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いきすぎた健康は異世界チート。行きつく先は・・・  作者: ぼん@ぼおやっじ


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9-45 追撃⑤ 決着というかオチ

9-45 追撃⑤ 決着というかオチ



 さて、これでおしまい…とか思ったらそんなに簡単なものでもなかった。

 岩盤を重ねて作られた砦は思ったよりも頑丈で、簡単には崩れてくれなかったのだ。


 おまけに魔法が飛んでくるようになった。

 かなり多彩に、しかも際限なく。


 火球や風刃が飛んでくる。しかも地震のような振動も襲ってくる。

 それが詠唱のリキャストタイムとか関係なくドコドコとやってくる。


 俺の前にはモース君が陣取って背中のバルカン砲で魔法を迎撃してくれている。二連装だから安定性も高い。

 獄卒たちもそれぞれに対処している。


 魔法を魔法で迎撃したり、武器で打ち払ったり、光の盾を作ったり。

 彼らは過去の英雄のデータから作られた幻獣なので戦闘力は高いのだ。

 唯一の欠点は感情を持たない事か。


 まあ、こういった戦闘ではその方が落ち着くし、必要なら過去の英霊を降ろして憑依させればそう言った対応もできるのでオプションは充実しているといえる。

 俺? 俺はモース君の後ろで宙に浮いているよ。安全地帯さ。


 でもこのままではまずいので冥の霧を濃くして円陣の中を満たしていく。

 どんどん濃くなっていきます。


「ああ、やっぱりか」


 霧が濃くなると魔法が立ち消えるようになってきた。

 飛来した魔法が幻のように消えてしまうのだ。


《つまりこれも〝嘘〟でありますか》


「そうだね、そこに攻撃魔法があると世界をだましているわけだ。そして魔法を受けたものにダメージを受けたとだますわけだね。

 本人も世界も騙されているならそれは現実と何も変わらない」


 人間はやけどをしたと思い込むとやけどと同じような状態になることがあると…なんかで読んだな。うん。

 まあ、それのすごいバージョンなんだろう。

 世界すら騙すのだから。


《でも冥属性には弱いと?》


「うーん。いろいろな原因は考えられるかな?」


 多分一つはあいつが冥属性というものを理解できていないこと。だから思うように干渉できないのだと思う。

 もう一つは冥属性に対する俺の支配力の方が高いこと。

 どんな力もより強い力で打ち消されるということだろう。

 それにだますとはいっても物理法則をまるっと無視できるようなものでもないらしい。


《真実味のない嘘は嘘じゃなくてギャグ?》


「おっ、モース君いいこと言った」


 多分アレキサンダー自身がそれを信じられるかどうかが大事なんだ。真の嘘つきは自分もだますみたいな。

 だから知らないこと、理解できない事には干渉できない。

 魔法はイメージというけど、この場合は思い込みなんだろう?


 逆に言うと理解できることなら実現できると。


 ドカーンっとわざとらしい音を立てて岩盤の砦が爆散した。

 爆発は分かると。

 そして霧のようなものは爆発によって吹き散らされると。


 ここまでは見事。

 でもアレキサンダーはあまり化学方面には造詣が深くないらしい。


 爆発って揺り返しがあるものなんだよね。

 急速な大気の膨張で周囲にあるものを吹き散らすわけなんだけど、本当はその後衝撃波が襲ってくる。

 そしてさらに爆心地の気圧が一気に下がったために揺り返しとして周辺の大気が一気に戻ってくる。片方だけ気にしていると後ろからやられるのだ。

 爆発という現象はなかなかに恐ろしいものなのだ。

 だが今回はどちらもなかった。


 おそらくアレキサンダーのイメージの中にはなかったのだ。


「もしイメージがあって、それを故意になしにしたのならかなりの強敵なんだけど…」


 爆発で吹っ飛んでいった岩盤をしのぐともう何もなかった。

 そこには一人の老人が立っているだけ。


「これが本当の姿かな?」


 やせっぽちの貧相な初老の男性。


「初めましてというべきかな?」


「しつこいやつだ…本当にしつこい…」


「いやー、だけど俺も仕事なんでね。仕方ないのさ」


 それが大人になるということだ。面倒くさくてもそれがやるべきことならやらないと。


「仕方ない、ワシが直接相手をしてやろう」


 なに今更大物感を出しているんだ?

 と思っていたら老人の姿勢がよくなった。


 背筋がしゃっきりと伸び。体に力が満ち、よれよれの服がなんかいい感じの服に代わっていく。

 髪が伸び、髭が整いなんか達人風の雰囲気を出しているじゃないか。


「今度はどんな嘘だ?」


 そう言った瞬間老人の姿が消えた。そして俺の左腕で『キーン』という金属音が響く。

 いつの間にか踏み込んできたアレキサンダーがそこにいた。


「あー、なんとなくわかった。今度は剣豪小説だ」


 まあ、彼自身西洋人のようなので和風と中華風が微妙にごっちゃになっているけど、それがサブカルぽくてちょっといいかな。

 これだからオタクはとか言われそうだけど。


「なぜ切れぬ」


「俺の左腕が魔道具だからだよ」


 さっきバルカン砲だったの見てなかったのかな?


