信じていたはずなのに、その正しさを今の僕が信じられずにいる。


 僕はあの日、仲間を撃った



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