「せいっ!」


 アレキサンダーはその場で大きく旋回すると着物の裾を大きくはためかせながら鋭い打ち込みをしてくる。

 日本の剣豪の動きじゃないな。中華風の高手とか言う感じだろうか。


 俺は無間獄を槍にしてその剣劇を打ち払う。

 別にふざけているわけではないのだが『キン・コン・カン』と武器の衝突音が響く。


「なかなか大したものだね。俺ってば武術の天災(間違いじゃないような?)に子供のころから鍛えられてて技術は一流なんだけど、しかも身体能力はめちゃ高スペックなんだけど、全然引けを取ってないじゃないか。

 これでも獣王と渡り合えるぐらいは強いんだぜ」


 いやマジで。それとまともに打ち合えるんだから大したものだと思う。

 どんな嘘が混じっているかわからないけどね。


 そしてお互いに飛び退る。

 にらみ合って、俺の肩がかくっと落ちた。


「なんで動きが中華風で構えが正眼なんだ?」


 所詮は他人の知識のつまみ食いか…


「うおおおっ、クソクソクソクソ糞、なんでだ、なんであれもこれも通用しないんだ。俺は最強なんだ。

 俺は誰よりも強くて、何でもころせるんだぞーーーーーーーーーーーーーーーっ」


「あっ、キレた」

《キレやすい老人でありますな》


「はっ、そうだ。そうだよ、そうだった、殺しちゃえばいいんだ。

 ふはは、ふへへ、ふひほほほっ」


 こんなきもい三段笑いは始めてだ。

 と思ったらアレキサンダー氏、ポーズをつけて言い放った。


「お前はもう死んでいる!」


・・

・・・

・・・・・


「あれ?」


 こいつ百面相だな。

 つい一瞬前の狂気に満ちた笑顔から自信満々の決め顔を経て一切の思考を放棄したようなあほ面。


 もちろんそんなことに付き合う義理もないので俺は領域神杖無間獄を大鎌モードに切り替えてサックッとアレキサンダーを切り捨てた。


『なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんででででででででっ』


 アレキサンダーは俺の鎌に串刺しにされた状態で地面に倒れ伏した自分の体を見てパニックを起こしていた。


 なんでなんでとうるさいから答えてあげよう。


「俺は別にこの世界で活動するのに肉体って必要ないんだよね。

 そこに意識だけあればいいわけだから、体が死んでいても問題なし」


 そう、恐ろしいことに『お前はもうナンチャラ』の攻撃で俺は死んでしまいました。

 つまり俺は死んだと、俺自身をだましたわけなんだろう、これに対抗するために俺は死んでない。と自身を維持するには、生きていることと死んでいることの差がね、俺にとっては割とどうでもよかったという。

 なのであっさり俺の体は騙されて死んでしまいました。


 ただアレキサンダーは死というものも理解していない。

 こいつの力で起きた変化は心停止だけだ。

 心臓が動いていなくても魔法で血流を維持できれは困ることはない。


 じつに中途半端な攻撃だった。

 存在の消滅とか、脳死とかだったら再起動に時間がかかったかもしれない。

 だけど心臓が動かないだけじゃなあ…


『あはははははっ、これは夢だ幻だ。俺は死んでない、俺は死んでない、俺は死んでないぞーーーーーーっ』


 死んでない生きているとわめき続けるわけだが、それで何か変化が起こるわけではなかった。

 詳しい要件は分からないけど何か要件を満たしていないんだろうな。

 勇者のスキルがどこに刻まれているのか、見たいな?


 でもまあ、面倒くさいことが起こっても困るからとっとと回収しよう。


 無間獄の鎌が消え、光のリングが踊って枝葉が展開する。

 ぱちりとゲートが開いてひどい苦鳴が漏れ出すと同時に彼の魂は渦を巻きながら無間獄の杖頭に安置された玉に吸い込まれていくのだ。


 そして何かがぱちりとはまり、静寂が戻った。


「はへー、何とか終わったねー」


《お疲れ様であります。長丁場でしたな。体調の方は大丈夫でありますか?》


 ホント疲れた。

 それで気が緩んだというのはあるんだけど、気を抜いたらがくんと来た。

 何かがシフトする感覚。


「あっ、いかん、この体、死んでるじゃん」


 とはいってもあいつのイメージがつたなかったせいだろう、死んでいるといっても心臓が機能していないだけだ。

 魔法で血流を維持すれば活動に支障がないけど、ずっとやっているわけにもいかない。

 仕方ない再生を…


「ありゃ?」


《どうしたであります?》


「うーん、心臓を分解再構築してみたんだけど、動かないな…」


《つまりあれでありますか? マスター殿が死んでいる。という事実がこの世界のデフォになっていると。そういう可能性もあるでありますか?》


 いわれて納得した。


「つまり俺が死んでいると俺をだましただけじゃなくて、この世界も俺が死んでいると思い込んでいるわけか」


 なるほどなるほど、なかなか厄介な能力だ。


《どうするであります?》


 ちょっと考える。


 つまり俺が死んでいるという事実を変更せずに俺を再生すればいいわけだ。

 つまり、いったんこの体を放棄して、新しく作ればいいわけだ。

 そうすれば俺はそのまま死んだことになるし、新しい俺は別に爆誕。、みたいな?

 それで行けるでしょ。


「よいしょっと』


 おれは肉体との接続を解除していったん精神だけの状態になった。


『うむ、自分の死体が転がっているのというのは最初の再生の時以来か…

 今度は丸ごと作り直しだから少し時間がかかるが…まあね華芽姫に伝言を…』


 がしっ!


 あれ? 何かにつかまったような感覚が…


《それは私》


『げっ、メイヤ様?』


《悪いけどちょっと手伝ってねー》


『うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ』


《マスター殿ーーーーーーっ》


『もーすくーーーーーーんっ』


 て、遊んでいるばあいじゃねえーーーーーーーっ!

 俺はものすごい力で冥界に引きずり込まれたのだった。



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